「舌がん手術の入院期間」はどのくらいかご存じですか?費用も医師が解説!

歌手の堀ちえみさんが罹ったことでも知られる舌がんは、口のなかで発生するがんです。
初期症状は口内炎と似ており、口内炎と思い込んで放置していたら知らず知らずの間に病状が進行していた、ということもしばしば起きているといわれています。
早めの治療が必要な舌がんですが、手術の際の入院期間はどのくらいかかるのか、わからないことも少なくありません。
本記事では、入院期間と手術の種類・費用について記載しました。舌がんでお悩みの方はぜひ、参考にしてみてください。

監修歯科医師:
熊谷 靖司(歯科医師)
目次 -INDEX-
舌がんとは
舌がんとは、口腔がんの一種です。口腔がんは近年罹患者数が増えてきており、そのなかでも半数以上を占めるのが舌がんとなります。罹患者数は男性が多く、罹患者における男女比は3:2程度となっています。
罹患者の割合として特に50代以降の男性に多いようです。2016年時点で口腔がんに罹患する人は年間11,000人程度いるとされ、これは全がん罹患者数の1%程度です。しかし日本における罹患者数および死亡者数は増加傾向にあり、これは国内のみならず世界的にも見られます。
舌がんの手術の種類・治療法
舌がんの治療方法として、手術による切除・放射線治療・薬物療法があります。
- 手術による切除
- 放射線治療
- 薬物療法
舌がんの治療方法として一般的に行われているのが手術による切除となります。これはがん細胞を手術によって切除する方法であり、切除する部位の大きさによっていくつかに分けられます。
部位が小さい場合は部分切除となり、舌の半分以上がんが進行している場合は全摘出術が行われることもあるようです。また、手術によって失われる舌の大きさによっては、再建手術が行われます。
体の足などほかの部位から組織を取り出し、舌につなげる方法となります。放射線治療は、がんのある部位に放射線を照射しがん細胞を破壊・消滅させる治療方法です。がんは、細胞の遺伝子異常によって分裂・増殖を繰り返すことが知られています。
その反面、遺伝子に傷がつきやすい・修復の力が弱いという特徴も持ちます。この特徴を利用し、細胞内のDNAを切断してがん細胞にダメージを与えるのが放射線治療です。放射線治療はレントゲンと似ており、照射中に痛みを感じることはあまりありません。
体の外から放射線を照射する外部照射がよく行われており、治療中に痛みを感じることはほとんどないとされていますが、照射中は動くことができません。
この照射を10~30分程度、土日祝日を除いてほぼ毎日行うことが推奨されています。このため、入院ではなく通院によって治療を行っていくことが少なくありません。このほか、薬物療法は手術や放射線治療の適応がない再発・遠隔転移が起こった際に行われる治療方法です。
細胞障害性抗がん薬・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬が使用されており、舌がんの治療後は食べ物を噛む・飲み込む・言葉を発音する機能に障害が見られることがあります。これらの回復のため、術後にリハビリを行うケースも少なくありません。
がんの診断を受けたことによる心と体のつらさを和らげる緩和ケアを受けることもできます。個人の身体状況によって治療法も変わってきますので、参考までに確認しておきましょう。
舌部分切除術
手術のなかでも負担の少ない治療方法が舌部分切除術です。この方法の場合、まだ小さながん細胞のある患部のみを切除するため、切除部位は小さくて済むケースが少なくありません。
そのため、再建手術をしないケースも少なくありません。主に舌がんを早期発見できた場合に部分切除術を適用できるケースがあるといわれています。部分切除術では、食べたり飲んだりする機能や発音への影響は少ないとされています。
舌半側切除術
部分切除術よりもがんの広がりが大きく、がんのある側の舌を半分切除する治療方法が舌半側切除術となります。
これには舌の可動部のみを切除する舌可動部半側切除術と、舌根も含めた範囲を切除する舌半側切除術があります。舌の半分を切除するとなると発音などに支障が生じるケースも少なくなく、再建手術が行われるようです。
舌(亜)全摘出術
舌の半分以上を切除する手術が舌亜全摘出術・舌のすべてを摘出する手術が舌全摘出術です。がんが進行し、舌の半分以上に広がっている場合に行われます。半側切除術同様、再建手術が行われることが少なくありません。
放射線療法
放射線治療はがんのある部位に放射線を照射します。さらに以下2つの方法に分けられます。
- 細胞内照射
- 外部照射
細胞内照射は放射線を放出する物質を管や針などを使ってがん組織やその周辺組織に直接挿入して照射します。外部照射は体の外からがんに放射線を当てる治療です。この外部照射と後述する薬物療法を組み合わせることで、再発予防の効果を高めることが期待されています。
薬物療法
手術や放射線治療ががんに対する局所的な治療方法であるのに対し、薬物療法はより広い範囲に治療の効果が及ぶことが期待できます。
薬物療法はがん細胞が増殖するのを防いだり、成長を遅らせたりします。自宅で生活をしながら外来によって治療を行うことが少なくないようです。
舌がん手術の入院期間の目安
手術を受ける場合、基本的には入院が必要となります。細かく見てみましょう。
舌の一部摘出・リンパ節の摘出手術
小さく頸部リンパ節転移がない初期の舌がんの場合、原発巣の切除手術のみ行われることが少なくなく、その際は1~2週間程度で退院できるケースがあります。
切除部位が大きい・または頸部リンパ節への転移が認められる場合は、原発巣の切除とともに首の手術と再建手術も必要となります。この際は1~2ヵ月程度入院することもあるでしょう。
舌の全摘出
全摘出を行った場合、舌の再建手術も取り入れることが少なくありません。個人差があるため一概にはいえませんが、入院期間は長くなりがちといえるでしょう。
合併症が発生した場合
こちらも個人差があるため一概にはいえませんが、相応の日数の入院期間が必要でしょう。合併症は、化学放射線療法の治療中に全身的な症状を患う可能性もあるとされています。
舌がんの手術・入院期間にかかる保険診療の費用
舌がんの手術・入院にかかる費用についてまとめました。個人差があるため一概にはいえませんので、参考までにしてください。
治療費用の目安
舌がんの一般的な治療費の目安として、以下のようになります。
- 手術のみの場合、500,000~1,000,000円
- 手術と放射線治療の組み合わせの場合、1,000,000~2,000,000円
- 手術と薬物療法の場合、2,000,000~5,000,000円
上記のとおりですが、個人の状況によって舌がんの手術・入院期間にかかる保険診療の費用は変わるため、一概にはいえません。
ですが、基本的にがんの手術は高額である場合が少なくなく、健康保険のみでは対応できないこともあるでしょう。後述する高額療養費制度の利用を検討してみるといいかもしれません。
保険診療による自己負担額
舌がんの治療費は基本的に治療費の3割が自己負担額となります。なお、治療費が高額療養費の上限額以上であった場合は、その上限額が自己負担額となります。
高額療養費制度の利用が可能
高額療養費とは、病院や薬局で支払う治療費が一定額を超えた場合、超えた金額が払い戻される制度です。年収に応じて負担額が変わるため、詳細は厚生労働省のホームページにてご確認ください。
舌がん手術の入院期間についてよくある質問
ここまで舌がんの治療法や入院期間などを紹介しました。ここでは「舌がん手術の入院期間」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
診断から手術までにどのくらいの期間がかかりますか?
個人の状況や受診する医療機関によって一概にはいえませんが、初診から検査を含め、手術開始まで4~6週間が1つの目安になるといわれています。ただし、手術方針が決定した後から計算すると2〜3週間となっています。状況に応じて異なる場合もあるため、注意が必要です。
手術後のリハビリテーションについて教えてください。
頭を前に曲げて手とおしくらまんじゅうをする嚥下おでこ体操や、寝て頭を上げるシャキア運動が行われます。食べ物を飲み込む際に咽仏が動くことでむせずに食べ物を通過させる舌骨上筋の訓練となります。ほかにも呼吸の力のリハビリであるブローイングや、舌の運動訓練が行われることもあるようです。
編集部まとめ
舌がんは口内炎と間違われることも少なくなく、気付いたときには病状が進行していることもしばしば起きています。
2週間経っても治らない場合は、口内炎ではなく舌がんを疑ってみたほうがよいかもしれません。
万が一、手術が必要となった場合は本記事をご参考いただき、早めに医師を受診のうえ対処していただくとよいでしょう。
舌がんと関連する病気
「舌がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 頭頚部(喉頭・咽頭など)
- 上部消化管(食道・胃)
- 肺
上記のように舌ではなくほかの臓器にがんが見つかることがあります。舌がんの原因には喫煙や深い飲酒が挙げられますが、上記の病気も喫煙や飲酒が関係しているためです。
舌がんと関連する症状
「舌がん」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- のどの痛み
- 飲み込みの悪さ
- 声のかすれ
- 食べ物のとおりにくさ
- 食べる際に胸が苦しくなる
- 胃痛・胸やけ
- 咳や血痰
頭頚部のがんは頭蓋底部から下、鎖骨より上の顔や首を指し、この範囲に含まれる鼻・喉頭・咽頭・唾液腺・甲状腺などにできるがんを頭頚部がんといいます。
のどの違和感や飲み込みの悪さ、声のかすれなどが症状として挙げられるため、些細な症状だと思っても油断は禁物です。上部消化管は食道や胃が該当し、これらのがんでは食事の際の旨の苦しさ、胃痛などがあります。肺がんでは咳や血痰が見られることがあります。
参考文献




