「子宮頸部腺がんの生存率」はご存知ですか?ステージ分類や治療法も解説!
子宮頸部腺がんは、近年増加傾向にある子宮頸部がんで、扁平上皮がんに次いで2番目になる確率が高いタイプです。進行度や治療法によって生存率や再発リスクは異なりますが、早期発見・早期治療が鍵となります。
本記事では、子宮頸部腺がんの生存率について以下の点を中心にご紹介します。
- ・子宮頸部腺がんの生存率
- ・子宮頸がんの再発リスクと生存率
- ・子宮頸部線がんの治療
AYA世代の子宮頸部腺がんの生存率について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
子宮頸がんと子宮頸部腺がんの違いについて
子宮頸がんは、子宮頸部の細胞タイプによって2つのがんタイプに分類されます。扁平上皮がんは、子宮頸部の外側を覆う扁平上皮細胞から発生し、腺がんは子宮頸部の内側に位置する腺組織の円柱上皮細胞から発生します。
腺がんは特に、転移しやすいため治療が難しいとされています。そのため、子宮頸がんより子宮頸部腺がんの方が早期発見が難しく、予後が不良になりやすいとされています。
子宮頸部腺がんの生存率
子宮頸部腺がんの生存率は、がんの進行度によって大きく異なります。
早期発見された場合は生存率が高いですが、がんが進行するにつれて生存率は低下します。日本では、手術、放射線治療、化学療法、免疫療法といった複数の治療法を組み合わせることで、生存率の向上を目指しています。
子宮頸部腺がんのステージ
子宮頸部腺がんをステージ毎にみていきましょう。
Ⅰ期
子宮頸部腺がんのI期は、子宮頸部に限局しているがんで、I-A期とI-B期に分けられます。
I-A期は顕微鏡でのみ診断可能な微小浸潤がんで、I-B期は診察で明確にがんを確認できる状態のことを指します。
II期
子宮頸部腺がんのII期は、骨盤壁や腟壁の下1/3までには到達していない段階で、II-A期とII-B期に分けられます。
II-A期は、がんが腟のうえ2/3まで広がっていますが、子宮周囲の組織(子宮傍組織)への浸潤が見られない段階です。II-B期は、がんが子宮周囲の組織(子宮傍組織)に浸潤していますが、骨盤壁には達していない段階です。
III期
子宮頸部腺がんのIII期は、骨盤の組織にまで浸潤する段階で、III-A期、III-B期、III-C期に分けられます。
III-A期は、がんが腟の下1/3にまで浸潤していますが、骨盤壁には達していない状態です。
III-B期は、子宮周囲の組織への浸潤が骨盤壁にまで達している状態か、腎臓への水腎症や無機能腎が認められる状態です。III-C期は、骨盤リンパ節または傍大動脈リンパ節に転移がある状態です。
IV期
子宮頸部腺がんのIV期は、膀胱、直腸に転移した状態で、IV-A期とIV-B期に分類されます。
IV-A期は、がんが膀胱や直腸の粘膜に浸潤している状態で、ほかの臓器を侵している段階です。
IV-B期は、がんが骨盤腔を越えて広がり、遠隔転移を起こしている状態で、骨盤以外の臓器(肺、肝臓など)への転移が見られます。
子宮頸がんの再発リスクと生存率
子宮頸がんの発症リスクと生存率について見ていきましょう。
子宮頸がんの再発の可能性について
子宮頸がんは、がんの進行度が高いほど再発リスクが高くなり、肺、脳、傍大動脈リンパ節、骨に再発しやすいとされています。
中でも、骨盤リンパ節への転移がある場合や、子宮周辺の結合組織への浸潤が確認される場合、再発のリスクが高くなります。また子宮頸がんの75%が治療から2〜3年後に再発しますが、5年以降に再発するケースもあるため、定期的な経過観察が重要です。
子宮頸がんが再発した場合の生存率
子宮頸がんの再発後の5年生存率は全体で5%以下とされ、治療前の5年生存率よりも低い傾向があります。初回治療する際に放射線療法を受けていない場合、再発に対する生存率は33〜74%に上がる可能性があります。
しかし、初回治療で放射線療法を受けた場合は、再度の放射線療法や手術は合併症を引き起こすリスクが高まるため、緩和医療や化学療法が主な治療法となり、再発部位や複数再発の有無に応じて治療方針が検討されます。
子宮を全摘しても再発の可能性はあるのか?
子宮全摘出後の再発は、局所再発や遠隔再発の可能性があります。再発の検出には、腟の検査(内診や細胞診、超音波)、腫瘍マーカーの採血、画像検査が利用されます。したがって、再発の可能性があるため再発の早期発見と適切な治療が重要です。
子宮頸部線がんの治療
子宮頸部線がんの治療には、さまざまな方法があります。主な治療法について詳しく解説します。
手術
レーザー蒸散術
レーザー蒸散術は、子宮頸がんの前がん病変を焼き切り除去する治療法です。子宮保存が可能で手術時間が短く、身体への負担が少ない利点がありますが、組織の深さや広がりが確認しづらく、再発リスクがあるため、ほかの検査と併用されます。
円錐切除術
円錐切除術は、子宮頸部の一部を円錐状に切り取る手術で、がん病変の広がりを確認し取り除くために行われます。妊娠希望のある患者さんに適しており、早期のがんに適していますが、切除範囲によって妊娠や出産に影響を及ぼす可能性があります。
単純子宮全摘術
単純子宮全摘術は、子宮のみを切除する手術で、子宮頸部周辺の組織や腟、リンパ節などは残します。身体への負担が少なく、性生活は可能ですが、妊娠は不可能になります。
広汎子宮全摘術
広汎子宮全摘術は、子宮と周囲の組織を幅広く切除する手術で、腟や骨盤のリンパ節も含まれます。リンパ浮腫や排尿障害、性生活への影響などの合併症が起こる恐れがあるため、担当医との相談を通じてリスクと治療方針を検討する必要があります。
放射線治療
放射線治療は、高エネルギーのX線やガンマ線を使ってがん細胞を破壊する治療法で、子宮頸がんの主要治療法の一つです。外部照射、腔内照射、組織内照射の方法がありますが、副作用として下痢や膀胱炎、骨盤内臓器への影響が起こる可能性があるため、治療前に担当医と副作用やケア方法について十分に相談しましょう。
化学療法
化学療法は、抗がん剤を使ってがん細胞の増殖や分裂を抑制する治療法で、子宮頸がんの進行や再発治療に併用されます。副作用としては吐き気や嘔吐、脱毛、末梢神経障害などがあるため、副作用を理解し、予防策や対応方法について担当医と相談しましょう。
ステージごとの子宮頸がんの10年生存率
ステージI
ステージIの子宮頸がんの10年生存率は約80%以上で、早期段階での治療が可能なことを示します。広汎子宮全摘術や円錐切除術などの手術が主な治療法で、適切な治療と経過観察により再発リスクを減少させ、長期的な生存率を高めることが期待されます。
ステージII
ステージIIの子宮頸がんの10年生存率は約60%から70%とされ、ステージIよりやや低いですが、適切な治療で長期的な生存が期待されます。治療法はがんの広がりや患者さんの状態に応じて選択されます。
ステージIII
ステージIIIの子宮頸がんの10年生存率は、約40%から50%とされています。がんの進行によって生存率はステージIIよりも低くなりますが、適切な治療により長期生存が可能です。
ステージIV
ステージIVの子宮頸がんの10年生存率は約15%から30%で、ほかのステージより低くなります。IV-A期では同時化学放射線療法や手術が行われ、IV-B期では化学療法や緩和ケアが中心の治療が適用されます。
子宮頸がんについてよくある質問
ここまで子宮頸部腺がんの生存率や再発のリスクなどを紹介しました。ここでは「子宮頸がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮頸がんと子宮体がんの違いについて教えてください。
馬場 敦志医師
子宮頸がんと子宮体がんは、発生部位と発症年齢が異なります。子宮頸がんは子宮の入り口である子宮頸部に発生し、20代後半から増加する傾向があります。一方、子宮体がんは子宮の奥の子宮体部に発生し、40代以降で発症します。子宮頸がんは性交渉経験が豊富な方や性交開始年齢が低い方が罹患しやすい一方、子宮体がんは妊娠・出産経験がない方や肥満の方、糖尿病や高脂血症の方が罹患しやすい傾向があります。
子宮がんにおける子宮頸部腺がんの確率はどれくらいですか?
馬場 敦志医師
子宮頸部腺がんは子宮頸がん全体の約10〜20%を占めますが、増加傾向にあるため注意が必要です。そのため、定期的な検診やワクチン接種で早期発見と予防に努めることが重要です。
まとめ
ここまで子宮頸部腺がんの生存率と再発のリスクについてお伝えしてきました。
子宮頸部腺がんの生存率と再発のリスクについての要点をまとめると以下の通りです。
- ・子宮頸部腺がんの生存率は、がんの進行度によって大きく異なるが、進行が進むにつれて生存率は低下する
- ・骨盤リンパ節への転移がある場合や、子宮周辺の結合組織への浸潤が確認される場合、再発のリスクが高くなる
- ・再発した子宮頸がんの5年生存率は、骨盤内にとどまって再発したがんに放射線療法を施すことで5年生存率は33〜74%と高くなる
子宮頸部腺がんと関連する病気
子宮頸部腺がんと関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
子宮頸部腺がんと関連する症状
子宮頸部腺がんと関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。