「白血病が原因で注意が必要な食べ物」は何かご存じですか?医師が解説!

白血病の療養中は食べ物に制限があることをご存知ですか?感染症への抵抗力が下がるため、栄養バランスだけでなく食事の内容にも気をつけなくてはなりません。また、治療の副作用によって食欲が低下する可能性もあります。
ここでは白血病の発症リスクを高める要因や、白血病患者さんの食事のポイントなどを解説します。食事の準備を楽にする方法も紹介していますので、ご自身やご家族が白血病と診断された方はぜひ参考にしてみてください。

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
白血病とは
白血病とは血液のがんの一種です。赤血球や白血球などの血液細胞は、造血幹細胞からつくられます。骨の中の骨髄で造血幹細胞から血液細胞になる過程で異常が起き、がん化した細胞(白血病細胞)が無制限に増殖する病気が白血病です。
正常な血液細胞が減少するため貧血やウイルス、細菌に対する抵抗力の低下、出血が止まりにくいなどの症状がみられます。
また白血病は、進行速度とがん化した細胞の種類によって大きく4種類(急性骨髄性白血病・慢性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病・慢性リンパ性白血病)に分けられます。
白血病が原因で注意が必要となる食べ物
白血病の治療によって白血球が減少すると、ウイルスや細菌に対する抵抗力が落ちて感染症にかかりやすくなります。
ここでは感染予防の観点で重要なポイントを3つ解説します。
生もの
生肉や刺身、生卵はウイルスや細菌が付着している可能性があります。半生の状態でも感染のリスクがあるため、中までしっかりと火を通して食べましょう。
また、生野菜や皮の薄いフルーツなども感染症のリスクがあるため注意が必要です。殺菌処理が施されている缶詰やレトルト食品をうまく活用しましょう。
ドライフルーツ
ドライフルーツには水分が含まれているため、雑菌が増殖しやすく注意が必要です。また、生の木の実も同じ理由で感染症のリスクがあります。
しかし、焼き菓子やパンに入っているドライフルーツは生地に練り込んで焼き上げているため食べることができます。
自家製の発酵食品
自家製の味噌やヨーグルト、漬物などの発酵食品は安全検査を受けていないため、ウイルスや細菌が付着している可能性があります。
感染症への抵抗力が下がっている時期は自家製のものではなく、衛生管理が確認できる市販のものを利用しましょう。
白血病の発症リスクを高める要因
白血病は、造血幹細胞から血液細胞になる過程で異常が発生し、細胞ががん化する病気です。
そのきっかけになりうる要因には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは5つご紹介します。
がん治療の副作用
がん治療の一つである化学療法(抗がん剤を使用した治療)の副作用として白血病の発症リスクがあり、二次がんと呼ばれています。
例えば、アルキル化剤(シクロフォスファミド)やアンスラサイクリン系薬剤(ドキソルビシン・エピルビシン)は、治療を終えてから3~5年後に急性白血病や骨髄異形成症候群などの血液の悪性疾患を発症するリスクがあるといわれていますが、発生頻度は0.1%程度と稀です。
抗がん剤に限らず、多くの治療には副作用のリスクが伴います。治療の効果と副作用について十分な説明を受け、理解したうえで治療法を選択しましょう。
特定のウイルスに感染
成人T細胞白血病は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)への感染で引き起こされます。異常なT細胞が増殖する病気で、以下のような症状がみられます。
- 皮膚の発疹
- 皮下腫瘤(こぶのようなできもの)
- 肝脾腫(肝臓や脾臓が腫れる)
- 免疫力低下(細菌やウイルスへの感染)
感染経路は母子感染・性感染・輸血の3つです。しかし、発症するまで40〜60年の潜伏期間があるため、発症せずに生涯を終える人がほとんどです。
ベンゼン・トルエンなどに曝露
白血病細胞は遺伝子や染色体が傷つくことで発生します。その原因の一つが化学物質であるベンゼンやトルエンです。
ベンゼンとは、常温では無色の液体で、染料や溶剤、抽出剤などに使用される化学物質です。トルエンは染料や香料、溶剤などに使用されています。
これらの物質を扱う仕事に就いている人は、白血病の発生リスクがあります。定期的に健康診断を受け、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。
免疫不全症・染色体異常の病気
原発性免疫不全症候群やダウン症候群などの病気では、白血病の発症リスクがあるといわれています。原発性免疫不全症候群とは先天的に免疫系に欠陥があり、感染症への抵抗力が低下する疾患の総称です。
障害される細胞の種類によって約400種類以上の疾患に分類されます。ダウン症候群(21トリソミー)とは21番染色体が1本多い、染色体異常の一つです。
筋緊張の低下や知的発達の遅れなどがみられます。ダウン症候群では白血病を発症する頻度が高い傾向にあります。
タバコなどの発がん性物質
白血病細胞は、造血幹細胞から血液細胞に分化する過程で遺伝子や染色体が傷つくことによって発生するといわれています。
そして、遺伝子や染色体を傷つける原因の一つがタバコなどに含まれる発がん性物質です。喫煙は肺がんのリスク因子として広く知られていますが、白血病の発症リスクも高まります。
日常的にタバコを吸っている、もしくは喫煙歴のある方は定期的に検診を受けることをおすすめします。
白血病の食事療法
白血病の療養中は吐き気や口内炎などの副作用によって、食欲が低下する可能性があります。しかし、体力の維持や感染症予防に食事はとても大切です。
ここでは日々の食事ポイントを3つご紹介します。
食べられるものを食べられるときに食べる
治療の副作用やストレスによって食欲が低下している場合、食べられるものを食べられるときに食べることが大切です。
吐き気や嗅覚・味覚異常、口内炎などによって食べられるものが限られている場合は、一度に食べる量を減らし回数を増やしてみましょう。
栄養バランスのよい食事をゆっくりとる
治療に耐えるための体力を維持するには、栄養バランスのとれた食事をとることが大切です。
吐き気などの症状が落ち着いたら、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養バランスを意識した食事を心がけましょう。良質なたんぱく質は免疫力を高めてくれます。
手早く準備できる食品を利用する
調理の手間がかからない食品であれば、食欲が低下しているときでも手を伸ばしやすくなります。
さらに、冷凍食品や缶詰などをうまく組み合わせれば、栄養バランスのよい食事を簡単に準備できます。調理が不要なパンやゼリー、ヨーグルトなどもおすすめです。
白血病の原因となる食べ物についてよくある質問
ここまで白血病が原因で注意が必要となる食べ物や白血病の発症リスクとなる要因、食事療法などを紹介しました。ここでは「白血病の原因となる食べ物」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
生活習慣が白血病の発症リスクを高めることはありますか?
喫煙習慣は白血病の発症リスクを高めます。白血病細胞が発生するきっかけは、遺伝子が傷つくことだと言われています。タバコなどの発がん性物質は遺伝子を傷つけるといわれているため、喫煙習慣のある人は注意が必要です。また、喫煙は肺がんなどさまざまな疾患のリスク要因でもあるため、定期的に検診を受けることをおすすめします。
白血病の治療中に体重が減少することで悪影響はありますか?
体重が減る原因は、いくつかあります。まず、がん細胞は通常の細胞と比べて、多くのエネルギーを消費することが挙げられます。また、がん細胞は筋肉の中のたんぱく質を分解し、これを栄養として成長していくため、筋肉量も減ってしまうのです。また、抗がん剤の副作用として起こる吐き気やおう吐、味覚障害のほか、不安などによって、食欲不振に陥ることが多いのも、原因の一つです。体に必要なエネルギーが足りないと体力や抵抗力の低下につながります。感染症を予防し、治療に必要な体力を保持するためにも、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。1日に必要なエネルギー量は一人ひとり異なるため、担当の管理栄養士に相談してみてください。
編集部まとめ
白血病の療養中は抗がん剤などの影響で抵抗力が下がるため、生ものや自家製食品には注意が必要です。
ウイルスや細菌への感染リスクがあるため、安全検査を受けている市販のものをしっかりと加熱処理して食べましょう。
また、副作用症状やストレスなどで食欲が低下している場合には、食べられるものを食べられるときに食べることが大切です。手軽に食べられるものを準備しておきましょう。
また、冷凍食品やレトルト食品などの活用により、栄養バランスのとれた食事を簡単に準備できます。
白血病と関連する病気
「白血病」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 骨髄異形成症候群
- 真性多血症(真性赤血球増加症)
- 本態性血小板血症
- 原発性骨髄線維症
骨髄異形成症候群は骨髄系の造血幹細胞に異常が生じて起きる疾患の総称で、急性骨髄性白血病に移行する場合があります。赤血球や白血球、血小板の減少により、白血病と似た症状が出現します。
白血病と関連する症状
「白血病」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 貧血
- 感染しやすい
- 出血傾向
急性骨髄性白血病の場合、病状は急激に進行します。気になる症状があれば早めに病院を受診しましょう。また、定期的に検診を受けることで病気の早期発見・早期治療につながります。




