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「慢性リンパ性白血病の予後」はご存知ですか?症状・治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/09/14
「慢性リンパ性白血病の予後」はご存知ですか?症状・治療法も解説!【医師監修】

慢性リンパ性白血病はゆっくり進行するがんであるため、年単位で経過観察する必要があります。

10年以上も無症状の場合がある一方、再発して予後不良となるケースも少なくありません。

慢性リンパ性白血病によって起こる症状がでてきたら、速やかに医師に相談して治療を開始するかを検討しましょう。

この記事では、慢性リンパ性白血病の症状・治療法・予後への影響を解説します。

慢性リンパ性白血病について正しい知識を持って、冷静に対処するための参考になれば幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

慢性リンパ性白血病とは?

慢性リンパ性白血病とは、血液のなかの白血球のうち、Bリンパ球ががん化する血液のがんです。Chronic Lymphocytic Leukemiaと呼ばれ、慢性の名のとおり年単位でゆっくり進行していき、初期ではほとんど自覚症状はありません
ゆっくり進行するリンパ腫はインドレントリンパ腫といい、身体に負担のある治療はせずに経過観察となる場合も少なくありません。しかし、途中から進行速度が早くなってアグレッシブリンパ腫となることもあり、慢性だからといって決して油断はできない病気です。

慢性リンパ性白血病の予後は?

慢性リンパ性白血病は、以下の因子によってリスクが分類されており、病期によっても予後は異なります。

  • 異常増殖しているリンパ球の多さ
  • リンパ節の腫脹の有無と個数
  • 骨髄や臓器への転移の有無

日本血液学会によると、慢性リンパ性白血病の生存中央値は低リスクで10年以上・中間リスクで7年・高リスクで1.5~3年となっています。
低リスクであれば長期間に渡って良好な予後となりますが、高リスクになると予後不良となることが少なくありません。慢性リンパ性白血病は医療介入による完治が困難であるため、若年者を除けば症状緩和と病態のコントロールが基本となります。

慢性リンパ性白血病の症状

慢性リンパ性白血病はゆっくりと進行していくがんであるため、症状だけではがんと気付かないことがほとんどです。がんの進行によって症状が顕著になり、経過観察から治療の対象となります。慢性リンパ性白血病の代表的な症状と、治療開始の目安を解説します。

初期の段階ではほとんど症状がない

慢性リンパ性白血病は白血球のBリンパ球が異常増殖する病気ですが、初期段階では自覚症状はほとんどありません。この段階で発見するには検査を受けるしかなく、健康診断で白血球の多さを指摘されて発見されるケースもあります。

貧血

慢性リンパ性白血病によってBリンパ球が異常増殖すると、ほかの血球は相対的に減少していきます。異常増殖した白血球に圧迫されて酸素を運ぶ赤血球が減少し、貧血の症状がでることも少なくありません。
少しの運動での息切れ・立ちくらみなどが頻発するようになったら、血液検査を受けるようにしましょう。

リンパ節の腫れ

慢性リンパ性白血病はリンパ球のがんであるため、異常増殖したBリンパ球が集まったリンパ節が肥大して腫れあがります。
リンパ節が集まっているのは腋の下・首・鼠径部・膝の裏などで、慢性リンパ性白血病で腫れたリンパ節は押しても痛みがないことがほとんどです。

体重減少

慢性リンパ性白血病の患者さんでは、急速な体重減少がよく見られます。血液のなかにがん化したBリンパ球が異常増殖し、血球を作るために大量の栄養素が消費されて、体重維持のためのカロリーが足りなくなるのが原因です。
特に減量を意識していないのに6ヵ月間で10%以上の体重減少が見られた場合には、治療開始の基準となります。

倦怠感

慢性リンパ性白血病の進行によって、体重減少とともに強い倦怠感を伴います。肥満の方が体重減少しても身体が軽くなるような感覚はなく、起き上がれない程の症状となることも少なくありません。
日常生活や仕事が困難になる程の倦怠感がある場合は、治療を開始する基準となります。

発熱

Bリンパ球の異常増殖に伴って、慢性的な発熱が続くことがあります。感染症や炎症がないのに38度以上の発熱が2週間以上続く場合は、治療開始の基準となります。
がんに気付いていない患者さんが慢性的な発熱を訴えて病院を受診し、白血病が発見されるケースも少なくありません。

大量の寝汗

慢性リンパ性白血病による発熱に伴って、大量の寝汗もよく見られます。感染症の兆候がないのに、かけ布団やシーツを交換しなくてはいけない程ずぶ濡れになるケースも少なくありません。
寝汗によって身体が冷えると感染症のリスクが高まるため、寝汗がひどい場合も治療開始の基準となります。

慢性リンパ性白血病の治療法

慢性リンパ性白血病を完治させる治療方法は確立しておらず、症状を緩和しながら病態をコントロールしていく対応が基本となります。
完治しないままでも10年以上無症状のままコントロールできるケースもあるため、過度に心配せずにストレスを少なくすることが大切です。慢性リンパ性白血病の主な治療法を解説します。

無治療経過観察

慢性リンパ性白血病は初期段階では症状がほとんどなく、早期治療で完治させる有効な治療法もありません。このため、症状がなく進行していなければ身体に負担のかかる治療は行わず、経過観察となることがほとんどです。
がんを悪化させないように喫煙や過度の飲酒を避け、バランスの取れた食生活と定期的な運動で、健康的な生活習慣を心がけましょう。慢性リンパ性白血病が完治しなくても、健康的な生活習慣によって体調を管理していれば、生活の質は高く保てます。

薬物療法

慢性リンパ性白血病によって日常生活に支障がある程の症状がある場合は、薬物療法による治療が開始されます。慢性リンパ性白血病に対しては分子標的薬や細胞障害性抗がん薬が用いられ、がん細胞の増殖を阻害します。
これらの薬はがん細胞ではない正常な細胞の増殖も阻害するため、人によっては吐き気・脱毛・下痢などの副作用が少なくありません。慢性リンパ性白血病に対して適応のある抗がん剤はイブルチニブなどがありますが、症例に応じて適切な薬剤は異なるため、医師とよく相談してください。

同種造血幹細胞移植

慢性リンパ性白血病が進行して症状が強い場合などは、同種造血幹細胞移植という造血幹細胞の移植が行われることもあります。人間のドナーから人間の患者さんへ移植するので、同種と呼ばれています。造血幹細胞とは血液細胞を作る細胞で、白血球の血液型の合うドナーから点滴によって移植が可能です。
慢性リンパ性白血病の患者さんは造血幹細胞が破壊されているわけではありませんが、強力な薬物療法や放射線治療は正常な造血幹細胞も破壊してしまいます。通常ならできない程強力な薬物療法や放射線治療で正常な細胞ごとがん細胞を死滅させ、その後に造血幹細胞を移植して回復を目指すのが治療の目的です。

慢性リンパ性白血病の予後についてよくある質問

ここまで慢性リンパ性白血病の症状・治療法などを紹介しました。ここでは「慢性リンパ性白血病の予後」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

慢性リンパ性白血病の進行速度について教えてください。

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

慢性リンパ性白血病はとてもゆっくり進行していき、年単位での経過観察を行います。特に治療をせずに経過観察だけで、10年以上無症状であるケースも少なくありません。貧血・倦怠感・体重減少などの症状があらわれることを活動性病態といい、症状が強くなってきた場合は薬物療法などの治療を開始します。

慢性リンパ性白血病が再発した場合予後に影響を与えますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

慢性リンパ性白血病が再発した場合は、有効な治療法が少ないため予後に影響を与えます。薬物療法によって一度良くなったようにみえても再発した場合は、前回よりも強力な薬物や、メカニズムの異なる薬物を使用して症状緩和を目指します。

編集部まとめ

慢性リンパ性白血病の症状や治療法と予後を解説してきました。

慢性リンパ性白血病は年単位でゆっくり進行するため、症状のない段階では積極的な治療は行わず、経過観察となることが大半です。

進行すると倦怠感・体重減少・発熱による寝汗などが顕著となるため、辛い症状が続く場合は早めに医師に相談してください。

健康的な生活習慣を続けることで10年以上も無症状のままで、寿命を全うする患者さんも少なくありません。

長く付き合っていく病気であるため、過度な心配によるストレスを抱えず、前向きに治療に取り組んでいきましょう。

慢性リンパ性白血病と関連する病気

「慢性リンパ性白血病」と関連する病気は1個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 小リンパ球性リンパ腫

小リンパ球性リンパ種は、慢性リンパ性白血病と同じ種類の血液のがんです。年単位でゆっくりと進行するインドレントリンパ腫ですが、途中から急速に進行するアグレッシブリンパ腫に変わることがあります。急性リンパ性白血病となった場合は週単位で病態が進行していくため、速やかに医師に相談してください。

慢性リンパ性白血病と関連する症状

「慢性リンパ性白血病」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 貧血
  • 体重減少
  • 感染症によらない発熱
  • 腹部の膨満感
  • リンパ節の腫れ

慢性リンパ性白血病の症状は、正常な血液細胞が失われて起こる症状と、ほかの臓器への浸潤によって起こる症状の2種類です。肝臓や脾臓が肥大して腹部膨満感があったり、リンパ節が腫れたりする場合には病態が進行しているおそれがあるため、早めに受診しましょう。

この記事の監修医師