「舌がんの手術方法」は何をするのかご存じですか?手術以外の治療法も医師が解説!

舌癌は、患者さんの状態によってさまざまな治療方法があります。
本記事では舌癌の手術について以下の点を中心にご紹介します。
- 舌癌の手術について
- 舌癌の手術以外の治療法について
- 舌癌のリハビリテーションについて
舌癌の手術について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修歯科医師:
宮島 悠旗(歯科医師)
愛知学院大学歯学部
・経歴
2005年 愛知学院大学卒業 歯科医師免許取得
2006年 東京歯科大学千葉病院 臨床研修医修了
2006年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 入局
2010年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 卒業 歯学博士取得
2011年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 助教就任
日本矯正歯科学会認定医取得
2014年 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス開業
2017年 著書『国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の「デンタルケア」-』出版(幻冬舎)
2021年 著書『歯並び美人で充実人生:幸せを呼ぶゴールデンスマイル』出版(合同フォレスト)
2022年 (株)オーティカインターナショナル/オーティカプロモーション myobrace® 認定講師就任
・資格
歯科医師免許、歯学博士(東北大学)、日本矯正歯科学会認定医
・所属学会 ほか
日本矯正歯科学会所属、invisalign® DIAMOND Status、 myobrace® 認定講師
目次 -INDEX-
舌癌とは
舌癌は口腔内で見られる悪性腫瘍の一種で、主に舌の上皮細胞から始まり、進行すると深い組織にまで広がります。
舌癌は口腔内癌の大部分を占め、日本では毎年約4,200人がこの診断を受けています。
舌癌の明確な原因は解明されていませんが、喫煙・飲酒の習慣、慢性的な口腔内の刺激(義歯の不適合、歯の鋭縁など)がリスク因子とされています。
さらに、一部の症例ではヒトパピローマウイルス(HPV)感染との関連も指摘されています。
また、一般的に扁平上皮癌として進行することが多いですが、高悪性度のものでは急速に増殖するタイプも存在します。
舌癌の症状
舌癌は、舌の側面に形成されることが多く、先端や中央部に現れるケースは少ないといわれています。
初期段階では、白や赤の斑点として現れ、硬いしこりやただれが自覚されることもありますが、痛みや出血は必ずしも伴いません。進行すると潰瘍が形成され、痛み、持続する出血、口臭の悪化などの症状が出ることがあります。
舌の動きの違和感や、口内炎が治らない場合は、医療機関で診察を受けましょう。
舌癌の検査・診断
舌癌はどのように検査・診断が行われているのでしょうか。以下に解説します。
視診・触診
視診では、舌及び口腔内の粘膜に異常な色変化や斑点がないかを検査し、特に白い斑点(白板症)や赤みを帯びた部分の確認に注目します。
また、むし歯や歯科治療物の状態も見ます。
触診により、舌や口内にしこりや異常な硬さ、盛り上がりがないか、手で直接触れて確かめます。
加えて、首周辺のリンパ節に腫れや異常がないかも検査し、がんの存在及びその拡大を評価します。
細胞診・生検
細胞診では、特殊なブラシを使用して病変部から細胞を採取し、これらを顕微鏡で検査してがん細胞の有無を確認します。初期診断や治療効果を診断に役立ちます。
生検には、病変部分の一部を取り除く部分生検と、病変全体を取り除く全切除生検の二種類があり、がんの確定診断や悪性度の評価、さらには周囲への進展状況を調べるために行われます。
CT・MRI検査・超音波検査
CT検査は、X線を利用して体内の断面を3D画像で表示します。
MRI検査は電磁波を使用して軟組織の詳細な画像により、がんを詳細に分析します。
超音波検査は、体内に反射する超音波を用いてがんの位置や深さを調べます。
PET検査・PET-CT検査
PET検査は、がん細胞が正常細胞より多量のブドウ糖を使用する特性に基づいた先進的な画像診断技術です。早期のがん細胞を検出する能力があり、1回の検査で体の広範囲を調べられます。
また、CT検査との組み合わせによるPET-CT検査では、より高精度な画像が得られ、がんの正確な位置や転移の有無を詳しく把握するのに役立ちます。
舌癌の治療(手術)
舌癌の手術にはいくつかの術式があります。以下で、5つの方法について解説します。
舌部分切除術
初期段階の舌癌に対して適用される手術方法で、がん組織とその周辺の健康な組織を含めた一部を取り除きます。がんの大きさや位置に応じて、局所麻酔または全身麻酔下で実施されます。
手術後の機能障害は軽度で、食事や発話に必要な舌の動きは大きく影響を受けません。
手術後の回復は早く、日常生活に早期に復帰できるといわれています。
舌半側切除術
大きめの舌癌に対応するために舌の半分を切除する手術です。舌の動く部分だけを対象にする場合と、舌根を含む広範囲の切除が含まれる場合があります。術後は一時的に経鼻経管栄養や点滴による栄養補給が必要になる場合もありますが、適切な再建手術することで、嚥下や発音などの日常生活に必要な機能の大部分を保持することが可能といわれています。
舌(亜)全摘術
進行した舌癌に対処するために、舌の大部分または全てを切除する手術です。大規模な切除により、食事の摂取や発話に必要な舌の機能に重大な影響が及ぶため、機能回復を目指した再建手術が重要な役割を果たします。
術後は経鼻経管栄養やリハビリテーションを通じて、嚥下や発音機能の回復を目指しますが、機能回復には時間と努力が必要です。
頸部郭清術
リンパ節への転移が確認された場合、または転移のリスクが高いと判断された場合に、将来のリンパ節転移の予防を目的として実施される手術です。
影響を受けたリンパ節とその周囲の組織が切除されますが、可能な限り周辺の重要な血管や神経、筋肉を温存することが目指されます。
再建手術
治療で生じた組織の欠損を補い、機能的および審美的な回復を促進することを目的としています。
再建手術は、患者さん自身の体から取った組織や、人工材料を用いて実施されます。
手術はがんの切除と同時(即時再建)または、切除後に別の時期(二次再建)に行われます。
舌の再建には、前腕皮弁(橈骨皮弁)や広背筋皮弁などの筋皮弁移植が一般的に用いられます。これにより、舌の機能や形態を部分的に回復させることができます。
再建の方法や時期は、欠損の程度や健康状態、生活状況に応じて個別に決定されます。
舌癌のその他の治療
次に、手術以外の治療について解説します。
放射線治療
組織内照射と外部照射の、二つの主要手法があります。
組織内照射では、がん組織内に直接放射性物質を挿入し、局所的に高い放射線量を照射し、主に小さな腫瘍に対して適用されます。
外部照射は、体外からがん細胞へ放射線を照射し、広範囲の治療や術後の補助治療<として行われます。
副作用は、早期には口腔内の乾燥や味覚障害が現れることがあります。
口内炎がひどい場合には、摂食障害や発音障害を引き起こす可能性もあります。
遅発性の副作用としては、開口障害や下顎骨の問題などが生じることがあります。
化学療法
進行した症例や手術が困難と判断された場合、または再発や遠隔転移のリスクを減少させる目的で選択されます。
抗がん剤が使用され、また、がんの進行を遅らせたり、症状の緩和を目指したりするために、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬、タキサン系、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗薬などの治療薬が利用されることもあります。
舌癌のリハビリテーション
舌癌治療後に重要なリハビリテーションについて、以下で解説します。
嚥下(飲み込み)のリハビリテーション
舌癌の手術後に生じる飲み込む機能の低下に対応し、誤嚥による肺炎などのリスクを減少させるための訓練です。残された舌や再建された舌の機能に応じて、飲食物の摂取方法を習得します。訓練方法には「すすり飲み」技法などがあります。
また、首を後ろに傾けて重力を利用し食べ物を喉に送る訓練も行われます。
そして、食べ物へのとろみ付けや一口の量を調節するなどの工夫も重要です。
発音のリハビリテーション
舌癌治療後に頬、唇、残存する舌などの動きを調節し、正確な発音を可能にするための訓練です。
鏡を使いながら、発音のために必要な口腔の動きを学びます。
舌を切除した後は、舌の動きを再学習することが重要です。
発声前には「すすり飲み」をして、唾液を管理する訓練が行われます。
発声と発音を改善し、口を大きく動かす練習を通じて、明瞭な発話を目指します。
装置を使用したリハビリテーション
舌接触補助床(PAP)や軟口蓋挙上装置(PLP)といった装置を活用する方法があります。舌や軟口蓋の機能不全を補助し、嚥下や発音を改善する目的で用いられます。
PAPは、カ行やタ行の発音をしやすくします。
PLPは、軟口蓋の挙上が不十分で、息が鼻から漏れてしまう問題を解消するために使用され、よりクリアな発音を補助します。
頸部郭清術後のリハビリテーション
手術による顔の腫れや首の固さ、肩の動きにくさなどの運動障害への対応を目的としています。
肩や首の負担を減らす生活様式を心掛けながら、腕を上げる動作や肩、首を柔軟にするエクササイズをします。
これらの活動は、退院後の外来や自宅で継続し、徐々に症状の改善を目指します。
舌癌についてよくある質問
ここまで舌癌を紹介しました。ここでは舌癌についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
舌癌のステージを教えてください。
宮島 悠旗 医師
舌癌のステージはTNM分類に基づいており、Ⅰ期からⅣC期までの段階に分類されます。
T1は腫瘍が2cm以下かつ深さ5mm以下、T2は2cmを超えて4cm以下かつ深さ10mm以下、T3は4cmを超えるか深さが10mmを超える腫瘍、T4はさらに進行した腫瘍で、周囲の組織への侵入が見られます。
ステージⅠとⅡではリンパ節転移がなく、ステージⅢとⅣAではリンパ節転移の程度に応じて分類され、ⅣBとⅣCはそれぞれさらに進行した状態と遠隔転移を示します。
舌癌を予防する方法はありますか?
宮島 悠旗 医師
舌癌予防には、喫煙を避け、アルコール摂取を控える生活習慣の見直しが重要です。定期的な口腔内のチェックも舌癌の早期発見に役立ちます。かかりつけの歯科医院や口腔外科で定期健診を受けることをおすすめします。自身でも日常的に舌や口腔内の変化に注意を払い、口内を清潔に保ちましょう。
もし口内の違和感や痛み、腫れ、潰瘍などの症状が長期間続く場合は、早めに歯科医院や口腔外科を受診し、専門の医師の診察を受けるようにしましょう。
まとめ
ここまで舌癌の手術についてお伝えしてきました。舌癌の手術についての要点をまとめると以下の通りです。
⚫︎まとめ
- 舌癌の手術には、舌部分切除術、舌半側切除術、舌(亜)全摘術、頸部郭清術、再建手術などがある
- 舌癌の治療は手術以外に、放射線治療や化学療法が併用される場合もある
- 舌癌では、嚥下や発音に関するもの、装置を使用したもの、頸部郭清術後のリハビリテーションなどが行われる
舌癌と関連する病気
舌癌と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
耳鼻咽喉科の病気
- 口腔底癌
- 歯肉癌
- 口蓋癌
- 頬粘膜癌
- 口唇癌
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
舌癌と関連する症状
舌癌と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。