「悪性リンパ腫が再発したら」どんな治療をするの?日常生活の注意点も解説!
悪性リンパ腫の予後改善には、再発予防が非常に重要とされています。しかし、実際には悪性リンパ腫は再発することも多い病気です。
今回の記事では、悪性リンパ腫が再発した場合に行う治療方法・療養生活で気を付けるべきポイントなどについて解説します。
また、記事後半の「悪性リンパ腫の再発についてよくある質問」では、再発率についても触れているので併せて参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫とは、血液中にあり免疫機能などに関わるリンパ球のがんです。このような血液のがんを造血器悪性腫瘍と呼びます。
悪性リンパ腫以外の代表的な造血器悪性腫瘍は、白血病・骨髄腫などです。悪性リンパ腫は化学療法の効果が出やすいがんといわれていますが、一方で再発も多いがんです。
悪性リンパ腫のなかにもさまざまなタイプがあり、このがんのタイプにより再発率は異なります。
悪性リンパ腫のなかで最も割合が多いとされるのはB細胞リンパ腫というタイプで、このタイプの4年以内の再発率は40%にのぼります。
悪性リンパ腫が再発したら?
悪性リンパ腫では、化学療法・放射線治療が治療の中心となります。では、こうした治療をした後に再発が見られた場合には、どのような治療方針になるのでしょうか。
状態に合わせて治療方法が選択される
再発した場合も、基本的には化学療法を中心とした治療を行います。しかし、治療方法により身体への負担・効果は異なります。
そのため、患者さんごとの悪性リンパ腫のタイプ・年齢・全身状態・患者さんの希望などを考慮しながら治療方針を検討することが大切です。
再発後に行う治療の具体的な内容については、後述する再発時の治療の項目を参考にしてください。
緩和ケアを中心に行われるケースも
悪性リンパ腫のタイプ・これまでに試した治療方法の効果・治療に耐える体力の有無などを検討した結果、がん細胞を消滅させて治すための積極的な治療は行わない場合もあります。
このような場合に行うケアを緩和ケアといいます。緩和ケアの目的は、悪性リンパ腫の進行によって患者さんに現れる症状・精神的な苦痛などを可能な限り和らげることです。
再発時の治療
悪性リンパ腫の再発は、前回の治療方法ではがん細胞をすべてなくせなかったことを指します。そのため、再発時の治療では、前回の治療とは内容を変えることが基本です。
では、具体的にはどのように治療方法を変えるのでしょうか。
強めの治療を行う
臓器の機能・患者さんの年齢などから、より強い化学療法に耐えられると判断された場合などは、前回よりも強い治療を行うことが多いでしょう。
治療中も、効果と副作用のバランスを確認しながら、必要に応じて治療内容の変更・調整を行います。
前回とは違う治療方法を選択する
化学療法のなかでも、薬の種類には多くの選択肢があります。また、化学療法のみで十分な効果が得られない場合には、放射線治療を併用したり造血幹細胞移植を行ったりすることもあるでしょう。
このように治療方法を追加・変更することで前回よりも高い効果が期待できる場合があります。
新薬を選択する
一般的に使用されている化学療法の薬剤は、長年の使用で培われてきた臨床データが豊富にある点がメリットです。しかし、新しい薬の開発も日々進んでおり、そのなかにはすでに医療機関で使用することが認可されたものもあります。
一般的に効果が高いと考えられる薬剤で十分な効果が得られなかった場合には、このような新薬を選択することがあります。
免疫チェックポイント阻害薬を使用する
白血球のなかでもT細胞と呼ばれるリンパ球には、がん細胞を攻撃する能力があることがわかっています。しかし、このT細胞には異物への攻撃をやめるスイッチがあります。
これが免疫チェックポイントです。一方、がん細胞にはT細胞にむけて攻撃をやめるよう命令を送る機能があります。
そこで、命令が出されても受け取らずに攻撃を続けるように、薬によってチェックポイントの機能を阻害する治療法があります。このチェックポイント阻害薬による治療は、薬物療法・免疫療法の一種です。
薬の組み合わせを変える
化学療法の薬剤には多くの種類があり、初回の治療では悪性腫瘍のタイプをもとに効果が期待できる薬剤を予測して使用します。
そのため、もし最初の方法で十分な効果が出なかったり再発したりという結果になった場合には、第2候補・第3候補となっている薬剤を使用するのです。
また、単剤の治療だけでなく複数の薬を組み合わせて使用することもあります。
大量化学療法・自家幹細胞移植を行う
前述のとおり、再発が起きた場合には初回の治療よりも強い治療方法を選択することが一般的です。
その一つとして、がん細胞と同時に多くの血液細胞も死滅するような大量化学療法を行う場合があります。しかし、血液細胞がなくなれば人体に必要な機能も失われてしまうため、大量化学療法の後に血球細胞のもとになる造血幹細胞を移植するのです。
移植には、あらかじめ患者さん自身から採取した造血幹細胞を用いる「自家幹細胞移植」と、ドナーの幹細胞を移植する「同種幹細胞移植」があります。悪性リンパ腫の治療では、自家幹細胞を用いる場合が多いでしょう。
日常生活の注意点
悪性腫瘍の治療中でも、入院が必要ない状態と判断されれば、自宅で内服薬による治療が可能です。では、このように自宅で過ごしている時期に注意すべきことはあるのでしょうか。
治療後は経過観察をしっかり受ける
退院した後も、自宅に戻ってから一定の期間は、定期的に採血などを行い経過を観察します。
このような検査を受けることで、もし悪性リンパ腫が再発した場合にも、自覚症状が現れるより前の段階で発見できる可能性が高まります。
再発後は早い段階で治療を始めることが大切なので、治療後の定期的な経過観察は指示された頻度でしっかりと受けることを心がけましょう。
体調に異変があったらすぐに受診する
化学療法中・治療後であっても、軽い運動・仕事などの日常生活が強く制限されることはありません。
体力に無理のない範囲で、健康な方とほぼ同じ生活を送ることができます。ただし、悪性リンパ腫の治療中・治療後には治療の副作用・病気の再発に注意が必要です。
特に、治療後は治療の副作用により免疫力が低下している可能性があるため、感染症の予防に努めましょう。具体的にはうがい・手洗いを徹底し、もし体調に異変を感じたら早期に受診することをおすすめします。
悪性リンパ腫の再発についてよくある質問
ここまで悪性リンパ腫が再発した場合の治療方法・療養生活の注意点などを紹介しました。ここでは悪性リンパ腫の再発についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
悪性リンパ腫の種類によって再発のしやすさは変わるのですか?
甲斐沼 孟(医師)
悪性リンパ腫の予後には再発が大きく関わるとされるため、種類による再発率の差についてはさまざまな研究がされています。その結果、悪性リンパ腫の種類により性質・再発率に差が見られることが分かってきました。再発することが多いといわれているのはT細胞リンパ腫というタイプです。しかし、ほかのタイプでも再発の可能性はあります。
再発が起こりやすいのは寛解から何年くらいまでですか?
甲斐沼 孟(医師)
最初の治療を行い、症状・検査の数値などが落ち着いている状態を寛解(かんかい)といいます。悪性リンパ腫の再発が特に起こりやすいのは、寛解から2年以内です。さらに、小児の場合は寛解から4年、成人の場合には寛解から5年が経過しても再発がなければ、ほぼ治癒したと考えてよいでしょう。これは、4~5年以上経過してから再発が見られる可能性は低いためです。
編集部まとめ
悪性リンパ腫をはじめとする血液のがんは、症状が寛解しても4~5年は再発の可能性が高いとされています。
再発を防ぐ治療を続け、また再発が見られたら治療の強度を上げるなど、根気強く向き合う必要のある病気といえるでしょう。
治療の合併症・再発・療養生活などについて不安なことがあれば、一人で抱え込まずに医師や病院のスタッフに相談してみるのも一つの方法です。
悪性リンパ腫と関連する病気
「悪性リンパ腫」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 白血病
- 骨髄腫
悪性リンパ腫と同じ造血器悪性腫瘍(血液のがん)には、ほかに白血病・骨髄腫などがあります。がんになる細胞の種類・がん細胞が増殖する場所などには違いがありますが、治療法など共通する部分も多いでしょう。
悪性リンパ腫と関連する症状
「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は2個程あります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- リンパ節腫大
- 発熱
悪性リンパ腫の自覚症状として多いのが、リンパ節の腫れです。腫れが強く現れると、痛みをともなう場合があります。また、リンパ球の働きが弱まって免疫力が下がることで発熱などの症状が見られる場合があります。