「大腸がんと直腸がんの違い」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】
医療機関で「大腸に腫瘍があるといわれたが診断名は直腸がんだった」という経験から、大腸がんと直腸がんの違いが気になったという方もいるかもしれません。
今回の記事では、大腸がんと直腸がんの関係のほか、直腸がんとその他の大腸がんについて症状の違い・治療方法の違いなどを解説します。
記事の最後では、大腸がんについてよくある質問にも答えていくので、そちらも併せて参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
大腸がんとは?
消化管は口から肛門までをつなぐひとつながりの管で、消化管に属する臓器はそれぞれの部位が「消化」という行程の中で異なる役割を持っています。そのなかで、大腸は主に食べ物に含まれる水分の吸収を担う臓器です。
また、小腸から肛門のあいだにあり、食物が最後に通過する臓器ともいえます。「大腸がん」とは、この大腸にできるがんの総称であり、日本人に多いがんの1つです。
大腸がんと直腸がんの違いは?
大腸がんの概要は上記のとおりですが、では直腸がんと大腸がんはどのような関係にあるのでしょうか。部位ごとの名称とともに解説します。
直腸は大腸の一部
大腸の最後は肛門につながっており、肛門の直前で便を貯める役割を担っている部位が直腸です。つまり、直腸は大腸の一部であり、直腸がんは大腸がんに含まれます。
直腸がんを「大腸がん」と呼んでも間違いではなく、より細かく分類した場合の病名が「直腸がん」となります。
大腸がんには直腸がんのほかに結腸がんがある
大腸のうち、直腸以外の部分が結腸です。直腸と比べて結腸は長く、上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸という4つの部位に分かれます。
これらの部位にできるがんを総称して「結腸がん」としますが、診断名としては「上行結腸がん」「S状結腸がん」など部位ごとに細分化して呼ばれることが多いです。
大腸がん(直腸がん)の症状
実際に大腸がんになると、どのような症状が現れるのでしょうか。ここからは、大腸がんの方によくみられる症状をまとめます。
がんができた部位によって現れやすい症状は異なるため、各症状と関連が深い部位も併せて解説します。
血便
大腸がんが大きくなってくると腸の内側の壁が盛り上がった状態になります。この盛り上がった部分が通過した便などで傷つき、出血して起こるのが血便です。
便は水分を吸い取られることで次第に固形になるため、大腸の前半で出血があっても血液は泥状の便に混ざり込んで排泄されたときには目立ちません。しかし、肛門に近づくにつれて便は固形になっていくため、腸の壁からの出血は便の表面につくようになり肉眼的にも確認しやすくなります。
便秘・下痢
前述のとおり、大腸の主な役割は泥状になった便から水分を吸収することです。そのため、大腸に不調が起こると水分が十分に吸収できず、便の形成に問題が起こり便秘・下痢が起こります。
特に大腸がんでは、頻繁に便秘と下痢を繰り返すという患者さんが多いです。
便が細くなる
がんが大きくなると、腫瘍に圧迫されて大腸の内部は狭くなります。その結果、細い便しか通過できず、排泄した際にも細い便がみられるのです。
このような症状は、直腸にがんがある場合によくみられます。
残便感
直腸には、排泄前に便を溜めておく働きのほかに、便が溜まってきたら便意を感じる役割があります。しかし、直腸にがんが発生した場合、排便した後も内部に異物が残った状態のため便意が持続することがあるのです。
お腹の張り
がんが腫大して腸が狭くなると、腸管が狭窄して内容物が通りにくくなります。その結果、便秘になったりガスの排出が滞ったりすることで現れる症状がお腹の張りです。
腸の前半では便がまだやわらかいため、通過障害は起こりにくいとされています。
一方、下行結腸以降にがんができた場合には「お腹が張る」と感じる患者さんが多いです。
便が出なくなる
大腸がんによる腸の狭窄が少ないうちは便が細くなる・便通の変化という形で症状が現れます。
しかし、がんが腫大することで狭窄が強まると便が出なくなることがあります。強い狭窄が起こると、腸が塞がった状態になることで、次に紹介するような腹痛・嘔吐が起こる可能性があるため注意が必要です。
腹痛・嘔吐
上記のような通過障害が進行すると、内容物が通過できなくなり「腸閉塞」の状態となります。
腸閉塞では、腸の内容物が通り道をふさがれることで、狭窄部よりも口側の消化管が張った状態になって痛みを感じる方が多いです。
また、内容物が溜まったり腸が浮腫んで水分が腸管内に漏出したりした結果、腸の内圧が上がります。しかし肛門側からは内容物を排出することができないため嘔吐が起こるのです。
体重減少
上記のような消化器の不調が続くと「お腹が張って苦しいからあまり食べたくない」「吐き気があり食欲がわかない」などの理由から食事量が減る可能性があります。
このような状況に陥ると、生活していくために必要な栄養を十分に摂取できず体重が減る場合があります。
こうした消化器症状に起因する低栄養状態は、腸の後半にがんができた場合によくみられる症状です。
大腸がん(直腸がん)の治療方法
大腸がんの主な治療方法は、手術によるがんの切除です。
早期の大腸がんについては内視鏡での治療が可能な場合もありますが、病巣の深さなどにより手術が必要と判断されることもあります。
結腸がんの手術では、腫瘍ができた部分の腸を切除して、残った大腸をつなぎ合わせる方法が一般的です。しかし、直腸がんの場合には腫瘍ができた位置により、腸管だけでなく肛門括約筋まで切除する可能性があります。
このような場合に、肛門からの排泄機能を代替するために造設されるのが人工肛門です。なお、がんの進行度などに応じて手術前後に化学療法を併せて行うことがあります。
大腸がんと直腸がんの違いについてよくある質問
ここまで大腸がんと直腸がんの関係・症状・検査方法などについて紹介してきました。これまでの内容も踏まえて「大腸がんと直腸がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんの中で直腸がんはどのくらいの割合を占めますか?
甲斐沼 孟(医師)
直腸がんは、大腸がんの約3割を占めています。大腸を「結腸」と「直腸」に分けた場合には、7割を占める結腸がんのほうが多いといえるでしょう。しかし、結腸は長く、いくつかの部位に分けられます。部位ごとに細分化した場合には直腸がんが最も多く、次いで多いのは18.7%のS状結腸がんです。つまり、この2つの部位だけで、大腸がんの半分程を占めることになります。がんの発生が多い順では、その後に上行結腸・横行結腸・盲腸・下行結腸が続きます。
大腸がん(直腸がん)が疑われる場合どのような検査が行われますか?
甲斐沼 孟(医師)
検診などで行われている「便潜血検査」で陽性といわれた場合や、今回紹介したような症状をきっかけに大腸がんが疑われる場合の検査は大腸カメラとなります。大腸カメラは、下剤を飲んで腸をきれいにした後で、肛門から内視鏡を入れて腸の中を観察する検査です。大腸カメラでは、基本的に患者さん自身が受け答えができる状態で検査をします。そのため、胃カメラと同じく腸内の画像を見ながら医師と話をすることもできるでしょう。前処置・検査への不安から検査に踏み切れない方もいますが、早期発見・早期治療のためには、まず積極的な検査をおすすめします。
編集部まとめ
直腸がんは大腸がんの一種であり、部位ごとに細分化した場合は大腸がんの中で報告数が多いがんです。同じ大腸のがんでも、腫瘍ができる部位によって現れる症状はさまざまです。
直腸がんは、結腸がんと比較してがんが大きく進行する前に症状が現れることが多く、早期発見の可能性が高いがんともいえます。
小さな違和感であっても消化器症状が長く続くようであれば、医療機関を受診して検査を受けてみてはいかがでしょうか。
大腸がんと関連する病気
大腸がんと関連する病気には、下記の3つがあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細は、リンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)になると、腸の粘膜が繰り返し強い炎症を起こすことで大腸がんのリスクが高まります。また、家族性大腸腫瘍症・リンチ症候群は大腸がんのリスクを高める遺伝性疾患です。
大腸がんと関連する症状
大腸がんと関連する症状には、下記の3つがあります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 便通の異常
- 腹痛・嘔吐
- 血便
これらの症状は、大腸がんの患者さんにみられる症状です。
ただし、大腸がん以外の病気でも現れることがあります。腹部・便通の不調に気付いたら、早期に医療機関を受診し原因を調べることをおすすめします。