「女性でも咽頭がん」を発症するの?症状や原因についても解説!医師が監修!
のどのがんの一つ「咽頭がん」は、喫煙や飲酒の習慣のある50~60歳代の男性に多く見られます。
しかし、たばこを吸わずお酒を飲まない女性でも、ウイルス感染によって発症する可能性があることをご存知でしょうか。
この記事では咽頭がんの原因・症状について解説します。
監修医師:
渡邊 雄介(医師)
所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
目次 -INDEX-
咽頭がんとは?
のどは空気や食べ物の通り道で、呼吸や発声、嚥下(えんげ)などを行う器官です。のどは、咽頭と喉頭(こうとう)で構成されており、咽頭はさらに3つに分けられ、それぞれ上咽頭・中咽頭・下咽頭と呼ばれています。
この部位にできるがんが咽頭がんで、上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんに分類されます。
咽頭がんは女性もかかる?
一般的に男性に多く見られる咽頭がんですが、女性でもかかることがあります。
咽頭がんというと、長期にわたる喫煙やアルコールの過剰摂取が原因であることはよく知られていますが、ウイルス感染も咽頭がんを発症させる原因の一つとなります。
特にウイルス感染によって起きる咽頭がんは、これまでかかりやすいといわれてきた年齢層よりも若い世代や女性にも多いことを知っておきましょう。
一般的には中高年の男性に多い
咽頭の中部にできる中咽頭がんを例に挙げると、圧倒的に男性に多く見られます。
なかでも50~60歳代に多く発症するのは、喫煙や飲酒の過剰摂取といった長年にわたる化学的刺激によることが原因と考えられます。
女性でもかかることがある
咽頭がんの主な発症原因が過度な喫煙や飲酒であることから、患者数は中高年男性の割合が高い傾向にあります。しかし、ウイルス感染(ヒトパピローマウイルス(HPV))による発症は、中高年に該当する年齢層よりも若い世代や女性にも多く見られます。
たばこやアルコールを摂取する習慣がないから、がんになる心配がないというわけではありません。
咽頭がんの原因
咽頭がんの発症する原因は主に3つあります。
まずは、長年にわたる喫煙や飲酒の過剰摂取です。そして咽頭の中部にできる中咽頭がんについては、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が関与していることがわかっています。
咽頭がんの発症要因を知り、がんになりにくい生活習慣を心がけましょう。
喫煙
喫煙というと肺がんをイメージする方も多いでしょう。
しかし、喫煙による発症リスクの最も高いものが咽頭がんです。国立がん研究センターの調査によると、たばこを吸わない男性のグループと比較して、たばこを吸う男性のグループの口腔・咽頭がんの発生リスクが2.4倍になることがわかりました。
飲酒
過度の飲酒は咽頭がんを引き起こすため、日頃から適切な飲酒量を心がけましょう。
飲酒により顔が赤くなる人のことをフラッシャーと呼びます。このフラッシャーに該当する方が習慣的に飲酒を続けることで、発がんする可能性が高いことがわかっています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
中咽頭がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんの原因ともなるウイルスです。
従来の中咽頭がん患者さんの年齢層よりもやや若い世代や、女性にも発症する事例が多く認められています。頸部リンパ節に転移することが多く、初期症状として首にできるしこりが挙げられます。
咽頭がんの症状
がんを早期に発見するためには、どのような初期症状があるのかを知っておくことが大切です。しかし咽頭がんは、部位によって初期症状が自覚しにくいものがあるので注意してください。
咽頭がんの進行によって、のどの痛みや出血・ものを飲み込むときの違和感・口を大きく開けにくいといった症状が現れます。食事や発声など、のどを使うときに異変を感じたら、まずは医療機関に相談してみることをおすすめします。
初期症状はあまりない
咽頭がんは、初期のうち自覚症状が見られないという特徴があることを知っておきましょう。
初めは気になる症状が無くても、がんが大きくなるにつれて、飲み込みにくさや息苦しさが生じてきます。また、がんが発見されるケースとして、頸部リンパ節への転移によるしこりが挙げられます。
「なんとなく」でも、のどの違和感や軽い痛みがあれば、早めに耳鼻咽喉科を受診することで咽頭がんの早期発見につなげられるでしょう。
咽頭痛
咽頭の下部にできる下咽頭がんの症状に、咽頭痛やつかえ感といった咽喉頭異常感があります。
進行すると、ものを飲み込むことが困難になる・声がかすれる・耳が痛くなるといった症状も出現します。風邪をひいたわけではないのに、のどの痛みが治まらない場合は注意しましょう。
飲み込むときの違和感
食べ物は咽頭の中部から下部を通って食道に行くため、この部位にがんができると(中咽頭がん・下咽頭がん)、飲み込むときの違和感などの嚥下障害が現れます。
初期症状に乏しいため、これらの症状はリンパ腺への転移といった、進行した状態で発見されるケースが多く認められます。
のどからの出血
咽頭がんははっきりとした初期症状が少ないことが特徴です。しかしのどの痛みや飲み込みにくさ、しゃべりにくさなどが徐々に進行していくと、のどからの出血や耐えられない痛みを引き起こします。
嚥下障害や呼吸困難といった生命の危険に関わる症状にもつながりますので、のどからの出血が見られた場合は即座に受診しましょう。
口を大きく開けにくい
中咽頭がんでは、口を大きく開けにくいことも症状の一つに挙げられます。口の開けにくさのほかにも、舌を動かしにくい、耳が痛むといった変化が現れます。
のどだけでなく顔周りに違和感や痛みを覚えた場合にも注意しましょう。直接のどに異変がなくても、口を開けにくくなったり耳が痛んだりする場合は、医師に相談することをおすすめします。
女性の咽頭がんについてよくある質問
ここまで咽頭がんの原因・症状について紹介しました。ここでは「女性の咽頭がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
若い女性が咽頭がんになることもありますか?
渡邊 雄介(医師)
若い女性でも咽頭がんを発症することがあります。喫煙や飲酒の習慣がなくても特に注意したいのがウイルス感染による発症です。ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんの原因ともなるウイルスで、人の皮膚や粘膜に感染する、きわめて一般的なものです。主に性交渉によって感染し、性交渉経験のある女性であれば80%以上が生涯で一度は感染するといわれています。のどなどに違和感があれば「女性は咽頭がんになる可能性が低いから」と放置せず、医療機関を受診しましょう。
咽頭がんが疑われる場合、何科を受診すればよいですか?
渡邊 雄介(医師)
咽頭がんの症状は、咽頭痛・ものを飲み込むときの違和感・声のかすれや出しにくさなどが挙げられます。のどの痛みや飲み込みにくさなどの違和感があるようならば、耳鼻咽喉科もしくは頭頸科を受診しましょう。頭頸科は、主に頭部を診療する科で、一部の医療機関で開設されています。
編集部まとめ
今回は咽頭がんの原因・症状について解説しました。男性に多いとされる咽頭がんですが、過度の喫煙や飲酒の習慣がない女性でも、ウイルス感染による発症が認められています。
また、咽頭がんは初期症状が見られない場合も多く、がんの発症に気づきにくいという特徴があります。小さな異変を見落とさないように、日頃から体調チェックを行いましょう。
ご自身またはご家族に気になる症状が見られた方は、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
咽頭がんと関連する病気
「咽頭がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
咽頭がんの原因の一つである喫煙や過度の飲酒は、口腔・咽頭・食道といったほかの臓器のがんの発生要因にもなります。複数の臓器に発生する重複がんを防ぐためにも、日頃から生活習慣に気をつけ、異変を感じたら早めに受診するようにしましょう。
咽頭がんと関連する症状
「咽頭がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 声のかすれ
- 息苦しさ
- のどの痛みや違和感
- 耳の痛み
- 嚥下困難
咽頭がんには、上記のように風邪によるものと似た症状があるため、気づきにくく発見が遅れることがあります。気になる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診して、早期の発見・治療につなげることが大切です。