「慢性リンパ性白血病の治療法」はご存知ですか?症状や検査法も解説!【医師監修】
慢性リンパ性白血病(CLL)は悪性リンパ腫やほかの血液がんとは異なり、骨髄移植などで根治を目指すのではなく、抗がん剤で症状や病気の進行をコントロールする疾患 です。
しかし、慢性リンパ性白血病はどのような症状が出るのか・どのような治療をするのか・治療費はどのぐらいかかるのか、知らない方の方が多いでしょう。
この記事では治療法・治療開始時時期・治療にかかる費用と一緒に、慢性リンパ性白血病とはどのような病気なのかを解説します。ぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
慢性リンパ性白血病とは?
慢性リンパ性白血病は、何らかの原因で血液中にある免疫細胞のBリンパ球が異常化して過剰に増殖する病気です。 進行がゆっくりな疾患 で、発症してもすぐ症状が出ることはなく、何年か経過してから倦怠感・発熱・リンパ節の腫れ・肝臓や膵臓の腫れ・体重減少などの症状が現れます。
病状が進行すると、骨髄中の慢性リンパ性白血病細胞が増えすぎて正常な白血球・赤血球・血小板が減少し、貧血や免疫異常が生じるのが特徴です。慢性リンパ性白血病は、50歳以上の男性によくみられます。日本人の発症率は白血病患者全体の1%〜2%と非常に少ないのですが、近年は増加傾向にある疾患です。
血液検査で偶然発見される ケースが多いので、心配な方は医療機関で調べてもらいましょう。
慢性リンパ性白血病の治療は?
慢性リンパ性白血病の治療は長期にわたります。病気がみつかったらすぐ治療を始めるのではなく、医師が患者さんの症状をみながら治療開始時期を決めるのも、ほかの血液がんと異なるところです。
治療を開始する目安
慢性リンパ性白血病は、診断がついたらしばらくは経過観察となり、治療は具体的な症状が発現してから始めます。治療を開始する目安は以下の通りです。
- 体重減少・極度の倦怠感・寝汗・発熱などの身体症状
- 骨髄機能低下で血小板減少や貧血症状が悪化した
- ステロイド治療が効かない自己免疫性貧血や血小板減少症がある
- 左肋骨弓下に6cm以上の脾腫・進行性の脾腫がある
- 直径10cm以上のリンパ節塊・進行性のリンパ節腫脹がある
- リンパ球が2ヶ月以内に50%以上増加、あるいは6ヶ月以内で2倍以上の増加が予想される
抗がん剤などの化学療法
慢性リンパ性白血病は化学療法で治すのは難しい病気です。しかし、病気の進行をコントロールしたり症状を緩和したりするのに有効なので、治療は化学療法を中心に行われます。
慢性リンパ性白血病に対する標準的な化学療法は、フルダラビン・シクロフォスファミド・リツキシマブと4種類の抗がん剤を併用したFCR療法です。しかし、FCR療法にもデメリットがあります。近年はベンダムスチンとリツキシマブを併用するBR療法・フルダラビンとシクロフォスファミドを併用するFC療法・フルダラビン単独療法 を選ぶのが一般的です。
慢性リンパ性白血病の治療に使える抗がん剤は、異常なBリンパ球の増殖を抑えるイブルチニブなどの新しい薬が開発されており、臨床研究も盛んに行われています。イブルチニブは、リツキシマブが効きにくい染色体17p欠失・TP53異常がある慢性リンパ性白血病に有効な薬剤です。
長いスパンで病気と付き合うことが必要とされる
慢性リンパ性白血病は、病気の経過も治療期間も長いのが特徴です。ほかの慢性疾患と同じように、病気とは長い付き合いになります。健康なときと変わらない快適な生活をするには、通院・投薬でコントロールするだけでなく、日常生活でも注意が必要です。
日常生活では、外出したら手洗い・うがいを励行する・人ごみの中ではマスクを着用する・バランスのとれた食事をとるの3点を守ってください。
慢性リンパ性白血病の症状
慢性リンパ性白血病を発症して時間が経過すると、さまざまな症状が現れます。初期から末期までそれぞれの段階でよく現れる症状を5点紹介するので、参考にしてください。
自覚症状が乏しい
慢性リンパ性白血病は、初期(低リスク)の段階では自覚症状がほとんどないのが特徴です。しかし、初期の段階でもごくまれに、疲れやすい・発熱・体重減少などの自覚症状がある方がいます。気になったら早く受診して、医師に相談しましょう。
痛みのないリンパ節や内臓系の腫れが起こる
慢性リンパ性白血病が中期(中リスク)に入ると、リンパ節や脾臓・肝臓など内臓の腫れが現れます。がん化したB細胞は始め、血液・骨髄・リンパ節の中だけで増殖しますが、病気が進行すると肝臓や脾臓などほかの臓器の中でも増殖するようになるからです。
リンパ節が腫れても押さない限り痛みはありませんが、肝臓や脾臓が腫れると、腹部や背中の痛みや圧迫感が現れます。
寝汗がひどい
慢性リンパ性白血病では、寝汗もよくみられます。寝汗の量は非常に多く、掛け布団や敷布団の取り換えが必要なほどです。
しかし、寝汗は発熱を伴う感染症・心臓病・甲状腺異常などさまざまな疾患が原因でみられる症状なので、自己判断をせず早く病院を受診して原因を突き止めてください。
体重減少
慢性リンパ性白血病も進行すると、がん化したBリンパ球が増え体重が減少します。がん細胞は健康な細胞と違い、患者さんの体内にある筋肉や脂肪などを破壊して自分の栄養にするのが特徴です。
ダイエットをしているなど、思い当たる理由がないのに6か月~1年で体重が5%以上減っていたら、何か病気が隠れていると考えてください。
免疫異常
慢性リンパ性白血病が進行して血中のがん化したBリンパ球が多くなると、貧血や血小板減少・免疫異常などの症状を招きます。免疫異常とは免疫が正常に働かなくなって生じる疾患です。感染症にかかりやすくなる免疫不全・自分の細胞を攻撃する自己免疫疾患・アレルギー疾患などが該当します。
慢性リンパ性白血病で起きる免疫異常は免疫不全が多いのですが、まれに自己免疫性溶血性貧血など、重篤な疾患が合併するケースがあるのも事実です。
慢性リンパ性白血病の検査法について
慢性リンパ性白血病の診断には、血液検査・画像検査・骨髄検査が行われます。それぞれの内容を詳しく解説するので参考にしてください。
血液検査
慢性リンパ性白血病の診断で必ず行われるのは血液検査です。末梢血中のリンパ球が5000/μL以上になっていれば、慢性リンパ性白血病の疑いが濃厚と判断されます。
続いて、特殊な細胞検査装置「フローサイトメトリー」を使って増加したBリンパ球の表面を観察し、表面が特徴的な状態になっていればほぼ確定です。また、血液検査では慢性リンパ性白血病の進行度を把握するため、貧血や血小板減少の状態などもチェックします。
画像検査
慢性リンパ性白血病の検査では、CTなどによる画像検査が行われる場合もあります。画像検査は、脾臓や肝臓の腫れ具合をチェックして病気の進行度をはかるのが目的です。
CTで撮影すると患者さんの臓器が立体的に映るので、内臓の腫れ具合を正確に把握できます。
骨髄検査
慢性リンパ性白血病でも、骨髄中にある成熟リンパ球の増加具合や染色体異常を調べるために骨髄検査を行う場合があります。骨髄検査は患者さんの骨髄液を採取して顕微鏡で観察する検査です。
多くの血液疾患では一般的に行われていますが、慢性リンパ性白血病で行われるのは非常にまれです。
慢性リンパ性白血病の治療についてよくある質問
ここまで慢性リンパ性白血病の治療・症状・検査法などをご紹介しました。ここでは「慢性リンパ性白血病の治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
診療は自費診療になりますか?
中路 幸之助(医師)
慢性リンパ性白血病の診療は保険適用です。しかし、オファツムマブ・リツキシマブとフルダラビンやシクロホスファミドの併用療法など一部の薬剤は自己負担になります。薬価はオファツムマブの薬価は1,000mg50ml1瓶あたり267,502円(税込)です。リツキシマブとの併用用法は一緒に投与する薬剤によって金額が変わるので、主治医に尋ねてください。慢性リンパ性白血病の治療は外来で行うので、入院費用の心配はありません。また、慢性リンパ性白血病の治療費には高額療養費制度が適用されます。1ヶ月の間に医療機関や薬局に支払った医療費が一定額を超えると、超えた分のお金が返ってくる制度なので、積極的に利用してください。
慢性リンパ性白血病は発症するまでどのくらいかかりますか?
中路 幸之助(医師)
慢性リンパ性白血病は、発症してすぐ症状が出る病気ではありません。個人差がありますが、発症から10年経っても自覚症状がない患者さんもいます。しかし、自覚症状がない間でも病気は進行するので、慢性リンパ性白血病の診断を受けたら定期的に通院して経過観察をしてもらいましょう。
編集部まとめ
慢性リンパ性白血病は、定期的に通院して適切な治療を受ければ、快適な状態を保ちながら生活できる病気です。
進行がゆっくりで自覚症状が出るまで何年もかかるので、診断されたらすぐに通院して経過観察を始めましょう。通院をしていれば症状が出てもすぐ治療ができます。
慢性リンパ性白血病の発見や経過観察に役立つ血液検査は、他疾患の発見やご自身の健康状態のチェックにも有効です。
血液検査は体への負担も少ないので、職場の健康診断などの機会を利用して定期的に受けるようにしてください。
慢性リンパ性白血病と関連する病気
「慢性リンパ性白血病」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 呼吸器感染症
- ウイルス感染症
- 自己免疫性血球減少症
- 各種の悪性腫瘍(骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病・悪性リンパ腫など)
慢性リンパ性白血病に関連する呼吸器感染症は、何度も罹患するのが特徴です。また、高齢者の場合は、慢性リンパ性白血病から悪性リンパ腫に変化するケースもあります。
慢性リンパ性白血病と関連する症状
「慢性リンパ性白血病」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- リンパ節の腫れ
- 発熱
- 食欲不振
- 極端な体重減少
- 貧血
- 出血しやすくなる
- 全身の倦怠感
- 大量の寝汗
- 肝臓・脾臓の腫れによる腹部などの痛み
上に挙げた症状は、さまざまな疾患でみられます。原因はがん化したBリンパ球が異常に増殖して免疫がうまく働かなくなったり、赤血球や血小板などほかの血球が減ったりするためです。異常を感じたら放置せず、必ず医療機関を受診し、原因を特定してもらってください。