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「膀胱がんの検査方法」はご存知ですか?症状や原因についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/12/27
「膀胱がんの検査方法」はご存知ですか?症状や原因についても解説!【医師監修】

膀胱がんとは、膀胱にできる悪性腫瘍のことです。その発症には喫煙・アニリン系染料・ベンチジンなどの化学物質による長期的な曝露などの発がんの危険因子が関与しています。

この疾患の発生率は、男性が女性の3倍以上で、高齢者で多く見られ若い年齢層ではまれです。さらに、喫煙者は非喫煙者に比べて、発症リスクが4倍高いとされています。

この記事は、膀胱がんのリスクを減らすために役立つ検査や症状・治療方法について詳しく説明します。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

膀胱がんとは?

膀胱は下腹部の臍の下に位置し、腎臓で生成された尿を貯蔵する器官です。膀胱内部を覆う粘膜である尿路上皮から発生する悪性腫瘍を膀胱がんと呼びます。年間で人口10万人あたり約15人が診断され、主に50歳以上の男性が多く発症します。
初期段階では、他の症状がなく血尿だけが出るというのが特徴です。患者さんの中で痛みを伴わない血尿を経験した約20%が膀胱がんと診断されているのです。赤い尿が出た場合は早急に医療機関を受診することが重要です。
進行すると、頻尿や排尿時の痛みが現れ、細菌感染のリスクも高まるため注意が必要です。

膀胱がんを診断する検査

膀胱がんを診断する検査には次の7つがあります。

  • 尿検査
  • 超音波(エコー)検査
  • 膀胱鏡検査(内視鏡検査)
  • CT検査
  • MRI検査
  • 骨シンチグラフィ
  • TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

これらの検査について詳しく解説します。

尿検査

尿検査は血尿や感染症の有無を確認する検査です。尿細胞診は、顕微鏡を用いて尿中の細胞を調べ、尿中の「がん細胞」の有無を確認します。
尿細胞診によって、全ての膀胱がんの診断が確定されるわけではありませんが、悪性腫瘍の早期発見のためには有効な検査です。悪性腫瘍の陽性率は70%で、上皮内がんの場合は80%から90%です。
一方、悪性度の低いがんの場合は、陽性率が約20%となっています。尿細胞診が陽性であれば、膀胱を含む尿路のどこかにがんが存在する可能性が高いと考えられるのです。

超音波(エコー)検査

超音波検査は、膀胱内に突出する腫瘍を超音波を用いて探す検査です。健康診断や初期の外来診察で頻繁に実施され、痛みはなくその場で病変の確認ができます。しかし、膀胱内結石や血塊などとの区別が難しい場合があります。
また、膀胱の表面に広がる上皮内がんは、診断が困難なケースがあるでしょう。尿管に腫瘍が存在する場合、尿の通路が閉塞することにより腎臓が腫れる水腎症となる場合があります。超音波検査では水腎症の診断をすることも可能です。

膀胱鏡検査(内視鏡検査)

膀胱鏡検査は、内視鏡を用いる検査で膀胱がんの診断において重要な検査です。局所麻酔のゼリーを尿道に注入し、尿道から膀胱へ内視鏡(軟性鏡)を挿入する方法で実施します。苦痛が少なく受けることができますが、検査後に時折・血尿・排尿痛・発熱などの症状が出ることがあります。
痛みのない血尿を主訴で診察に来た患者さんに対して、受診日の当日に検査を行うこともあります。がんの場所や数・大きさ・形状などを指標に悪性度の確認が可能です。
当然のことながら、がんの外見だけから病変の深度や広がりの程度を正確に推測することはできません。しかし、その後どのような治療方針にするかを決める際に重要な情報となるため、大切な検査になります。

CT検査

CT検査では、水腎症の有無・腎盂・尿管腫瘍が併発していないか・リンパ節や他の臓器への転移の有無などについて検査します。がんが膀胱筋層へどのくらい到達しているかを調べることもできますが、深達度を診断する際にはMRIの方が適しています。
最近では、造影剤を使用したCT-Urography(シーティーウログラフィー)という3次元データの画像にできる検査が行われ、尿路の詳細な検査が可能になりました。膀胱の他に、上部尿路(腎盂・腎杯・尿管)にがんがあるかを調べるために役立ちます。

MRI検査

MRI検査は、膀胱がんの深達度(病巣の深さ)や広がり・他の臓器への転移があるかを検査するために実施され、現在では最も優れた検査法です。この検査はT2強調画像を用いて行われ、膀胱内の尿は白く膀胱の筋肉は黒く写し出されます。
体内に金属(例: ペースメーカー・脳のクリップ・整形外科手術後の人工物・入れ墨など)がある場合や、狭い場所が苦手な患者さん(閉所恐怖症の方)には実施できないことがあるため注意が必要です。

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィーでは、骨への転移の有無を検査します。骨は絶えず新しい骨組織に再生し、破壊と再生を繰り返していますが、骨に疾患などが現れるとこの破壊と再生のバランスが崩れることがあります。骨造成に異常が現れていないかを検査で見つけることで、転移の診断がつけられるのです。
検査は放射性物質を含んでいる骨シンチグラフィーの薬剤を静脈注射してから、全身に浸透するまで約3時間待ちます。その後、検査装置やベッドで約30分間の撮影が行われます。特別な前処置や食事制限は必要なく、水分制限も必要ありません。

TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

TURBTは、下半身麻酔または全身麻酔を用いて行われ、手術用の内視鏡を膀胱内に挿入し高周波電流によりがん組織を周囲の組織と共に切り取る方法です。TURBTにより表在性のがんの場合は完治できる可能性が高いですが、筋肉まで侵襲している浸潤性のがんの場合には、完全に切除することが難しいのです。
TURBTは通常、診断と治療の目的でほぼ全ての症例で実施されます。一般的には約1週間の入院で検査が行われます。

膀胱癌の種類と症状

膀胱がんの種類は、表在性膀胱がん・浸潤性膀胱がん・上皮内がんがあります。それぞれの種類の症状について解説します。

表在性膀胱がん

表面性膀胱がんは、膀胱の内側の粘膜に限定され、膀胱の筋肉層には広がらない浅いがんのことです。
イソギンチャクのような形状をしており、膀胱内の空洞に向かって突出しているのが特徴です。転移するのはめずらしく、膀胱がんの大多数がこのタイプに該当します。

浸潤性膀胱がん

浸潤性膀胱がんは、膀胱の筋肉層まで広がる膀胱がんです。一般的にはがん組織が深く侵入しており、膀胱内にとどまらず膀胱壁の外側に広がったり他の部位へ転移したりする可能性があります。

上皮内がん

上皮内がんは、通常粘膜の下に悪性度の高いがん細胞が広がるという特徴があります。他の臓器で発生する上皮内がんは、通常早期のがんに分類されます。しかし、膀胱の場合はその悪性度が高くいため、しっかりと治療する必要があるがんになります。
膀胱がんの一般的な初期症状の一つは、肉眼的に見てわかるほどの血尿です。この血尿は出たり止まったりします。上皮内がんの場合には、排尿時に痛みを感じたり、下腹部に痛みを感じたりすることもあるでしょう。これらの症状は膀胱炎と似ていることがありますが、膀胱がんの場合、抗生物質を服用しても改善しません。
がんが進行して尿の通路を閉塞すると、尿の流れが滞り、結果として腎臓が腫れて腰の周りに鈍い痛みが生じることがあります。

膀胱がんの原因

膀胱がんの主な原因は完全に解明されていません。以下の要因が関与している可能性が考えられています。

  • 喫煙
  • 化学物質への暴露
  • 慢性的な膀胱炎

喫煙は、膀胱がんの発生を増やす原因とされます。また、特定の化学物質に長期間にわたってさらされると、発生リスクを高める可能性があります。
例えば、染料・ゴム・革・石炭などの産業労働者はリスクが高まるのです。さらに、長期間にわたる慢性的な膀胱炎は、発症リスクを増加させる原因になります。

膀胱がんの治療方法

治療はがんの種類や進行具合により異なります。主な治療方法について下記のがんの種類に合わせて説明します。

  • 表在性膀胱がん
  • 浸潤性膀胱がん
  • 転移性や進行性の膀胱がん

一つ目の表在性膀胱がんの場合、TUR-BTによる腫瘍の完全切除によって治療が行われます。この手術は通常入院が短期間で、痛みも軽減できるのが特徴です。膀胱がんは再発する可能性が高いため、TURBTの直後には抗がん剤を膀胱内に注入する方法や、検査結果の確認後に抗がん剤やBCGを膀胱内に注入する治療が行われることがあります。
さらに、再発を早期発見するために、手術後には3ヶ月ごとに膀胱鏡検査が必要です。再発が繰り返される場合、浸潤性膀胱癌に進行したり、転移を引き起こすことがまれにあります。しかし、一般的には表在性膀胱癌が生命に重大な影響を及ぼすことは少ないとされています。
二つ目の浸潤性膀胱がんの場合、通常行われる治療は膀胱全摘除術と骨盤内のリンパ節を清除する手術です。男性の場合、前立腺・精嚢・尿道(一部は保存されることもあります)を、女性の場合・子宮(卵巣も含む)・膣の一部が摘出されることが一般的です。
ただし、がんの部位や広がりに応じて、子宮や卵巣を温存できる場合もあります。また、手術前にはCTスキャンや骨シンチグラフィーなどによって転移が検出されず、手術後に転移が現れることもあるのです。
そのため、転移が存在する場合には、M-VAC療法やGC療法などの化学療法を行います。3~4種類の抗がん剤を組み合わせた多剤併用化学療法が一般的です。病態に応じて、膀胱全摘手術・化学療法・放射線療法などを組み合わせて行うことがあります。
三つ目の転移性や進行性の膀胱がんの場合に行われる治療法は、多剤化学療法です。がんが転移している場合は、完治させることが難しいため、多剤化学療法が一般的に行われます。
しかし、抗がん剤が効かない場合もあります。そのような場合、次に選択されるのが免疫療法になります。免疫療法とは免疫がもつ力を利用してがんを攻撃する治療法で、膀胱がんに対する免疫ポイント阻害薬を使用する方法です。抗がん剤よりは副作用が軽いとされていますが、免疫に関する副作用がみられる場合があります。

膀胱がんについてよくある質問

ここまで膀胱がんの診断する検査・種類と症状・治療方法などを紹介しました。ここでは「膀胱がんの検査方法」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

膀胱がんの診断方法は?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

膀胱がんの診断方法として、膀胱の内側の粘膜を切除し顕微鏡で調べるTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行います。確定診断を行う方法であるため、ほぼすべての膀胱がんで行われます。

膀胱がん検査に入院は必要?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

膀胱がん検査の段階では入院は必要ありません。検査の結果、膀胱内に腫瘍があると確認が取れたら確定診断となるTURBTを行う際は、手術となるため入院が必要になります。

編集部まとめ

膀胱がんのリスクを減らすために役立つ検査や症状・治療方法について詳しく説明しました。

膀胱がんは、膀胱内の上皮から生じる悪性腫瘍で、喫煙や化学物質の長期的な暴露が発症の原因とされています。

診断には尿検査・超音波・膀胱鏡検査・CT検査・MRI検査・骨シンチグラフィ・TURBTが用いられます。

胱がんは血尿をきっかけにして発見されることが多いので、症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。

膀胱がんと関連する病気

「膀胱がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

膀胱がんは血尿で見つかったり、陰部のかゆみなどの症状から判明することもありますが、実際に膀胱視鏡検査を行うまでは他の病気と見分けがつきません。しかし、血尿などが見られた時には何かしらの病気が隠れている可能性が高いため、まずは泌尿器科を受診しましょう。

膀胱がんの症状と関連する症状

「膀胱がん」と関連している、似ている症状は12個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 頻尿・多尿・尿意切迫
  • 夜間尿失禁(夜間頻繁な排尿)
  • 尿失禁(尿漏れ)
  • 尿閉・無尿・尿勢の低下
  • 完全な尿閉
  • 残尿感
  • 夜尿症(おねしょ)
  • 排尿時の痛み
  • 勃起障害
  • 尿道からの膿の排出
  • 血尿が尿中に混じる

膀胱がんは血尿をきっかけに発見されます。上記のような症状が少しでも気になれば、早めに病院へ行き相談しましょう。膀胱がんは早期に発見し、治療することが非常に大切です。

この記事の監修医師