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「甲状腺がんの手術内容」はご存知ですか?合併症についても解説!【医師監修】

 公開日:2023/11/19
「甲状腺がんの手術内容」はご存知ですか?合併症についても解説!【医師監修】

甲状腺がんは甲状腺にできたがんですが、がんの種類や進行の度合いに応じて手術により治療を行うケースが多いです。本記事では、甲状腺がんの手術はどのように行われるかを紹介します。

また、その他の治療方法や先進医療についても解説します。甲状腺がんの手術について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

甲状腺がんの手術とは?

甲状腺がんの手術は、甲状腺がんに対して行われる治療法の1つです。がんの種類には次のようなものがあります。

  • 甲状腺分化がん
  • 髄様(ずいよう)がん
  • 未分化がん
  • 悪性リンパ腫

上記のうち、甲状腺分化がんは、さらに次の3種類に分けられます。

  • 乳頭がん
  • 濾胞(ろほう)がん
  • 低分化がん

悪性度が高い未分化がん以外は、手術が基本的な治療法になるでしょう。ただし、腫瘍の大きさが小さいため転移しやすいようなリスク因子がない場合は、経過観察になる場合もあります。

甲状腺がんの手術について

手術は診断・検査に基づいてがんの種類や進行状態に合わせて行います。麻酔は全身麻酔で行いますが、術式は腫瘍の状況により異なるでしょう。
後遺症は少ないですが、甲状腺の機能低下などが考えられます。手術について詳しく解説します。

診断・検査

がんの疑いがある場合、がんの種類に応じて次のような検査が行われるでしょう。

  • 視診・触診
  • 超音波検査
  • CT・MRI検査
  • シンチグラフィー検査
  • 病理検査
  • 血液検査

検査結果に基づいて診断を行います。がんの進行の程度は病期(ステージ)で分類されますが、甲状腺がんの場合は、がんの種類と年齢が取り入れられていることが特徴です。

麻酔方法

麻酔方法は全身麻酔が用いられます。全身麻酔では全身管理が重要になりますが、とくに気道トラブルが起きると窒息につながりかねません。
手術を行うのは気管の前の場所のため、手術中は気道管理に注意しながら行われます。

術式

術式は、甲状腺がんのある場所・大きさ・転移の有無により異なります。具体的には次のような術式が挙げられるでしょう。

  • 全摘出
  • 亜全摘出
  • 葉切除術

全摘出は、甲状腺全体を切除する手術です。そして、亜全摘出は甲状腺の約2/3を切除する手術になります。
また、葉切除術は片側の甲状腺を切除する手術です。葉切除術の場合、必要に応じて峡部(きょうぶ)も一緒に切除するケースがあります。

後遺症

甲状腺がんの手術の後遺症としては、首のツッパリ感・違和感・圧迫感・肩こりなどの症状が挙げられます。時間の経過とともに気にならなくなる場合が多いですが、長期にわたり続く場合もあるでしょう。
首のストレッチ体操のようなリハビリにより軽減されます。

手術後の合併症

手術が終わった後には、合併症が起きる場合があります。具体的には次のような症状が現れる可能性があるでしょう。

  • 甲状腺機能低下
  • 反回神経麻痺

それぞれの合併症について解説します。

甲状腺機能低下

1つ目の合併症は、甲状腺機能低下です。摘出により甲状腺の組織が減るため、機能が低下し、ホルモンが作られなくなることが原因です。
結果として、新陳代謝が悪化し、だるさ・疲労感・食欲不振などの症状が現れる場合があるでしょう。甲状腺が半分以上残っている場合、通常治療は行いませんが、全摘出や亜全摘出の場合はホルモン薬を飲むことになります。

反回神経麻痺

ほかの合併症としては、反回神経麻痺と呼ばれるものもあります。反回神経とは気管の上にあり、甲状腺の裏を通って声帯につながっている神経です。
手術により反回神経が傷付くと麻痺が生じ、声がかすれるといった症状が現れる場合があります。また、物を飲み込むときにむせるようになります。
通常は6か月以内に症状が回復するため心配する必要はないでしょう。

その他の治療方法について

その他の治療方法としては次のようなものがあります。

  • 放射線治療
  • 化学療法
  • 内分泌療法

それぞれの治療方法について解説します。

放射線治療

放射線治療は、X線やその他の放射線を使ってがん細胞が増殖するのを抑えたり、がんを小さくしたりする治療です。放射線を体の外から照射する外照射と、体の中から照射する内照射の2種類があります。
外照射は、主に未分化がんや悪性リンパ腫の治療で用いられるほか、手術で取りきれなかった乳頭がんや濾胞(ろほう)がんに対しても用いられる場合があります。
内照射は、甲状腺分化がんで甲状腺全摘出後に用いられる、放射性ヨード内用療法と呼ばれる治療法です。

化学療法

化学療法は、悪性リンパ腫や、他の治療では治療が難しい未分化がんの場合に用いられる治療法です。複数の細胞障害性抗がん剤を組み合わせながら治療を行います。
乳頭がんや濾胞がんではほとんど行われない治療ですが、放射性ヨード内用療法で効果がない場合に検討されるケースがあります。

内分泌療法

内分泌療法は、ホルモン補充療法、またはTSH抑制療法とも呼ばれる治療法です。がんの一部を手術で切除すると、体は甲状腺ホルモンの不足を補おうとして、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が多く分泌されます。
このホルモンは甲状腺のがん細胞にも影響を与えることがあるため、分泌を抑える甲状腺ホルモン薬を飲む場合があります。これが内分泌療法と呼ばれる治療方法です。

先進医療で治す甲状腺がんについて

医療の進歩とともに、手術は体への負担を軽減する方向に向かっています。具体的には出血をできるだけ抑えたり、傷口を小さくしたりする方法が開発されてきました。
甲状腺がんの治療についても例外ではありません。ここでは、先進医療で治す甲状腺がんについて詳しく解説します。

傷口が目立たない先端技術とは

これまでの甲状腺がんの手術では、首の前部を5~10cmほど切開し、さらに甲状腺を露出させるために皮下を大きく剥がす必要がありました。しかしながら、この方法は手術を受ける方の体に負担となるばかりか、女性の場合は首筋に傷口が残るという美容上の問題もあります。
現在は、内視鏡を使った手術が、さまざまながん治療で行われている時代です。甲状腺がんの手術でも鎖骨の下を3~5cm切開して手術器具を入れるほか、別の場所に5mmほどの小さな穴を開け、甲状腺の様子を見るカメラを入れる方法もあります。
ただし、甲状腺の場合、手術領域が狭いという問題がありました。それを解決するのが、次にご紹介するロボット甲状腺手術です。

新しいロボット甲状腺手術とは

ロボット甲状腺手術とは、手術支援ロボットを使った内視鏡下手術です。手術を受ける方の脇の下を数か所切開し、ロボット鉗子を挿入して手術を行います。
医師は手術台から少し離れた遠隔操作台に座り、コントローラーでロボットのアームを操作します。設定によりコントローラーを大きく動かしてもアームは少ししか動かないようにできるため、細かな作業を行いやすいことがメリットです。
また、体の負担・術中の出血・術後の痛み・美容上の問題などが少ないなど、メリットが多い方法です。
ただし、ロボット甲状腺がんの手術が行えるのは日本ではごく限られた施設のみとなっています。

編集部まとめ

甲状腺がんの手術では、がんの種類や進行度に応じて、全摘出や部分摘出などの方法が取られます。

通常は前頚部を切開して手術を行いますが、近年の医療技術の進歩により、負担が少ないロボット甲状腺手術も開発されています。

現在のところ、限られた医療施設でしか受けられませんが、今後はさらにこうした手術を行える施設が増えるでしょう。

甲状腺がんと関連する病気

「甲状腺がんの症状」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

甲状腺の病気

  • 慢性甲状腺炎(橋本病)
  • 無痛性甲状腺炎
  • 亜急性甲状腺炎

甲状腺ホルモンが過剰に産生される疾患がバセドウ病です。ホルモンが過剰になると、汗をかきやすい・動悸がする・眼球が飛び出すといった症状があります。反対に徐々にホルモンが減少する疾患もあり、代表例が慢性甲状腺炎(橋本病)です。

甲状腺がんの症状と関連する症状

「甲状腺がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • しこり
  • 嗄声(声のかすれ)
  • のみ込みにくさ
  • 誤嚥(ごえん)
  • 圧迫感
  • 血痰

甲状腺がんは自覚症状に乏しい病気です。上記のような症状が少しでも気になれば、早めに耳鼻咽喉科や内分泌外科へ行き相談しましょう。多くの場合は悪性度が低いがんのため、根治が期待できます。ただし、一部は悪性化する可能性もあるでしょう。

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