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「前頭側頭型認知症の初期症状」はご存知ですか?性格が変わる原因も医師が解説!

 公開日:2024/10/29
「前頭側頭型認知症の初期症状」はご存知ですか?性格が変わる原因も医師が解説!

前頭側頭型認知症の前兆となる初期症状とは?Medical DOC監修医が前頭側頭型認知症の初期症状・原因・治療法や家族のケア方法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

上田 雅道

監修医師
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)

プロフィールをもっと見る
愛知県立一宮高等学校卒業
福島県立医科大学医学部卒業
名古屋掖済会病院 脳神経内科 医員
豊橋市民病院 脳神経内科 医員
名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学
中部ろうさい病院 神経内科 医長

「前頭側頭型認知症」とは?

前頭側頭型認知症は、主に脳の一部である前頭葉と側頭葉にある神経細胞に異常が生じて発症する認知症です。人格変化、行動障害、言語障害などが進行していきます。
前頭側頭型認知症は、記憶の低下よりも行動や性格の変化、言語機能の低下が目立つことが特徴です。感情の制御や社会的な行動ができなくなり、社会生活や人間関係に問題が生じやすくなります。主に40代から60代に発症することが多く、比較的若い年齢でも発症します。
前頭側頭型認知症が進行するにつれて、パーキンソン症状や運動神経疾患といった運動障害がみられるようになることもあります。

前頭側頭型認知症の前兆となる初期症状

前頭側頭型認知症の初期症状は、記憶力の低下ではなく、人格や行動の障害、言語の障害から始まることが多いです。以下に主な初期症状を挙げます。

抑制が効かない

他人への共感や社会的なルールを守る意識が薄くなり、不適切な発言や行動が増え、礼儀やマナーを守ることができなくなります。周囲の目を気にしない言動がみられるようになります。暴力的な言動、スーパーで商品を盗んでしまうといったような行為がみられることがあります。

共感できない、気力や意欲がなくなる

家族や友人に対する感情的なつながりが弱くなり、他人に共感することがむずかしくなります。相手の感情を考えない言動をしてしまうことがあります。
以前は関心があったことや活動への興味を失い、意欲の低下がみられます。

同じ行動を繰り返す(常同行動)

同じ行動を繰り返したり、ルーチンに固執することがあります。いつも同じコースを散歩する、同じ食べものを食べ続ける、同じ時間に同じ行動を取るといったことがみられるようになります。

言語能力の低下

日常会話で使う言葉の数が減り、簡単な言葉しか出てこなくなります。複雑な文を理解することがむずかしくなります。相手に言われたことをオウム返しする、同じ言葉を繰り返し言うといったことがみられます。

食事、嗜好の変化

甘いものや特定の食品を過剰に摂取するなど、食の好みに極端な変化が見られることがあります。アイスクリームを何個も食べる、コーヒーに砂糖を何杯も入れる、ご飯に塩やしょうゆをかけるなどの変化がみられることがあります。

前頭側頭型認知症の進行速度

前頭側頭型認知症の進行速度は、一般的には6〜9年程度で進行します。初期の段階では、人格や行動の変化、言語の障害が徐々にあらわれ始め、病気が進行するにつれて、症状がより顕著になり、日常生活への影響も大きくなります。記憶力の低下は初期段階では目立ちませんが、進行すると認知機能全体が低下し、介護が必要になることが多いです。

前頭側頭型認知症の末期症状

前頭側頭型認知症の末期になると、次のような症状がみられます。ほとんどの患者さんが食事や排泄、入浴など、日常生活のあらゆる面で介護が必要になります。

身体機能の低下

飲み込みの力が低下し、食事や水分をとるときにむせやすくなります。これにより、肺炎などの合併症を引き起こすリスクが高まります。
パーキンソン症状や運動神経疾患のような運動障害により、移動や入浴などの日常動作が困難になることがあります。歩行ができなくなり、寝たきりになることがあります。

精神症状の悪化

感情がにぶくなり、他人に共感することができず、衝動的な行動やその場にそぐわない不適切な言動が増えトラブルになります。また無気力となり日常生活への関心がうすれてしまいます。

言語能力の低下

言語機能が低下し、話すことができなくなったり、意味のない言葉を繰り返すことがあります。他の人が話している内容を理解することも困難になります。

前頭側頭型認知症の主な原因

前頭側頭型認知症の原因は、完全には明らかになっていません。
脳の神経細胞が異常なタンパク質によって傷害を受け、特に前頭葉と側頭葉の機能が失われます。異常タンパク質としては、タウやTDP-43と呼ばれるものが知られていますが、根本的な原因についてはまだ完全には解明されていません。

前頭側頭型認知症の治療法

現時点では、前頭側頭型認知症を根本的に治療する方法は確立されていません。ただし、症状を緩和するための治療やケアは行われています。

薬物治療

前頭側頭型認知症では、行動障害に対して抗うつ薬の一部が有効である場合があります。しかし副作用に注意が必要であり、通常の保険診療では認められていないため(保険適応外)、薬剤については主治医とよく相談することが必要です。

認知行動療法

患者さんの行動変化に対処するため、認知行動療法が一部で有効とされています。患者さんに保たれている機能、能力を活かすことで行動異常を軽減したり、家族などの介護者の負担を減らすことができます。この方法では、患者さんの行動パターンを理解し、行動の修正や環境の整備を図ることが重要です。

言語療法

言語機能が低下している場合には、言語聴覚士によるリハビリテーションが効果を上げることがあります。日常的な会話の練習や、コミュニケーション手段を補うことが目標です。

家族が前頭側頭型認知症になったらどのようにケアすればいい?

前頭側頭型認知症の患者さんを持つ家族にとって、前頭側頭型認知症の症状を理解することは必要です。前頭側頭型認知症は行動や性格の変化が大きいため、家族や介護者にとっても大きな負担となります。適切な接し方を心がけることで、患者さんとの関係を維持し、ストレスを軽減することができます。

人格や行動の変化への理解

患者さんが以前とは異なる行動や感情をあらわす場合でも、それが病気の症状であることを理解し、感情的にならないよう心がけることが重要です。患者さんが共感を示さなくなったり、非社会的な言動がみられたとしても、それは病気の影響であり、故意ではないことを理解しましょう。

日常生活のサポートと社会福祉サービスの利用

患者さんが日常生活をスムーズに送れるよう、食事や入浴、薬の管理など、基本的な生活動作においても、サポートが必要になる場合が多いです。
家族や介護者も、長期にわたるケアによるストレスを感じやすいです。適切なサポートを受けるために、地域の介護サービスや支援グループを活用することが重要です。

コミュニケーションの工夫

言語機能が低下している患者さんには、コミュニケーションを取ることがむつかしい場合があります。簡単な言葉やジェスチャーを使ってコミュニケーションを取ることが効果的です。

「前頭側頭型認知症の初期症状」についてよくある質問

ここまで前頭側頭型認知症の初期症状などを紹介しました。ここでは「前頭側頭型認知症の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

前頭側頭型認知症を発症すると性格が変わってしまう原因について教えてください。

上田 雅道上田 雅道 医師

前頭側頭型認知症で性格が変わってしまう主な原因は、前頭葉と側頭葉の神経細胞が障害を起こすことにあります。これらの脳の部位は、主に以下の機能を担っています。
前頭葉は、感情の制御や社会的な行動を管理する役割を持っています。前頭葉の機能が低下することで、感情のコントロールができなくなる、衝動的な行動をとってしまう、無気力になってしまうといった症状が出てきます。
側頭葉は言語機能や記憶、感情の処理を行っています。側頭葉の機能が低下すると、言葉をうまく使えなくなるとともに、他人の言っていることを理解する力も失われていきます。また、感情がにぶくなり、家族や友人との関係が希薄になることが多いです。

編集部まとめ

前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉における神経細胞の障害が原因で、行動や性格の変化、言語能力の低下が初期からあらわれます。徐々に症状は進行し、末期には介護依存状態になってしまいます。
前頭側頭型認知症は、脳の重要な機能が失われることで、患者さんの性格や行動が大きく変化し、家族や介護者にとっても精神的・身体的な負担が大きい病気です。
本人、家族や介護者だけでは解決できない問題が多いため、病院でできるだけ早く診察を受け、適切に社会福祉サービスを利用していくことが必要です。

「前頭側頭型認知症」と関連する病気

「前頭側頭型認知症」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

〇〇科の病気

上記は認知症の中でも多く見られる疾患ですが、それらと比べて、前頭側頭型認知症は主に40代から60代に発症することが多く若い年齢でも発症することが特徴の一つです。

「前頭側頭型認知症」と関連する症状

「前頭側頭型認知症」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 性格、行動パターンの変化
  • 食事の好みの変化
  • 言語機能の低下

認知機能だけではなく、人格の変化、行動や言語の問題が生じ、家族や介護者にとって精神的・身体的な負担が大きな病気です。疑わしい症状がある場合には早めに医療機関で相談するようにしてください。

参考文献

  • 認知症疾患診療ガイドライン2017(日本神経学会)

この記事の監修医師