「血小板の基準値」とは?異常値が出た場合の対処法と発見できる病気も医師が解説!

血小板の基準値はどれくらい?Medical DOC監修医が血液検査のPLTの年齢別正常値や数値が低い・高いと発症しやすい病気等を解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
血液中の血小板とは?
血小板は血液中の成分の一種で、出血を止める働きを担っています。血小板の基準値は15~45万/μLです。血小板が少なくなると出血しやすくなり、全身にあざができやすくなります。一方、血小板が多くなることで血栓が起こりやすくなりますが、血小板が多くなりすぎることで、出血が起きやすくなることもあります。
血液中の血小板の役割・働き
血小板は、骨髄で産生され、血液の中に入り全身を回り、脾臓で壊されます。体内での寿命は10日間程度です。血小板は出血を止める、一時止血が主な働きです。血管が傷つき、出血すると、フォンヴィレブランド因子を介して血管内皮組織のコラーゲンに粘着、活性化されると血小板は球状に形を変えて偽足を出します。そして、フィブリノゲンと結合し血小板同士が集まって血管を塞ぎます。この後にフィブリノゲンがフィブリンに変化し、しっかりとした血栓ができることで二次止血が完了です。
血小板と白血球の違いとは?
血小板は、直径約2~4μmの円盤型をした細胞です。血液1mm3中に約20~40万個程度存在します。血小板の役割は、止血作用です。一方、白血球は、血液1mm3中に平均約7500個存在し、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)と単球、リンパ球からなっています。白血球の主な役割は、ウイルス等の外的を食べて殺す(貪食作用)と免疫作用の二つです。血小板と白血球は血液を構成する成分ですが、このようにそれぞれ役割が異なります。
血小板と血漿の違いとは?
血小板と血漿(けっしょう)は読み方は似ていますが、全く異なるものです。血液から赤血球、白血球、血小板の血球成分を取り除いたものが血漿です。血漿の91%は水分で、残りの9%はアルブミン、免疫グロブリン、血液凝固因子等のタンパク質となります。血漿は体内に酸素や栄養を運び、炭酸ガスなどの老廃物を肺や腎臓に運ぶ働きをしています。
血液凝固因子は血小板による一次止血に続いて、しっかりとした血栓を作る二次止血のための蛋白質です。また、不要となった血栓を溶かす線溶作用もあり、正常な状態では凝固、抗凝固、線溶がバランスよく働いています。
血液検査の血小板の基準値(血小板数・PLT)
血小板の基準値は以下の様になっています。少なすぎると血が止まりづらくなり、多すぎても血が固まりやすくなったり、血が止まらなくなる様になります。
男女別・血液検査の血小板の基準値
- 男性:157~346×103/μL
- 女性:160~353×103/μL
男女での差はほとんどありません。
年齢別・血液検査の血小板の基準値
血小板数は男女別、年齢別での変化はほとんどありません。
| 性別 | 年齢 | 39歳以下 | 40~44歳 | 45~49歳 | 50~54歳 | 55~59歳 | 60~64歳 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75歳以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 男性 | 平均値±標準偏差 | 25.7±5.3 | 25.6±5.3 | 26.1±6.3 | 25.3±5.5 | 24.6±5.9 | 23.4±5.3 | 22.7±5.4 | 21.9±6.2 | 20.5±5.2 |
| 女性 | 平均値±標準偏差 | 26.8±5.9 | 27.8±6.9 | 27.5±7.1 | 26.3±6.3 | 25.3±5.7 | 24.6±5.5 | 23.7±5.4 | 23.1±5.5 | 22.2±10.1 |
12~16歳の小児期での血小板数の平均値は 30.0±7.5×104/μLと、若い年代の方が血小板数が比較的多い傾向があります。その後の各年代ごとの平均値は上記に示したようになっています。年齢が上昇し、高齢者では血小板数は低い傾向です。しかし、大きな変動はなく、おおむね血小板数は年齢が高くなっても一定と言えます。
血小板の数値が異常値だ 高いとどんな病気を考えるべき? 発症しやすい?
ここでは、血小板の数が増加した場合、低下した場合にみられやすい病気について解説いたします。
本態性血小板血症
骨髄中の造血幹細胞が腫瘍化し、血小板が異常に増殖する病気です。無症状であり、健康診断などで偶然発見されることが多いです。血小板数が45万/μLより高い場合、本態性血小板血症が疑われ、さらに詳しく骨髄などの検査を行います。著しく血小板の数が増加すると、あざができやすくなる、鼻出血や歯肉からの出血がみられる、頭痛しびれやめまいなどの症状がみられることがあります。本態性血小板血症は直ちに命にかかわる病気ではありませんが、血栓症や出血の合併症を予防することが治療の目的となります。健康診断などで、血小板の増加がみられた場合、内科もしくは血液内科で相談をしましょう。
骨髄線維症
骨髄繊維症は、血小板や白血球の増殖が盛んになり、その結果骨髄の繊維化が進んだ状態です。繊維化する原因により、原発性と二次性に分かれます。原発性は造血幹細胞そのものに異常が起こることで発症します。二次性は真性多血症や骨髄異形成症候群などの別の病気が原因となっています。いずれの病態でも骨髄内が繊維で埋め尽くされてしまい、白血球、赤血球、血小板の3種類の血球が上手く産生されなくなります。ほとんどの場合、貧血で気が付くことが多いです。さらに繊維化が進行すると、白血球や血小板も少なくなり、免疫不全状態となったり、出血しやすくなります。また、経過中に白血病を発症することもあり、注意が必要です。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫の異常により関節に炎症が起こり、関節の痛みや腫れが起こる病気です。進行すると、関節の変形が起こり、関節の動きが悪くなります。原因ははっきりとわかっていません。女性の方が多く、40~60歳代での発症が多いです。症状としては、手足の指、手首を中心とした関節の痛み、腫れ、朝のこわばりなどです。また、血液検査でリウマトイド因子や抗CPP抗体の陽性、CRPや血沈などの炎症反応が上昇したり、炎症により血小板が反応性に上昇したり、X線検査で関節の変形がみられます。治療は薬物療法が中心です。整形外科や膠原病内科で治療されることが多いです。朝のこわばりや手足の関節の腫れなど関節リウマチが疑われたら、相談をしましょう。
炎症性腸疾患・潰瘍性大腸炎
炎症性腸疾患(IBD)とは、原因不明の腸疾患で主に潰瘍性大腸炎やクローン病を指します。患者数は年々増加傾向です。
潰瘍性大腸炎とは、大腸にびまん性に炎症が起こる病気です。直腸から連続的に広がり、最大で大腸全体にまで及ぶことがあり、大腸の粘膜が侵される病気です。症状として、下血、下痢、腹痛などみられ、重症となると発熱、体重減少、貧血などの症状もみられます。我が国では、人口10万人あたり100人程度です。炎症に伴い、白血球や血小板の増加がみられます。血性の下痢がみられる場合、潰瘍性大腸炎が疑われます。早めに消化器内科を受診しましょう。
慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病は著明な白血球増加や血小板増加を特徴とする腫瘍性疾患です。初期は自覚症状はほとんどないため、健康診断などで偶然発見されることが多いです。発症後症状は慢性期といい、ゆっくりと進行しますが、未治療のままでは急に訪れる急性転化期に感染症や出血が起こり治療が困難となって致死的となります。中年以降の男性にやや多い病気です。放射線被ばくなどが原因となることもありますが、多くは原因がはっきりしません。
白血球や血小板の増加がみられた場合、骨髄液を採取し検査を行います。慢性骨髄性白血病では骨髄の細胞が増加しています。また、染色体検査で9番染色体の一部と22番染色体の一部が結合したフィラデルフィア染色体という染色体異常を検出することで確定診断されます。慢性骨髄性白血病と診断され、慢性期であれば薬物治療を行います。専門的な治療をなるため、血液内科の受診が必要となります。
血小板の数値の高い人が生活習慣で注意するべきこと
血小板数が45万/μL以上である場合、この血小板の増加が反応性のものか、本態性のものか、また一時的なものなのかを含め内科で再検査をしましょう。採血をしたときに、感染症にかかっていた場合には、反応性に血小板が増加していた可能性があります。また、関節リウマチや潰瘍性大腸炎、鉄欠乏性貧血など多くの病気で炎症などに伴い血小板が増加することがあります。反応性であれば、まず原疾患の治療が優先されます。また、本態性であれば、血栓症が起こる危険性を防ぐ治療を行います。
いずれにしても、健康診断などで血小板数が多いと指摘された場合は、再検査のために内科を受診することが大切です。
「血小板の基準値」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血小板の基準値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
血液検査の血小板の基準値はどれくらいが正常ですか?
伊藤 陽子(医師)
血小板の基準値は約15万~35万/μLです。45万/μL以上の場合、血小板の増加する病気を疑い、反対に血小板が10万/μL以下の場合には血小板減少症を疑い精密検査を行います。
血小板が基準値より少ないと血小板減少症の可能性がありますか?
伊藤 陽子(医師)
血小板が10万/μL以下の場合、血小板減少症の可能性を考えます。再検査を行った上で、持続している場合血液内科を紹介受診する必要があります。
まとめ 血小板が45万/μLを超えたら内科で再検査を!
血小板数は15万~35万/μLが基準値ですが、45万/μLを超えるときに血小板増加症を疑います。血小板は、感染症や炎症性疾患でも上昇するため、採血をしたときの体の状態により変化することもあります。このような反応性の血小板増加がみられる場合には、まず原因となる疾患の治療が必要です。反応性ではなく、本態性血小板増加症の場合には、症状がないことが多いですが、血栓症を防ぐために定期的に経過を見てもらい、必要であれば薬物治療を行うこともあります。このため、症状がなくとも必ず受診して原因を調べ必要であれば治療することが大切です。
また、血小板数が10万/μL以下では血小板減少症が疑われます。採血手技の問題により起こることもありますが、体にあざができやすいなど症状を伴う場合には早急に病院を受診しましょう。
「血小板」の異常で考えられる病気
「血小板」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液系の病気
- 本態性血小板血症
- 骨髄繊維症
- 慢性骨髄性白血病
- 特発性血小板減少性紫斑病
- 血栓性血小板減少性紫斑病
- 鉄欠乏性貧血
膠原病系の病気
- 関節リウマチなどの自己免疫疾患
消化器系の病気
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)




