「胃カメラの鎮静剤」はどんな効果があるかご存知ですか?服用するデメリットも解説!
胃カメラの鎮静剤の効果は?Medical DOC監修医が胃カメラの鎮静剤がどのくらい効くか、効かない理由など徹底解説します。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
胃カメラの鎮静剤とは?
消化器がんは40歳を過ぎると増えてくると言われており、40歳以降の特定健診や人間ドッグでは胃カメラ検査を受けることが勧められています。口から胃にものを入れるところを想像して、不安を感じ躊躇される方もいらっしゃるかもしれません。胃カメラの鎮静剤はそのような患者さんの不安を和らげ、快適に検査を受けていただくのに有効な薬です。本記事では胃カメラの鎮静剤について詳しく解説していきます。
胃カメラの鎮静剤にはどんな効果が?
鎮静剤は検査中の不快感を軽減し、患者さんがリラックスして検査を受ける補助をしてくれます。鎮静剤にはミダゾラムなどの投与後に眠くなる(寝る)薬が使われます。どのくらい寝るかは薬の量とその人の体調によって異なりますが、検査中の5〜10分は途中で起きることがないように薬を調整します。検査は寝ている間に終わってしまうため、痛みを感じないだけでなく、目が覚めた時にはすでに検査が終わっており、検査をしたこと自体覚えていないことも多いです。これは正常な薬の効果なので心配ありません。
胃カメラは鎮静剤を使わずに受けられる?
鎮静剤を使わずに胃カメラ検査を受けることは可能です。鎮静剤を使用しない場合、検査後は眠気がないため、すぐに帰宅できます。ただし、検査中に胃の中でものが動いている感じに敏感な方や嘔吐反射で「オエッ」となりやすい方は鎮静剤なしでは辛く感じるかもしれません。
胃カメラの鎮静剤を使った場合の費用は?
胃カメラ検査そのものの診療報酬が1,140点で、1点10円なので胃カメラ検査の金額は11,400円です。しかし、保険適用の時の費用は自己負担割合に応じて1割負担なら1,140円、3割負担なら3,420円となります。
注射の鎮静剤を使用した場合は薬の種類によって診療報酬の点数が異なりますが、おおよそ6点〜54点となっており、1点10円計算で60円~540円かかります。こちらも保険適用であれば、3割負担の場合は20~160円かかることになります。
胃カメラ前日や当日の注意点
胃カメラ検査を控えた前日は、消化の良い食事を心がけ、特に夜は軽めの食事とし21時以降の食事は控えましょう。飲酒やカフェインを含む飲み物の摂取は避けてください。また、早めに寝るようにして睡眠不足を避けましょう。睡眠不足の状態で鎮静剤を使用すると、適切な量にも関わらず鎮静剤が効きすぎてしまい、副作用が出る可能性があります。
検査当日は食事を摂らないようにして、水分もなるべく色付きのものは避けましょう。水や透明なスポーツドリンク、お茶であれば検査2時間前まで摂取可能です。
鎮静剤を使用した場合は検査後30〜60分程度鎮静剤の効果が残る可能性があります。薬の効果が切れるまで回復室で休憩していただいてから、帰宅となります。
胃カメラの鎮静剤を使うデメリットはある?
鎮静剤はさまざまな副作用が出現するリスクがあります。鎮静剤が効きすぎてしまった場合、爆睡するだけに留まらず、呼吸が浅くなり、最悪の場合死亡してしまいます。かの有名なマイケルジャクソンの死因は鎮静剤の過剰投与だったと言われています。高齢であったり、肝臓・腎臓が悪い方の場合は薬が効きすぎたり、薬が長期間体に残ってしまったりと、より副作用が起こりやすいため、注意して使用する必要があります。
また、鎮静剤を使用した患者さんが暴れることが時々あります。これは「脱抑制」と呼ばれちょうどお酒を飲んだ時と同じように抑制系の神経の制御が甘くなり、暴れてしまいます。ご本人にその時の記憶がないのが特徴です。鎮静剤の量を増やすか違う薬を併用することでたいてい落ち着きますが、どうしてもコントロールがつかない場合は、残念ながら検査を中断することになります。
胃カメラの鎮静剤が効かない理由は?
胃カメラの鎮静剤が効かない理由としてはいくつかの要因が考えられます。まずは鎮静剤の量が足りないケースです。体格が大きい人は小さい人と比べて必要な鎮静剤の量が多くなるため、初回の投与量では足りないことがあります。また、普段から抗不安薬や睡眠導入剤を服用していると鎮静剤の成分に対して耐性ができており、薬が効きにくくなります。
そして最後は体質です。これは使用してみないと分からないですが、ある薬が効きにくいと判明した時には、他の鎮静剤に切り替える、もしくは他の鎮静剤を併用することで対応します。
いずれの理由であっても、最適な薬に変更したり、薬の投与量を増やしたりすることで基本的には対応可能ですので、安心して検査に望んでいただければと思います。
胃カメラの結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは大腸内視鏡検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
胃カメラの結果の見方・分類と主な所見
胃カメラ検査は医師が撮影した画像に基づいて胃の状態を評価します。これには胃の粘膜の色、形状、表面のパターン、血管の様子など、様々な要素が含まれます。この時できもの(ポリープ、腫瘍)や潰瘍などがある場合、その部分の組織を採取(生検)します。
生検した組織の結果は以下の6グループに分類されます。
Group1 | 正常組織および非腫瘍性病変 |
Group2 | 腫瘍性か非腫瘍性か判断の困難な病変 |
Group3 | 腺腫 |
Group4 | がんが疑われる病変 |
Group5 | がん |
GroupX | 生検組織診断ができない不適材料 |
Group1は特に問題ありませんが、Group3の腺腫はがん化する場合もありますので、基本的に早期のがんに準じた治療が行われます。またGroup4はがんが疑われる、Group5はがんの診断となり、治療が必要です。その他Group2は腫瘍(腺腫またはがん)か非腫瘍か判断が困難な病変であり、再検査が推奨されます。
胃カメラの結果で精密検査が必要な基準と内容
胃カメラで炎症所見や潰瘍、ポリープ、腫瘍がみられた場合は精密検査が必要になる場合があります。特に腫瘍については組織を採取(生検)して、病理検査を行うことで良性腫瘍か悪性腫瘍(がん)なのか判断できます。その他、胃カメラでは確認できない部分に病気がないか造影CTやMRIなどの画像検査を追加したり、血液検査を行ったりします。
「胃カメラ」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「胃カメラ」で発見できる病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃食道逆流症(GERD)
胃食道逆流症(GERD)は、胃酸が食道に逆流し、食道粘膜を刺激することで発症します。これは胃の入り口(噴門部)の締まりが悪くなることで起こり、胸焼けや酸っぱいものが上がってくる感じがすることが特徴です。対処法としては、食事の内容を見直し、脂っこい食事や香辛料、アルコールやカフェインなどの刺激物を避ける、食後すぐに横にならない、お腹に圧がかかるタイトな服を避けるなど生活習慣の改善が重要です。治療には胃酸を中和する制酸薬やプロトンポンプ阻害薬といった胃薬が用いられます。症状が続く場合は、消化器内科への受診をお勧めします。
胃炎
胃炎は、胃の内壁が炎症を起こす状態を指し、ヘリコバクター・ピロリ菌感染や暴飲暴食、アルコールの過剰摂取、喫煙、薬剤の影響などさまざまな原因で引き起こされます。胃の不快感や痛みが主な症状です。対処法として、刺激物の摂取を避ける、ストレスを溜めないようにする、摂酒・禁煙をするといったことが挙げられます。ピロリ菌による胃炎は胃がんの原因にもなるため、抗生剤を使用してピロリ菌の除菌をすることが非常に重要です。その他、制酸薬やプロトンポンプ阻害薬といった胃薬が用いられます。
胃がん
胃がんは、胃の粘膜から発生する悪性腫瘍です。発症原因にはピロリ菌の感染がほとんどで塩分の多い食事、肉多めの食生活、喫煙などが関与しているとされています。早期発見が重要で、早期のがんの場合には胃カメラを利用しての切除が可能です。がんが進行すると治療は外科手術、化学療法、放射線療法などがあります。胃の痛みや体重減少、食欲不振などの症状が見られたら速やかに消化器内科を受診し、胃カメラ検査を受けましょう。
胃ポリープ
胃ポリープは、胃の内壁から突出した良性の腫瘍です。ポリープは胃底腺ポリープと過形成性ポリープに分類され、後者はピロリ菌が感染している胃に発生します。多くは無症状ですが、大きくなると出血の原因になることがあります。過形成性ポリープは頻度は稀ですががん化することもあり、ピロリ菌が感染している胃は定期的な経過観察が必要です。無症状でなかなか気づかれないものなので、40歳を過ぎたら胃カメラ検査で胃ポリープや胃がんのチェックをしましょう。
「胃カメラの鎮静剤」は使ったほうがいい?
胃カメラ検査で鎮静剤を使用することで、患者さんは快適に検査を受けることができるためお勧めできます。特に嘔吐反射が強い方や、以前に胃カメラ検査で苦痛を感じた方は鎮静剤を使用することで安心して検査をすることができるでしょう。ただし、鎮静剤は副作用のリスクも伴うため、高齢の方や基礎疾患のある方は医師とよく相談して鎮静剤を使用するかどうか決定してください。
「胃カメラの鎮静剤」についてよくある質問
ここまで検診の内容や発見できる病気などを紹介しました。ここでは「胃カメラの鎮静剤」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃カメラの鎮静剤を使用すれば痛みはないですか?
和田 蔵人 医師
鎮静剤は痛みを直接取り除くものではありませんが、意識をぼーっとさせることで不快感を軽減します。多くの患者さんは鎮静剤を使用することで、検査中はほとんど苦痛を感じることなく、快適に過ごすことができます。
胃カメラの鎮静剤はどのくらいで効きますか?
和田 蔵人 医師
鎮静剤は通常投与後数分で効き始めます。ちょうど良い鎮静状態になるまでの時間は個人差があり、患者さんの体質や使用する鎮静剤の種類によって変わります。効きが悪い時には、副作用が出ないよう注意しながら少しずつ鎮静剤を追加投与します。
痛みに強い人は胃カメラの鎮静剤を使用しなくても問題ないですか?
和田 蔵人 医師
胃カメラ検査自体は鎮静剤がなくても行うことができる検査ですので、痛みに強い方や以前に鎮静剤なしで胃カメラ検査を受けた経験がある方は、鎮静剤なしでの検査を選んでいただいて構いません。
何時間後なら車やバイクを運転して良いですか?
和田 蔵人 医師
鎮静剤を使用した後は1日中眠たい状態が続くこともあります。自分ではしっかりしているつもりでも判断力が鈍っていることがあるため、鎮静剤を使用した日は1日運転をしないようにしてください。また検査当日は激しい運動を避けるようにしましょう。ポリープの切除などを行なっていない場合には、翌日から運動は再開可能です。
まとめ 「胃カメラの鎮静剤」で快適に検査を!
胃カメラ検査時の鎮静剤は、患者さんの不安を和らげ、快適に検査を受けられるようにしてくれます。ただし、鎮静剤による副作用もあるので、年齢や基礎疾患を医師に伝え、適切な鎮静の下、安全に胃カメラをしてもらいましょう。
「胃カメラ」で発見できる病気
「胃カメラ」から医師が発見できる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胃潰瘍や逆流性食道炎は胃痛や胸焼けなどの症状がありますが、胃ポリープや早期の胃がんは無症状のことが多いです。40歳をすぎたら胃カメラ検査を検討してみてください。