「眼底検査」で何がわかる?検査で発見できる病気や結果の見方まで医師が解説!
眼底検査とは?Medical DOC監修医が健康診断や眼科の眼底検査で発見できる目の病気や検査結果の見方と所見、眼圧検査との違い等を詳しく解説します。
監修医師:
伊藤 裕紀(医師)
目次 -INDEX-
眼底検査とは?
「眼底検査」というものをご存知でしょうか。眼底検査は、端的に言えば「目の奥を調べる検査」なのですが、2008年以降に公的検診の必須項目から除外された検査であり、人間ドックや目の症状があって眼科を受診しない限りは、受ける機会がなくなった検査です。しかし、眼底検査からは健康上重要な多くのことがわかります。以下で詳しく解説いたします。
眼底検査とは目のどんな検査?
眼底検査とは、目に光を当てて、網膜や視神経、血管などを詳細に観察し、病気の診断や進行度の確認を目的として行われる検査です。この検査は、眼科医が専用の機器を用いて行い、通常は5~10分程度で終わります。
大まかな検査の流れは、患者は暗い部屋で目を開き、検査機器のレンズを通して光を当てられます。眼科医はこの光を通して、眼底の状態を観察します。時には、観察範囲が広がるように瞳孔を広げる目薬を点眼することもあります。
眼底検査で体の何がわかる?
眼底検査を行うことで、生活習慣病(高血圧や糖尿病など)や循環器検診における血管病変を把握することができます。眼底の血管は全身の中でも細い血管であり、動脈硬化の影響が反映されやすいため、血管イベント(脳卒中や心筋梗塞・狭心症など)のリスク評価を行うことができます。
また、糖尿病網膜症、緑内障、加齢黄斑変性症といった、頻度が高く、かつ失明の危険性がある病気を早期に発見することができます。
眼底検査の費用は?
保険適用の場合、クリニックによって差はなく、片眼の検査で450円、両眼で900円程度になります。(3割負担の場合)。ただし、保険で定められた費用は定期的に改訂されます。
眼底検査前日や当日の注意点
前日に特に注意事項はありません。
当日の注意点としては、コンタクトレンズを装着している場合は、その種類によって外さないといけない場合があるということです。また詳細な観察のために散瞳薬を用いる場合があります。散瞳薬を点眼すると瞳孔が強制的に5~6時間程度は開いたままの状態になるため、眼底の観察には適していますが、その間日常生活においては非常に眩しく感じることになります。
当日は帰りの交通手段として、誰かに迎えに来てもらう、公共交通機関を利用するといった対応が必要になります。ご自身での運転は非常に危険ですのでやめましょう。
眼底検査を受けるリスク
散瞳薬を用いない場合、一般的にほとんどリスクはありません。ただし前項でも触れた散瞳薬(瞳孔を開く点眼薬)を使用した場合は、この目薬による副作用のリスクはあります。
眼底検査と眼圧検査との違い
眼底検査はこれまでご紹介したように、目の奥に網膜、視神経、血管などの状態を評価する検査です、一方、眼圧検査はのちに紹介する緑内障に大きく関わる、眼圧(眼球の中の圧力)を調べる検査です。
眼底検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは眼底検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
眼底検査結果の見方・分類と主な所見
H 高血圧性変化
0 異常所見なし。
Ⅰ 網膜細動脈が軽度に狭細化、進行すると第二枝以下に特に著明に認められます。
Ⅱ 高血圧性変化のⅠより著しい細動脈狭細化と細動脈の口径不同が認められます。
Ⅲ 高血圧性変化のⅡの所見がさらに著しくなり、網膜出血や白斑がみられます。
Ⅳ 高血圧性変化のⅢの所見に乳頭浮腫が加わったものです。
S 動脈硬化性変化
0 異常所見なし。
Ⅰ 軽度の動脈壁反射亢進と軽い交叉現象が認められます。
Ⅱ 動脈硬化性変化のⅠの所見が著しくなります。
Ⅲ 銅線動脈がみられます。交叉現象がさらに著しくなります。
Ⅳ 銀線動脈がみられます。
また血管以外にも、網膜の状態を調べることができます。例えば視神経乳頭陥凹拡大と指摘された場合は、緑内障の可能性が考えられます。
眼底検査結果が0度以外の分類で精密検査が必要な基準と内容
眼底検査で0度以外に分類された場合、基本的には眼科によって再検査を行うのが一般的です。その際、どのような検査を行うかは各医療機関によって異なるので一概には言えませんが、眼圧検査や眼底の再検査など詳細に再評価することが一般的です。
受診すべき診療科は眼科です。救急要請するほどの緊急性はありませんが、できるだけ早い日程で受診しましょう。
もし緑内障が指摘されれば眼圧を下げる治療を、動脈硬化や高血圧を指摘された場合はそれらに対しての治療を進めていくことが一般的です。
「眼底検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「眼底検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
白内障
白内障とは、目の中にある水晶体という部分が年齢とともに白く濁ってしまう病気のことです。水晶体は、カメラでいうレンズの役割を果たし普段は透明で、光を通して網膜にピントを合わせたり、有害な光(紫外線など)が網膜に到達する前に除去したり、などさまざまな機能を司り、私たちが物を見ることを可能にしています。
しかし、白内障になると、この水晶体が白く濁り、まるで霧の中を見ているかのように、視界がぼやけてくるのです。白内障は、進行すると日常生活に影響を与え、最終的には失明に繋がることもあります。しかし、早期に発見し治療を行うと、視力が改善する可能性があります。治療方法としては、手術が一般的です。手術では濁った水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズを入れることで、クリアな視界を取り戻すことができる場合があります。
健康な目を保つためには、定期的な眼科の検診を受け、早めの対処を心掛けることが大切です。白内障は誰でもなる可能性がある病気であり、早期発見が重要です。
緑内障
緑内障とは、眼球の中の圧力(眼圧)が高くなり、それにより視神経を傷つけてしまう病気です。視神経は、目で見たものを脳に伝える大切な神経です。緑内障が進行すると、視神経が次第にダメージを受け、視野が狭くなります。最初は、一部の視界がぼやけて見えにくくなるだけですが、放置すると次第にその範囲が広がっていき、最悪の場合、失明に至ることもあります。
緑内障の初期症状は、自分ではなかなか気づきにくいものです。そのため、定期的な眼科の検診で早期に発見し、適切な治療を始めることが重要です。治療方法は基本的に眼圧を下げることが重要になり、目薬や内服薬、レーザー治療や手術といった選択肢があります。
緑内障によって視神経が受けたダメージ、そして低下した視力は不可逆性であり、治療しても元には戻りません。そのため、予防と早期発見が大切です。特に40歳以上の方や家族に緑内障の方がいる方は、定期的な検診を受けることをお勧めします。
また緑内障は基本的に症状を自覚しづらい病気なのですが、突然目の痛みや頭痛、吐き気、霧視(視界に霧がかかったようになること)、充血などの症状が出現することもあります。
このような場合は急性緑内障発作という疾患の可能性があり、数時間以内に眼圧を下げないと失明のリスクがある眼科救急疾患です。このような場合は、緊急で眼科を受診しましょう。
高血圧症
血圧とは、血液が血管を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことを指します。そして高血圧症とは、この血圧が正常よりも高くなってしまっている状態です。高血圧が続くとのちに紹介する動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの血管の病気のリスクが上昇します。
そしてこの高血圧は、眼底検査でも特徴的な所見を表します。「Wong-Mitchell による分類」では眼底所見の程度を循環器疾患の発症危険度に対応させた、簡略化した分類が提唱されています。これによれば、「軽度の危険」に該当する分類では循環器疾患(狭心症や心筋梗塞など)の発症の危険がオッズ比で2 倍まで、「中等度の危険」では循環器疾患の発症の危険がオッズ比で2倍以上、さらに視神経乳頭浮腫という所見があれば「循環器疾患による死亡の危険が高い」となっています。
つまり血圧の値だけでなく、眼底検査の結果からも循環器疾患のリスクを評価できるということです。眼底検査で高血圧所見を指摘された際は、循環器疾患予防の観点からも一般内科や循環器内科などの医療機関で、適切な血圧管理を受けてください。緊急性はありませんので日中に受診しましょう。
動脈硬化
動脈硬化とは、先に説明した高血圧や脂質異常症、糖尿病などによって、本来弾力があるはずの動脈がどんどん硬くなってしまう状態のことです。もともと弾力があり柔軟性に優れている動脈が固くなることで、血管が破れやすくなったり、また詰まりやすくなったりします。
その結果、循環器疾患(狭心症や心筋梗塞)、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)といった血管の病気のリスクにつながります。
動脈硬化の対処法は、原因となる病気に対して適切な治療を行うことです。生活習慣の管理も重要ですが、医師の診察のもと適切な治療を開始しましょう。
自覚症状はないことがほとんどですので、検診などで引っかかった場合は医療機関を受診してください。軽度な動脈硬化の場合、緊急性は低いと考えられるので日中に、近隣のかかりつけ医を受診しましょう。
「眼底検査」で引っかかる理由は?
これまでご紹介した通り、眼底に何らかの病気があるなどの異常を認められた際は引っかかります。
「眼底検査」についてよくある質問
ここまで検査の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「眼底検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
眼底検査後の注意点はありますか?
伊藤 陽子 医師
散瞳薬を使用した後は一定時間視野が明るくぼやけて、眩しい状態になりますので移動には注意してください。
眼底検査ができない人はどんな人ですか?
伊藤 裕紀 医師
角膜や水晶体の濁りが強いと、光がうまく通らず、眼底がはっきりと観察できないことがあります。例えば、白内障の進行した患者さんは眼底検査が難しい場合があります。
また幼い子供や認知症の高齢者など、協力が難しい患者さんの場合も、眼底検査を適切に行うことが難しいことがあります。
眼底検査の日は検査前の何時間くらい運転できないですか?
伊藤 裕紀 医師
検査前というより、検査後の運転を控えるようにすることが重要です。大体5~6時間で散瞳薬の効果は切れますが、念の為さらに時間を空けていただくのが安全かと思います。
眼底検査にコンタクトを着用していっても問題ないですか?
伊藤 裕紀 医師
着用しても問題はありませんが、コンタクトの種類によっては検査時は外す必要がある場合もあります。
目の眼底検査は何歳から受けるべきですか?
伊藤 裕紀 医師
日本眼科医会や厚生労働省からは40歳以上から眼底検査を受けることを推奨されています。
まとめ「眼底検査」で網膜症や緑内障を早期発見!
冒頭でも触れたように眼底検査は公的検診の項目から外れたため、この検査を受ける人は減少していますが、この検査から得られる情報は非常に多いです。また視力というのは生活の質に直結する能力であり、できるだけ温存できるように努めることが重要です。
特に視力に影響を感じていなくても、40歳以上の方は眼底検査を受けることをお勧めします。
「眼底検査」の異常で考えられる病気
「眼底検査」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
眼底検査から指摘される、また関連する病気は上記が挙げられます。いずれも早期発見、早期治療が重要です。そのためにも定期的な眼底検査を受けるようにしましょう。