子宮頸がん検診や婦人科検診で「ASC-US」と言われたら癌の可能性はある?
婦人科検診や健康診断でASC-USと診断されたら癌の可能性が高い?Medical DOC監修医が子宮頸がん検診結果の見方やリスク・治療などを解説します。
監修医師:
喜多村 麻梨子(医師)
形成外科を経て美容医療の可能性を見出し、産後も美容診療に携わりながら幅広く活躍している。現在は美容医療の枠にとどまらず予防医学の啓蒙・執筆活動に従事し活躍の幅を広げている。
目次 -INDEX-
子宮頸がん検診結果のASC-USと診断されたらどうすべき?
皆さんは子宮頸がん検診を受けられていますか?
子宮頸がん検診では、子宮の入り口(子宮腟部)から細胞を採取し、これを顕微鏡で観察して細胞の形状を分析します。採取された細胞が正常か、異常であればその異常の程度はどのレベルかを確認します。異常のレベルにより、ASC-US、LSIL、HSIL、ASC-H、SCCなどのカテゴリに分けられます。
今回解説するASC-USは「Atypical Squamous Cells of Undetermined Significance」の略で、細胞が正常でないものの、異形成と診断するには異形変化が少ないとされる“グレーゾーン”の状態を指します。これは、がんの疑いではなく、「異形成」が疑われる状態を示しています。
ASC-USと診断された場合は、将来子宮頸がんに進行する可能性を評価するためのHPV検査という追加のテストが必要となります。子宮頸がんのほぼ全ては、ハイリスク型HPVの持続的な感染により引き起こされることがわかっているためです。
子宮頸がん検診の細胞診検査でASC-US(疑いあり)と診断されるのはどんな状態ですか?原因は何ですか?
子宮頸がん検査では細胞の形状の変化を顕微鏡で観察します。ASC-USとは、がんの疑いではなく、「異形成」が疑われる所見を指します。つまり、「異形成」は細胞の形状が正常ではない状態を意味し、「がん=悪性の腫瘍」ではありません。この「異形成」の多くはHPV(ヒトパピローマウイルス:Human Papilloma Virus)の感染によって引き起こされます。
子宮頸部の細胞には、ウイルスの侵入を監視するマクロファージと呼ばれる細胞が存在しています。マクロファージと免疫細胞が協力してHPVを排除する(自然免疫)と、細胞は正常な状態に戻ることが可能です。
診断 | |
---|---|
NILM | 異常なし |
ASC-US | 異形成と言い切れないが細胞に変化あり |
ASC-H | 異形成はあるけどわからない |
LSIL | HPVに感染 |
HSIL | |
SCC | 扁平上皮癌 |
AGC | 腺癌 |
子宮頸がん検診でASC-USと診断された場合、癌である確率はどのくらいですか?
ASC-USと診断された症例全てで、どの程度が実際に癌であるのかということは判定できません。しかし、異形成の程度による、癌への進行確率の違いは報告されています。
ASC-USと診断され、その後の追加検査でHPV感染も明らかになった場合、「異形成」の中でも、さらに「軽度」「中等度」「高度+上皮内がん」と3つに分類されています。
これらは、子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia : CIN)と分類され、それぞれ子宮頚部軽度異形成(CIN1)、子宮頚部中等度異形成(CIN2)、子宮頚部高度異形成+上皮内がん(CIN3)、と分かれます。それぞれのカテゴリががんに進行する確率は、CIN1では60%が1~2年で自然に消失し、10%が進行するとされています。CIN2では40%が1~2年で自然に消失し、20%が進行します。CIN3では20%が1~2年で自然に消失し、30%が進行します。研究データにより、CIN3が浸潤がんに進行する頻度には差がありますが、32例のCIN3を1年以上追跡した研究では、31%が上皮内がんに進行したと報告されています。
子宮頸がんの細胞診結果がASC-USだった場合の妊娠・出産など
子宮頸がん検診結果がASC-USでも妊娠はできますか?
ASC-USでも妊娠は可能です。子宮頸がんは、性交時などにHPVというウイルスに感染し、一定の確率でウイルス変異が起きてがん化することが原因とされています。子宮頸部の細胞にはマクロファージというウイルスの侵入を監視する細胞が存在するため、ご自身の免疫力で細胞が正常な状態に戻ることもあります。
また、早期発見・治療を行えば完治も可能であり、妊娠への影響もほとんどないと考えられています。
子宮頸がん検診でASC-USと診断された場合、性行為は控えたほうがいいですか?
性交渉は今まで通り可能です。
子宮頸がん検診結果のASC-USとHPV感染の関係
ASC-USだった場合、二次検査としてハイリスク型HPV(がんに進展する可能性のあるHPV)に感染しているかどうかの検査を行います。これをHPV検査と言います。
結果は、ハイリスク型HPV感染細胞が「検出された」あるいは「検出されない」と判定されます。
検出された(陽性)場合はその後さらに「子宮頸部組織診」を行います。
検出されなかった(陰性)場合は「1年後の子宮頸がん検診再検査」となります。
子宮頸がん検診結果がASC-USでHPVが陰性の確率はどのくらいですか?
ASC-USでHPVは陰性の確率は20%程度と報告されています。
子宮頸がん検診結果がASC-USでHPVが陽性の確率はどのくらいですか?
ASC-USとなった人の約50%にHPVハイリスク型が、さらに10~20%にCIN2/3が検出されると考えられています。
子宮頸がん検診結果の見方と「ASC-US」の精密検査
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
婦人科検診・子宮頸がん検診の診断基準と結果の見方
おりものの異常や月経時以外の出血があれば、必ず産婦人科を受診してください。
婦人科検診・子宮頸がん検診でASC-US(疑いあり・異常あり)と診断された場合の精密検査
ASC-USだった場合、二次検査としてハイリスク型HPV(がんに進展する可能性のあるHPV)に感染しているかどうかの検査を行います。
HPVには150種類以上の型があります。その中で、特に13種類のタイプが子宮頸がんを引き起こす可能性が高く、高リスク型HPVと呼ばれています。がんと関係するこの高リスク型HPV13種類が存在するかどうかを検査します。
ASC-USで子宮頸部にHPVの感染があれば子宮頚部異形成と判定します。一方、ASC-USで子宮頸部にHPVの感染がなければ子宮頚部異形成ではないと考えます。
HPV検査の費用は、ハイリスクHPV検査(一括検査)の場合、3割負担で1,500円前後です。健診先より紹介された医療機関で検査を受けましょう。
再検査結果に応じた治療内容
細胞診検査 | HPV検査 | 今後の方針 |
---|---|---|
異常なし | 陰性 | 3年後に検診 |
異常なし | 陽性 | 1年後に再検査 |
ASC-US | 陰性 | 1年後に再検査 |
ASC-US | 陽性 | コルポ診 |
子宮頸がん検診で「ASC-US」と診断された場合癌の可能性はある?治療はできる?
子宮頸がん検診でASC-USと診断された時点で、実はがんであるという可能性は低いと考えられます。前半で解説しましたが、子宮頸がん検診を受けられた時点でがん細胞が発見されれば、その時点でASC-USという判定にはならないためです。
またごくまれに、高度異形成や上皮内癌であるケースもありますが、そういった例外的な症例も早期発見できるよう、子宮頸がん検診の後のHPV検査が勧められています。またHPV検査で陰性であっても一年ごとの検診が勧められています。
進行したがんになりきる前に異常を見つけるためにも、こういった推奨にしたがって早期発見を心がけていれば、治療も可能です。
子宮頸がん検診結果の「ASC-US」についてよくある質問
ここまで診断結果のステージや対処法などを紹介しました。ここでは「ASC-US」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
検査結果がASC-USで実際に癌だった場合、子宮頸がんは治りますか?
喜多村 麻梨子 医師
ASC-USでH P V陽性、CIN3の場合、癌化する頻度が高くなります。このためCIN3になれば円錐切除術で病理組織の確認が推奨されます。CIN3の段階での治療が大切です。
子宮頸がん検診でASC-USとわかったら精密検査は何をしますか?
喜多村 麻梨子 医師
上述の通り、HPV検査を行います。
子宮頸がん検診がASC-US・疑いありで次の検診がNILM・異常なしになる可能性はありますか?
喜多村 麻梨子 医師
ASC-USでHPVも陽性だった場合に組織診を行うと、多くの場合で軽度異形成又は中等度異形成という結果が返ってきます。
子宮頸がん検診の疑いがあるASC-USとカンジダは関係ありますか?
喜多村 麻梨子 医師
NILMは、「異形成を含めた子宮頸がんに心配な細胞は見られません」と言う意味です。ただし子宮頸がんの心配はなくとも、カンジダやトリコモナス、細菌性膣症、萎縮性膣炎、膣炎などの変化がある場合でも、NILMになります。
ストレスが原因で子宮頸がん検診でASC-USと診断されることはありますか?
喜多村 麻梨子 医師
ストレスや寝不足が、細胞の変化と全く関係ないのか?と言いますと、多少影響する可能性があります。感染したHPVが活動してしまう要因の一つとして、自分自身の免疫力の低下が挙げられるからです。
まとめ 子宮頸がん検診で「ASC-US」(疑いあり)と診断されたら必ず二次検査を受けましょう!
ASC-USは「正常とは言い切れない異型細胞が見られているけれど、それがHPV感染による変化なのか、その他の炎症性変化(カンジダや膣炎などにより細胞が反応している状態)なのか、区別することができない」ことを指します。
子宮頸がん検診による細胞の検査だけでは、子宮頸がんの原因になるHPV感染の有無は判定できません。早期発見、早期治療のためHPV検査を受けて感染の有無をはっきりさせましょう。