【闘病】検査異常なしでも「吐き気と動悸が…」 新卒の心を壊した『原因不明の不調』の正体

新卒入社直後、同期への劣等感から吐き気や疲労感が続く「身体症状症」を発症した川田さん(仮称)。焦りからの無理な復職で悪化を招きますが、退職を決断し「早く治さねば」という強迫観念を手放したことで症状が安定しました。休職中のカウンセリングを支えに、自分の心に耳を澄まし「限界に早く気づくこと」の大切さを語ってくれた体験談を紹介します。

体験者プロフィール:
川田さん(仮称)
新卒で入社してから精神が病んでいった

編集部
病気が判明するまでの経緯を教えてください。
川田さん
2022年、23歳で新社会人として入社した年の夏休みに涙が止まらなくなり、病院を受診して「身体症状症」と診断されました。周りの同期の高いスキルやコミュニケーション能力を見て、自分の不甲斐なさに打ちひしがれており、その感情を2カ月以上も閉じ込めて生活していたためです。
編集部
どういった病気なのでしょうか?
川田さん
医学的な検査で異常が見つからないにもかかわらず、身体に症状が出続ける病気です。症状は痛みや吐き気、めまいなど多岐にわたります。症状が深刻になると強い不安感に囚われ、心身へのストレスにつながって日常生活に支障をきたします。私の場合は、吐き気や疲労感に見舞われる機会が多いと感じています。
編集部
診断を受けたときの気持ちはいかがでしたか?
川田さん
とてもショックを受けたのを覚えています。自分の感情と体調をうまくコントロールできず、発病してしまった後悔や、同期に追い越される焦りが湧き上がってきました。一方で、これ以上つらい状態で働き続けなくてもよいのだと、諦めがついた部分もあります。診断後すぐに休職の手続きを進められたため、一度自分にブレーキをかけられたのは不幸中の幸いだったように感じます。
自分の心境と体調に向き合うことで回復に向かった

編集部
治療の方針はどう進めていくことになりましたか?
川田さん
内服薬を使用しながら週1回診察を受け、日々の進捗を報告することになりました。心療内科で治療を進め、診察後にカウンセリングを受けてマインドフルネスの練習をする機会も設けてもらいました。自分の中で整理できていない感情や、処理しきれない考えを吐露する場を得られたのは非常に助かりました。状況の整理と別の視点を知り、気持ちが軽くなった感覚を覚えています。
編集部
服用している薬はどういったものですか?
川田さん
薬は3種類を処方してもらいました。1つ目は、胃の痛みや喉にものが詰まったような不快感を抑える薬と説明を受けました。2つ目は、食べ物が喉を通らない状態だったため、胸からお腹にかけての違和感を解消し、安心して食事をとれるよう助けてくれる薬とのことでした。そして、うつ病に近い症状も見られたことから、弱めの精神安定剤も処方してもらいました。イライラや不眠への不安を和らげ、1日を安心して過ごせる体調へ導いてくれます。現在の処方に落ち着くまで、何度も異なる薬を試し、自分の体に合う適量へ調整しました。
編集部
副作用のようなものは出ないのでしょうか?
川田さん
精神安定剤の効き目が強すぎたのか、朝起きるのがだるくて仕方ありませんでした。気持ちが安定する一方で、数年間は午前10〜11時に起きるのが当たり前になり、やがて正午を過ぎても起きられなくなりました。不規則な生活リズムになると気持ちも落ち込みやすくなります。体調を崩して精神的にもつらい状態になり、悪循環に飲み込まれている期間が長かったのは本当に苦しかったです。その後、不眠症対策の薬を処方されて改善が見られた際には、よくぞここまで耐え抜いたと自分を褒めていたと思います。
編集部
生活はどのように変化しましたか?
川田さん
休職したものの、不規則なリズムで生活していました。午前11時に起きるため日光を浴びる機会も少なく、食欲も湧かないため1日1食しかとれず、栄養不足を感じていました。外出も難しく、通院中もめまいや動悸が止まらなくなり、吐き気を起こすのは当たり前の状態でした。その状況を医師に話したところ、「無理な復帰や外出を考える必要はありません。まずは症状が出た原因を探りながら自分を気遣いましょう」とアドバイスを受けました。そのため、家の中で安静にしている期間が長くなりました。
編集部
治療していく中で、一番のつらさは何でしたか?
川田さん
症状が回復しない焦りです。診断を受けて半年ほどで復職したものの、無理に自分を鼓舞して働き始めたため、体調を崩しやすく精神も安定しませんでした。復職後も合間に休暇を取るほど疲れ果て、また深く精神を病むという繰り返しでした。体に傷を負っているわけではなく、精神的な要因だから動き出せば治るだろうという慢心もあったかもしれません。精神疾患を精神論で片付けようとしていたと反省しています。
編集部
治療を受ける中でモチベーションになっていたことはありますか?
川田さん
週に1回のカウンセリングが大きな支えになっていました。診察の内容を踏まえて、取り組むべき手段や考え方を一緒に考えてもらえます。最初のころは、自分の頭の中を整理するためにマインドフルネスを学び、実践する練習をしていました。しかし、毎回マインドフルネスに向き合えるほど精神が安定しているわけではありません。そのようなときは、ただ私の悩みと考えを聞く時間に切り替えたり、新しい取り組みを提案したりしてくれました。柔軟にコミュニケーションを取ってもらったおかげで、定期的に通院する習慣が身についたと感謝しています。
つらいときは医療機関や信頼できる人を頼る

編集部
現在の治療と生活の様子について教えてください。
川田さん
通院は1カ月に1回の頻度になりました。生活リズムも少しずつよくなっており、午前11時に起きる日はほとんどありません。外出への抵抗も減り、近所を散歩して運動する習慣を続けています。食欲も回復し、気持ち悪くならずに食事をとれるまでに回復しました。動悸や吐き気がする際は理由を自分に問いかけ、休む日と行動する日のメリハリをつけて過ごしています。
編集部
症状が安定してきた要因はありますか?
川田さん
仕事を辞めたのが一番大きな要因だと感じています。以前は、一刻も早く職場に戻って周囲に合わせなければならないという強迫観念で治療に向き合っていました。しかし、辞める決心をした際に気持ちがだんだんとほぐれていくのを感じました。同時に、この症状と長く付き合っていくのだと確信しました。
編集部
症状が出るまでに気をつけるべきことは何ですか?
川田さん
自分の感情にうそをつかないことです。「自分は弱い人間ではない」「今は苦しいだけで、この時間を耐えれば体調が戻る」と感じているときは危険です。精神疾患にかかりやすい人は、悩みを自分で抱え込みすぎる傾向があると思います。「恥ずかしいから」と病院へ行くのを避けてしまうほど自分の限界に鈍感になっているため、限界だと感じたらすぐに相談するのが得策です。
編集部
症状が回復する上で大切なことを教えてください。
川田さん
早く治そうとしないことです。「もう大丈夫です」と言い切る人は、大抵の場合まだ大丈夫ではありません。復帰を早めると、どこかのタイミングで再発するか、症状が悪化して別の重い病気にかかる恐れがあります。体の傷とは異なり、目に見えない症状だからこそ、安易に回復したと自己判断しない姿勢が大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
川田さん
自分が過度な我慢をして生きていないか、一度考えてみてください。また、悩みやモヤモヤを誰かに共有し、気持ちを発散する場を設けているかを確認してみてください。自分の中だけにつらい状況を閉じ込めるのはよくありません。どうか自分の心に耳を澄ましてください。発症前に自覚できれば、回復にも余裕が持てます。症状が悪化してからでは回復までに膨大な時間がかかるため、早めに受診することが大切です。
編集後記
厚生労働省の発表によると、生涯のうちに約15人に1人がうつ病にかかるといわれています。しかし、治療を受けているのは全体の4分の1にとどまり、病院の受診に抵抗がある人が多いと推測されます。早期に適切な治療を受ければ、症状の改善が見込めます。精神疾患は特別な病気ではなく、誰もがかかる可能性のある病気です。自分だけで悩まず、医療機関への受診を検討してみてください。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております
※本記事は個人の体験談であり、症状や治療効果・副作用には個人差があります。必ず主治医の指示に従ってください

記事監修医師
別府 拓紀(こもれび訪問クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。


