【闘病】『双極性障害』で「リストカット」や“オーバードーズ”繰り返し、閉鎖病棟へ…

激務と資格の勉強で睡眠時間を削っていたある日、めまいで起き上がれなくなった安積さん。最初はうつ病と診断されますが、7年後に「双極性障害」へと診断名が変わりました。自殺未遂を繰り返したことで閉鎖病棟へ複数回の入院も経験。閉鎖的で辛い闘病生活でしたが、恋人とペットの存在に支えられ、現在は趣味を楽しみながら病と向き合って生きる安積さんの軌跡を紹介します。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年6月取材。

体験者プロフィール:
安積 由香里
大阪府在住、1983年生まれ。家族構成 昨年離婚し、両親と同居。診断時の職業は会社員(事務職)。2008年にうつ病を発症し、2015年に双極性障害と診断される。現在は薬物療法により薬を服用しながら、3週間に1度、通院している。
診断までの経緯

編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
安積さん
ある日突然、めまいや頭痛、だるさなど体の不調が増え、仕事に支障をきたすようになりました。仕事帰りや休日に、内科や耳鼻咽喉科、脳神経内科など多数の科を受診しましたが、どのクリニックも結果は異常なし。友人に体調不良を相談したところ、心療内科への受診をすすめられました。翌日、心療内科がある街のクリニックで診察を受けると、うつ病と診断されました。
編集部
「うつ病」の診断だったのですね。
安積さん
はい。ところが、うつ病を発症してから7年が経ったころ、落ち込む日とテンションの高い日の差が、大きく現れる日が続くようになりました。当時の担当医に相談すると、そこでうつ病ではなく「双極性障害」だと診断されたのです。双極性障害の診断名にたどり着くまで、計4回病院は変わりました。
編集部
双極性障害になった原因は何だったと思いますか?
安積さん
医師からは、「双極性障害になった原因は解明されておらず、はっきりとは分からない」と言われました。私の中で思い当たることとすれば、ストレスが強くかかる環境にいて、資格の勉強や仕事の負荷が強くかかっていたことがあり、それがきっかけだったのかと思いましたが、「双極性障害はそういったストレスなどがきっかけでなるものではない可能性が高く、遺伝子やもともと生まれ持った発症リスクで一定の確率でなるものである」と教えてもらいました。家族に同じような病気の人がいると、発症の確率を上げる可能性があるとも話していました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
安積さん
診断を受けたときは、私に対してはこれといった説明はありませんでしたが、診察に付き添ってくれていた母には説明があったそうです。その後、早い段階で入院することになったので、その際は私にも治療方針について説明がありました。主に薬で治療を進めていくことや、入院の判断にいたった経緯などを聞きました。なぜ入院にいたったのかというと、当時の私は自殺願望が強かったこともあって、担当医は私の様子に気づき、入院の提案をしてくれました。閉鎖病棟に入ると外とのつながりが絶たれるので、自殺を遂行することもできませんでした。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
安積さん
最初はうつ病という診断で、うつ病を治すための治療をおこなってきたため、双極性障害だったということに驚きました。そのときは薬が変わるだけだと思い、特に不安も感じず受け入れましたが、離脱症状に苦しみました。離脱症状とは、手足の震えや頭痛などの身体的症状や、不安やイライラなどの精神的症状が現れることを言います。それに数日耐えたことで、双極性障害の治療に進むことができました。
発症前とは180度違う生活

編集部
どのような治療をおこなってきましたか?
安積さん
基本は薬物治療ですが、一時期カウンセリングを受けていた時期もありました。薬物治療にリチウムを用いたものがあり、血中濃度が高いと中毒になってしまいます。なので、3カ月に1度、血液検査をおこなって血中濃度を調べました。カウンセリングは、診察が終わった後に別室にておこなわれていました。1時間ほど、近況や感じたことなどを話すのですが、頭がすっきりした感覚になりました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
安積さん
双極性障害は活動的になる躁状態と、無気力になるうつ状態を繰り返す病気です。また、躁状態とうつ状態が重なる混合状態もあります。混合状態のときの症状で特にひどかったのは、リストカットや睡眠薬のオーバードーズでした。いわゆる「自殺未遂」と言われるものですが、あまりに繰り返すため、閉鎖病棟へ複数回入院しました。さらに、躁状態の症状に「浪費をする」という症状があります。もともと買い物が好きだった私は、ひどいときでは70万円の着物をローンで購入していました。発症する前の生活とは、180度違う毎日を過ごしていました。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
安積さん
恋人の存在です。彼は仕事が忙しかったにもかかわらず、電話やメールなどで深夜まで話を聞いてくれました。命の危険があり、措置入院をしなければならなくなったときも、車で片道2時間の距離を文句も言わず会いに来てくれました。その後、彼もうつ病になりましたが、支え合って乗り越えています。また、ペットの存在も心の支えになりました。現在も猫を飼っているのですが、その子が私の心を癒してくれています。

編集部
周囲に病気について話していますか?
安積さん
私は話していません。話しておかないと困るときや、助けてもらいたいときなどは話しています。病気について理解してくれる人もいますが、偏見を持つ人もいるので、話すときは慎重になります。話すか話さないかは本人の意思次第なので、どちらが正解とは言えないと思います。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
安積さん
生きることがつらい、苦しい日々ですが、乗り越えられる日が必ず来ます。どんなことがあっても、薬だけは飲み続けてほしいです。薬を抜くと絶対に体調を崩すので、心身を安定させるために薬は必ず飲みましょう。もっと気楽に、もっとマイペースに生きていいので、自分に厳しくすることはやめましょう。
編集部
発症してから得たものや失ったものはありますか?
安積さん
得たものは自分を見つめ直す時間です。発症するまでは、日々の仕事や勉強に追われ、ゆっくり何かを考える時間を持てませんでした。仕事を辞めることになり、時間だけはたくさんあったので、さまざまなことを考え整理しました。失ったものは、私の場合は仕事の充実感です。仕事を辞めたので当然かもしれませんが、仕事が好きだった私にはつらいことでした。今後仕事に就けるようになった場合は、無理をしないように気をつけます。
双極性障害と向き合って生きていく

編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
安積さん
現在は症状も安定していて、担当医と細かく薬の調整をしています。ですが、ドクターストップにより私は働くことができません。現在はいつでも働けるように体力づくりをしながら、最近までできなかった読書をしています。ほかにも絵を描いたり、お菓子を作ったり、趣味を楽しんでいます。
編集部
医療費はどのように支払われていますか?
安積さん
双極性障害に限らず、精神疾患の患者は薬が多い傾向にあります。薬が多い分、医療費は高額になります。私も一時期多くの薬を服薬しており、医療費がかさみました。そこで、知人に相談したところ、医療費の自己負担額を軽減する、公費負担の医療制度があると聞いたのです。その「自立支援医療制度」を利用したことで、驚くほど医療費が安くなり、気持ちも軽くなりました。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
安積さん
仕事は大変だと思いますが、分け隔てなく患者に接してほしいです。病院へ行って人に会うのもつらい中、話さなければならない相手なので、冷たくあしらわれるのはつらいです。こういう場面では落ち込みがひどくなり、症状が悪化することもありました。温かく接してもらえたら、病院通いのストレスが一つ減ります。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
安積さん
双極性障害の治療は、人それぞれ違います。どんな治療を受けようとも、すぐによい結果が出るとは限りません。ですが、乗り越えた人はたくさんいるので、諦めずコツコツ治療を続けることが大切です。一番してはいけないことは、無理をすることです。無理なく、マイペースを心がけてください。
編集部まとめ
記事の監修医師によると、双極性障害は気の弱さやストレスでかかるものではない可能性が高く、もともと持っている性格、体質が発症のきっかけとなるものなのだそうです。そういった心の病気なのに、体の病気のような特徴をもつ双極性障害は、薬物療法が主体。適切な治療を受ければ症状をコントロールできる可能性があるとのことでした。気分が高揚し活動的になったり、気分が落ち込んだりするときは、特に気をつけましょう。また、双極性障害は本人では気づきにくい病気。身の周りの大切な人が「双極性障害かも」と思ったら、病院へいくことをすすめてあげることも大切です。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
別府 拓紀(精神科医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。



