【闘病】社会は不妊治療に厳しかった 妊娠・子育てに寛容なのに…(2/2ページ)

不妊治療中に将来のことを見据え、転職をしていくのもよし

編集部
不妊治療中、仕事との両立で悩んでいる女性も多いと思います。なにかアドバイスはありますか?
陽子さん
治療をやめようか悩んでいたとき、会社にも相談しました。そのとき、不妊治療をしていると打ち明けたところ、特例として、残業をあまりしなくてもいい働き方に変えてくれたのです。それからはちょっと楽になりました。もし上司や人事の人に不妊治療をしていることを話していなくて、仕事との両立に悩んでいる人がいたら、ぜひ誰かに相談してみると良いのではないかと思います。
編集部
治療と仕事は両立した方が良いと思いますか?
陽子さん
そうですね。仕事を続けるかどうかについてはいろいろな意見があると思いますが、妊娠出産した後のことを考えると、たとえば「お母さんが仕事をしていないと保育園に入りづらい」など、仕事をしていた方が有利なこともあります。ただし、もし今の会社の制度があまり整っておらず、働き続けるのが難しいなら、不妊治療中に転職を考えるのも良いかもしれません。今、私は子育て中で時短勤務にしていますが、時短勤務では転職はなかなか……。だから、フルタイムで働けるうちに将来のことを考え、早めに転職しておくのも良いかもしれません。
編集部
今は不妊治療が保険適用になるなど、社会の仕組みも整いつつありますが、まだ理解を得られないシーンもあるのですね。
陽子さん
不妊治療をしていたとき、上司に労働時間のことなどで相談しても「不妊治療は病気じゃなく、個人の都合でやっていることだからあまり配慮はできない」と言われたこともありました。そうかと思うと、妊娠中や子育て中の人は残業しなくていいなど、配慮されることも多く、不平等だなと感じました。これからもっと不妊治療についての社会的な理解が深まれば、そうした不平等は解消されるのかもしれませんが、まだそういう風潮が根強く残っているところもあるように思います。
編集部
不妊治療を終えて、政府や医療機関に望むことはなんですか?
陽子さん
私が転院先を探す時に苦労したのが、病院によって治療結果のデータを開示しているところとそうでないところの差が激しく、情報不足だったということ。もし、治療結果のデータが一律で開示されたら、もっと病院選びも楽になると思います。それと現在は、不妊治療は保険適用なので状況は違うと思いますが、私の頃は完全に自由診療だったので、何が標準の治療かまったくわからず、自分で調べるしかありませんでした。もしコンサルタントやカウンセラーみたいな人が、「あなたのような不妊タイプは、この病院で、この治療をすると良いですよ」とアドバイスをしてくれたら、悩む時間を減らせただろうと思います。そういうサービスが誕生するといいですね。
編集部
これから不妊治療を始める方、もしくは、治療中の方へメッセージをお願いします。
陽子さん
私ははじめ、「不妊治療をすれば必ず授かれるのかな」「体外受精まですれば絶対大丈夫だろう」と思っていました。でも治療が進み、いろいろな人の体験談を聞くうち「不妊治療をしたからといって、必ず授かれるわけではない」と気づきました。そのことは初めから理解して、覚悟を決めて不妊治療に臨むことをお勧めします。不妊治療は意外と長期化することもあるので、思い詰めすぎず、息抜きもしながらがんばってほしい。私の場合は、たまに旅行に行ったり、趣味の時間を設けたりすることで気分転換をしました。そういう時間を持ちながら、あまり根を詰めすぎずに不妊治療の時間を過ごしてほしいと思います。
編集部まとめ
保険が適用になったこともあり、不妊治療に対する社会の理解は少しずつ深まっているように思いますが、その一方、いまだ心無い一言に傷ついたり、悩んだりする女性が多いのも事実。そうしたときでも支えになったのは、それを話し、共有できる場所の存在でした。人それぞれ自分にあった方法で、適度に気分転換しながら治療の期間を過ごしたいですね。



