【闘病】「目が見えないから挑戦できる」 網膜色素変性症のパラクライミング日本代表(2/2ページ)

パラクライミングとの出会い

編集部
障がい者クライミングの日本代表とお聞きました。
濵ノ上さん
はい。現在競技者として活動しているパラクライミングとの出会いや、新天地の東京で一から生活と仲間を築いたことなど、小さな挑戦を積み重ねることで、自己肯定感を育むことができました。今となっては、持病や障がいは自身のアドバンテージやアイデンティティにまでなっています。
編集部
普段病気を意識することがない健常者に一言お願いします。
濵ノ上さん
目の病気に限らず、世の中には病気や障がいが想像以上にたくさんあります。その数だけ、価値観も多様です。「自分とは関係が無い」と素通りすることもできますが、異なる状況にある人たちの世界の捉え方について知る良い機会でもあります。そして、そういった人たちを知ることで、自分自身に与えられているチャンスや可能性など、様々な物事に気づくきっかけにもなり得ます。
編集部
自分にとっての当たり前と、ほかの人にとっての当たり前は違いますね。
濵ノ上さん
困難や不便であることは必ずしも不幸ではありません。不幸なのは、他人と比べて、自分が持たないものにばかり目を向け、そこに捕らわれている状況です。目が見えないのに、目が見える世界の価値感や物差しに捕らわれ続けることは不幸です。目が見えなくても楽しめること、目が見えない自分だからこそ気づけること、挑戦できることがあります。限られた人生なので、そちらに目を向けることの方が有意義で幸福だと私は考えています。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
濵ノ上さん
私は、病と「闘う」のではなく、それを「自身の一部としてとらえて共に生きていく」ことが大切であると思っています。今後、病状の進行により苦悩や挫折も待ち構えているかもしれません。でも、それも人生の一つのエッセンスとして楽しんでいけたらいいと思っています。そして私の生き様をSNSで発信していくことが、誰かの希望や励みにつながることを願っています。また、母が京都にクライミング施設を立ち上げました。障がい者、シニア、子育て世代など、どんな方でも気軽に楽しめて、挑戦する楽しさに出会えるユニバーサルな場所になることが願いです。お近くにいらした際にはぜひ遊びに来てください。
編集部まとめ
濵ノ上さんの「不幸とは、他人と比べて自分にないものにとらわれること」という言葉は、今の自分を大切にして幸せになるための魔法の言葉のように感じました。また小さな挑戦の積み重ねが自己肯定感を育むという言葉は、繰り返しの日常の中では忘れがちな大切なことだと気づかされました。濵ノ上さんの前向きな発言と姿に励まされた方も多いのではないでしょうか。





