吉井怜、18歳・人気絶頂で「急性骨髄性白血病」宣告に「どうして私が」体に起きていた異変とは

人気絶頂のなか、突如として急性骨髄性白血病を宣告された俳優の吉井怜さん。高熱や強い倦怠感(けんたいかん)という一見ありふれた症状の裏に潜んでいたのは、「どうして私が……」と思わず言葉を失うほどの現実でした。当時は、がん=不治の病という印象が根強かった時代です。入院から診断、そして告知に至るまで、吉井さんはどのように病と向き合ったのでしょうか。本稿では、発症のきっかけや初期症状、急性と慢性の違い、若年発症の背景や家族歴(近親者がかかった病気や死因の記録)との関係まで、日本血液学会認定血液専門医・指導医の森毅彦先生の解説とともに振り返ります。
※2026年2月取材。
>【イラスト解説】吉井怜を襲った「白血病」体に起きていた異変とは

吉井怜(俳優)
東京都出身。O型。14歳で芸能界デビュー。仮面ライダードライブシリーズなど、ドラマ、舞台、CMに多数出演。16年、俳優の山崎樹範と結婚。主な出演:舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」映画「見える子ちゃん」など多数出演。自身の闘病記「神様、何するの…」はドラマ化もされた。

先生プロフィール:
森毅彦(日本血液学会認定血液専門医・指導医)
日本血液学会認定血液専門医・指導医、日本造血・免疫細胞療法学会造血細胞移植認定医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本感染症学会感染症専門医。
突然の発熱と体調不良から告げられた「白血病」に吉井怜が感じた不安と葛藤

森先生
最初に体調の異変に気づいたきっかけについて教えてください。
吉井さん
最初に体調の異変を感じたのは、18歳の時の高熱でした。風邪っぽい症状で、私はあまり風邪をひかないタイプだったのでちょっと熱が高いなと思い、解熱剤を飲みながら仕事を続けていました。加えて、2〜3カ月前から貧血のような状態が続いていて、朝ベッドから起き上がれないくらい体が重い日もありました。今思えば、そのような症状も何かしらのサインだったのかもしれません。
森先生
その時点では、まさか白血病とは思っていなかったのですね。
吉井さん
まったく思っていませんでした。最終的には高熱が下がらず受診して、血液検査をした結果、入院になりました。入院という言葉が出た瞬間、頭が真っ白になりました。仕事を休まなければいけないということが、一番ショックでした。
森先生
入院当初、医師からはどのような説明を受けましたか。
吉井さん
骨髄不全症という言葉を聞いた記憶があります。しかし、その病名が当時の私にはピンとこなくて、何のことだろう、という感覚でした。病気そのものよりも、長く入院すると言われたことのほうが衝撃でした。
森先生
当時は、特に若い患者さんに対して、いきなり、白血病という説明をせず、骨髄の機能低下を示すような表現で説明することもあった時代です。今は治療成績が向上していることもあり、基本的には病名を含めてきちんと説明しますが、吉井さんが発病したころはまだ移行期でした。
吉井さん
改めて教えていただきたいのですが、白血病には急性と慢性がありますよね。どのような点が違うのでしょうか。
森先生
白血病は白血球ががん化して異常に増える病気です。そのうち、急性は進行が速く、日~週単位で悪化する特徴があります。骨髄(骨の中心部にあり白血球や赤血球、血小板などの血球をつくる組織)が白血病細胞で占められてしまうと、赤血球・血小板・正常な白血球が作れなくなり、貧血・出血傾向・感染症が起こります。一方、慢性は年単位でゆっくり進行し、健康診断で偶然見つかることもあり、この2つは性質も治療法も大きく異なります。
吉井怜を襲った急性白血病の正体。初期症状や検査法とは
吉井さん
急性骨髄性白血病では、どのような初期症状が出やすいのでしょうか。
森先生
感染症に伴う高熱、強い倦怠感、息切れ、あざが増える、歯ぐきからの出血が止まりにくいなどが典型的な症状です。正常な白血球が減ることで免疫が低下しますので、感染症にかかりやすくなります。赤血球が減ると体内に酸素を取り込み・運べなくなるため、だるさ、起き上がれない、階段で息が切れるといった症状が出ます。止血の働きをもつ血小板が減るため、出血しやすくなります。
吉井さん
高熱や体調不良が続く場合、白血病以外の血液疾患も考えられるのでしょうか。
森先生
はい。白血病はがんの中では比較的頻度が低い種類の病気と言えます。再生不良性貧血、骨髄異形成症候群などでも似たような症状が出ます。そのため、症状が重なった場合は採血をして原因を確認することが重要です。入院中はどのような検査を受けられましたか?
吉井さん
まず血液検査をして、そのあとに、胸の真ん中(胸骨)から骨髄液を採る検査をしました。針を抜く瞬間に体ごと持ち上げられたのではないかというくらい衝撃があったことを覚えています。検査の結果、白血病であることが分かりました。
森先生
骨髄液に関しては、現在は安全性の観点から骨盤の後ろ側の骨(腸骨)から採取することが一般的です。診断の流れとしては、採血で血球の異常を確認し、骨髄検査で細胞の形や性質を調べ、急性か慢性か、骨髄性かリンパ性かを確定します。告知を受けたときのお気持ちは、覚えていらっしゃいますか?
吉井さん
「どうして私が」という一言でした。白血病は不治の病というイメージが強く、頭が真っ白になりました。しかし先生から「タイプによって治療成績は異なりますが、今は治る病気になってきている」と言われたことで、治療を頑張ろうと決断でき、前向きな気持ちになることができました。
森先生
急性骨髄性白血病は、骨髄の中で血球を作る細胞ががん化し、正常な血球が作れなくなる病気です。発症は高齢者に多く、平均的には60〜70代が中心ですが、10代や20代でも一定数発症します。多くは原因不明(特発性)で、家族歴との明確な関連はありません。一部、ほかのがん治療(抗がん剤や放射線治療)後に発症する治療関連白血病がありますが、一般的には発病の予測は出来ない病気と言われています。
吉井さん
当時は「がん=治らない」という印象でした。しかし実際に治療を受け、先生の言葉を聞き、医学は進歩していると実感しました。今は、検査も怖いものではなく、早く病気や体の異変を見つけるために大切なことだと思えるようになりました。
森先生
白血病は頻度が高い病気ではありませんが、発熱が続く、貧血症状がある、あざや鼻血などの出血が続くといった症状が複数そろった場合は受診することをおすすめします。また、年1回の健康診断で採血を受けることは、白血病に限らず体の異常や変化を見つけるためにも重要です。
編集後記
今回の記事では、急性骨髄性白血病の発症から診断、告知までの経緯を振り返りました。高熱や強い倦怠感といった一見ありふれた症状の裏に、重大な病気が潜んでいることもあります。早期受診と正確な検査が、その後の経過を左右します。突然の宣告に直面しながらも、前を向いた吉井さんの姿勢は、多くの方に気づきと勇気を与えてくれるはずです。本稿が読者の皆様にとって、体の小さな異変に目を向けるきっかけとなりましたら幸いです。





