【闘病】死の淵から生還した女性ボーカルを再び襲う悪夢… 直感が告げた『乳がん』

乳がんを直感で察知し、前向きに病と向き合ってきたロックバンド・Elizabeth.eightのボーカルを務めるミワユータさん。ブログやライブを通じて、笑いと音楽で乳がんサバイバーたちを勇気づける彼女の姿には、病気を超えて人と人がつながる力があふれていました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年10月取材。

体験者プロフィール:
ミワユータさん
自覚症状はゼロ、"胸の声"に導かれた診断の軌跡

編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
ミワユータさん
左胸に触れた時に、「私、乳がんだよ!」と胸に言われた気がしたんです。不思議なことに、私自身も「絶対に乳がんだ!」と確信していました。それまで乳がんの「にゅ」の字も頭になかったのに、突然そんな直感が湧いてきて……。不思議ですよね。数年前に脳の病気で死にかけたことがあり、脳がどれほどすごい働きをするか、過去に体験していたことも影響していたかもしれません。「こういうこともあるだろう」という直感に従い、すぐクリニックへ行きました。ドクターも「この胸の状態で、どうして乳がんだと分かったのか」と不思議がっていましたね。
編集部
診断が下された時の心境について教えてください。
ミワユータさん
一言で表すと「またか」ですね。脳の病気で死にかけて、やっとステージに復帰してバリバリ活動していたのに……と。うちのバンドは5人編成で、ギタリストも白血病になってしまったこともあり、もう「またか」という感想しか出てきません。「漫画かよ」っていう感じですよね。現実味がなくて、「あれ? 私、死ぬかもしれないってこと? いや、あっけなさすぎる。こんなものなの?」とも思いました。
編集部
自覚症状などはあったのでしょうか?
ミワユータさん
ありません。しこりが明確にあるわけでもなくて。何かに触れたような気はしたけれど、ドクターには「何もない」と言われました。その状態で乳がんが見つかった理由は、「左胸が教えてくれた」としか言いようがないですね。それまでは普通に元気でしたし、バンドのレコーディング中で、ライブも精力的にやっていました。がんだと診断された数日後には、「あたしバンドマン」という曲のミュージックビデオを撮影しているんです。今考えると、かなりメンタルが強いですよね(笑)。
「がんは寝ていても治らない」
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
ミワユータさん
正直なところ、説明が難しくてちゃんと理解できませんでした(笑)。とにかく「全摘出して、がんを徹底的にたたくために抗がん剤もやりましょう」という感じでしたね。それが終わったらホルモン療法を行うという流れでした。実は、乳がんと告知された時点で、「自分の闘病記を笑えるエッセイにして世に出そう」と考えていたんです。励まされるよりも励ます方が楽だな……って。だから、治療内容をきちんと理解することよりも、「次に乳がんになる女性を支えられるよう、医師の説明をどうかみ砕いて面白く書くか」ばかりを考えていました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
ミワユータさん
「がんは寝ていても治らない」と思って、とにかく活動的に過ごしていました。自分にとってバンドが一番大事なので、「早く切除して、早く復帰したい」という思いだけで動いていましたね。乳がんになる前よりも、もっとハングリーで前向きになったと思います。発症前から決めていた通り、抗がん剤でスキンヘッドになって左胸がなくなった写真を友人の写真家に撮ってもらい、それもガンガン発信していました。ライブもコロナが落ち着いたタイミングで、スキンヘッドのままやりました。日常的な変化を挙げるなら、胸があったときは似合わなかったシャツが似合うようになったくらいですね。今の自分の体、気に入っていますよ。“オッドアイ”ならぬ“オッドパイ”と呼んでいて、グッズを作ったりしています。
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
ミワユータさん
私は、以前からAmebaで「笑える乳がん闘病記を」(https://ameblo.jp/beth8-yuta/entry-12738957338.html)というブログを書いていて。この闘病記をいつか書籍化し、脚本家の宮藤官九郎さんに映画化してもらい、われわれのバンドElizabeth.eightが主題歌を担当することが目標なんです。映画って、がんが出てくると急にシリアスになって悲しい展開になるじゃないですか。でも、実際には元気になっている人もいるし、病気になったからといって必ずしも不幸というわけじゃありません。だからコメディーにして、闘病中の女性がちょっとクスッと笑えるつくりにしたいなと思っています。その映像を見て、「怖い」「悲しい」ってイメージに陥る前に、もっと気軽に検査を受けてもらえたら最高ですよね。大げさかもしれないけど、誰か一人でも救えたらうれしいし、「タダで転びたくない」って精神が自分の中にあるんですよ(笑)。「最高の名医は自分のメンタルだよ」ってよく言っていますが、ワクワクする目標を持って、病院に行った日はおいしいスイーツを食べて、自分にごほうびをあげることも忘れずに暮らしています。
ライブ最前列は乳がんサバイバー

編集部
現在の体調や生活について教えてください。
ミワユータさん
乳がんに関しては、数カ月置きに注射薬リュープリン(リュープロレリン)による治療を受けています。私の場合は、腕よりおなかに打つほうが痛みが少なかったですね。あとは、ノルバデックス(タモキシフェン)を毎朝飲んでいます。乳がんとはセットみたいな感じで、婦人科にも定期的に検査に行っています。前よりはちょっと健康に気を付けるようになったかな……と。でも、普通に打ち上げで朝方帰ることもあるし、あんまり変わっていないかもしれません(笑)。薬を飲み忘れないように、メンバーが1回分ずつ持ってくれるので、すごくありがたいですね。
編集部
もし昔の自分に声を掛けられたら、どんな助言をしますか?
ミワユータさん
あんた、ラッキーだね。乳がんになったこのタイミングで、どれだけの人があんたのことを考えてくれているかを知ることになるよ。そのことに心から感謝しないと駄目。あんたが受けた恩や愛を、今の私が音楽と創作によって全力で返していくから、安心して治療しなさい……。ただ、病室でお菓子を食べ過ぎたせいで、がんで入院していたのに退院したら2kg太っていたことだけは、許さないからね!
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
ミワユータさん
全身麻酔から覚めた時、とにかく頭痛がひどくて。胸の傷は痛くないのに、頭がとにかく痛かったんですよ。でも頭痛薬は飲めないということで、かなりしんどかったですね。そんな時に看護師さんが「気分だけでも変われば」と冷えたタオルで手足を拭いてくれたんです……。あれは本当に泣けました。だから医療従事者に望むことなんか、これ以上ありません。皆さん、本当に私の心に寄り添ってくれました。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
ミワユータさん
近ごろは、ブログを読んだ女性たちがたくさんライブに通うようになってくれて、気が付いたらライブの最前列が全員乳がんサバイバーだった、なんてこともあります(笑)。闘病中にメンバーやファンのみんなにたくさん助けてもらった分、今度は私が誰かを助ける番だと思っています。不安になって検索して、さらに不安になる――。これって“闘病者あるある”ですよね。だから私は、不安になってほかの情報を検索する暇もないくらい、ブログを頻繁に更新しています。ブログでもライブでもいいので、乳がんサバイバーの「ミワユータ」に会いに来てください!
編集後記
今もバンド活動を続けながら、ブログで笑える闘病記を発信し、多くの乳がんサバイバーに勇気を届けているミワユータさん。病気をきっかけに得た愛と支えを音楽と創作で返す彼女の姿勢に、心を打たれる人も多いのではないでしょうか。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。




