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【闘病】『大腸がん』になって後悔。もしも「1年早く検査をしていれば…」

 公開日:2025/12/19
【闘病】『大腸がん』になって後悔 もし「1年早く検査をしていれば…」

年々増加する大腸がん。マリンさん(仮称)も職場の健康診断がきっかけで発覚した、その内の一人です。愛犬の看病や別れと重なり、なかなか治療に前向きになれなかったマリンさんに、職場復帰できるまでの回復に至った経験を語ってもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年5月取材。

マリンさん

体験者プロフィール
マリン(仮称)

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神戸市在住の1969年生まれ。犬2匹と暮らしている。診断時も現在も大学職員として働いている。2024年に大腸がんを発症。同年10月にがんと診断され、11月に最初の手術、12月に2回目の手術を受ける。今年の1月から仕事に復帰。現在は3カ月に1度、病院で検査を受けている。

小出 紀正

記事監修医師
小出 紀正(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

職場の先輩から背中を押され検査をすると…

職場の先輩から背中を押され検査をすると…

編集部編集部

はじめにマリンさんの現在の体調はいかがですか?

マリンさんマリンさん

元気です。術後4カ月間くらいは腹部の膨満感がひどかったですが、最近は落ち着いてきました。周りにも病み上がりとは思えないほど色艶がいいと言われます。元気な分、よく食べるので太ってきたのが悩みです。

編集部編集部

マリンさんが大腸がんの件で、病院を受診されたきっかけは何でしたか?

マリンさんマリンさん

症状としては、血便が続いていました。その後、職場の健康診断の便潜血検査で要精密検査になりましたが、そのとき愛犬が亡くなったことも重なり、病院へ行くのを迷っていました。そんなとき、職場の先輩に「さっさと検査行って!」と強く背中を押され、やっと近所のクリニックを受診しました。あのお叱りがなかったら、受診しなかったかもしれません。

編集部編集部

クリニックでの診断時、医師からはどのような説明がありましたか?

マリンさんマリンさん

最初のクリニックでは「ポリープが13個ほどあり、7つは切除したが、大きいものは外科的な処置になる。残りのうち2つはおそらく『がん』でしょう。病院を紹介するので、どこにするか急いで決めてください」と言われました。

編集部編集部

次の病院ではどのような治療をしましたか?

マリンさんマリンさん

11月に消化器内科にて内視鏡でS状結腸のがんを切除。病理検査の結果粘膜を超えていたので、12月は外科でその部分と横行結腸の手術を受けました。同時手術で2カ所をそれぞれ切ってつなぐので、思ったより大がかりな手術になりました。腹腔鏡手術だったので、その後の回復は早かったです。

編集部編集部

病気になった原因や、生活での注意点はありますか?

マリンさんマリンさん

私の場合はポリープの多発タイプで、ほぼ体質と遺伝と言われました。家族歴があったので、もう少し危機感を持って定期的に検査をするべきでした。あと1年早く検査していれば、少なくとも内視鏡手術だけで済んでいたかもしれない、もしかしたらがんの手前で済んでいたかもしれないと後悔しています。

頑張る気持ちを生んだ温かい対応

頑張る気持ちを生んだ温かい対応

編集部編集部

治療には前向きになれましたか?

マリンさんマリンさん

正直、最初は全く前向きになれませんでした。最愛の愛犬との別れで、眠れない毎日が続く中での病気の発覚だったので、「死んだらルピちゃん(愛犬)に会えるんじゃないか」「でも会えなかったら…」と心が揺れていました。大腸の検査や治療の前準備では、大量の下剤を無理やり飲んでは吐いてしまっての繰り返しで、とにかくつらくて苦しかったです。家にはもう一匹(当時)13歳のシニア犬がいるのですが、その子を見送るところまで生きられればいいかなと思っていました。

編集部編集部

周りの反応はどうでしたか?

マリンさんマリンさん

大腸がんになったことで、自分は人に本当に恵まれていることを改めて感じました。職場からは「仕事なんて三の次、四の次でいい。とにかく必要なだけいくらでも休んでいいから」などと本当に温かい言葉をかけてもらい、優しさが身に沁みました。

編集部編集部

入院中の様子をお聞かせください。

マリンさんマリンさん

消化器外科の先生は毎朝必ず様子を確認しに来てくれました。また、消化器内科の先生は、外科に移ってからも様子を見に来て励ましてくれました。一人ひとりの患者を真剣に見てくれているのだと思うと、私も元気になって、少しでも喜んでもらいたいという気持ちになりました。

編集部編集部

医師たちの温かい対応で前向きになれたのですね。

マリンさんマリンさん

ほかにも、毎日リハビリの指導をしてくれたPT(理学療法士)さんから「今までずっと走り続けてきたのだという気がします。今が休むときです」と言われ、立ち止まることを知らなかった自分に気づかされました。私は「病気になってよかった」と言えるほど器の大きい人間ではないけれど、それでもこの出来事に意味はあったと感じます。

編集部編集部

大腸がんと診断後、心境に変化はありましたか?

マリンさんマリンさん

健康な人と自分の間に薄い膜みたいなものを感じるようになりました。がんの人とがんじゃない人の境界線というか、何か別世界に置かれているような気持ちになり「この人たちはがんじゃないんだよな」と考えると少し惨めでした。一方で、担当してくれた医師たちには「今、このタイミングで見つかって本当にラッキーだ」「よくぞ、病院に来てくれた」と言われ、「そうなのか、私は運がいいのか」と思ってみたり、しかし万が一を考えて海洋散骨の資料を取り寄せてみたり、自分でも何がしたいのかよくわからない、まさに「複雑な心境」でした。

明日が来ることは当たり前ではない

明日が来ることは当たり前ではない

編集部編集部

病気になって学んだことなどあれば教えてください。

マリンさんマリンさん

今日が終われば明日が来ると当たり前のように信じていましたが、病気に限らず、明日が来ることは当たり前ではないのだと実感しました。病気は誰でもなる。だからこそ、定期的に検査を受けて進行する前に対処する。「ならないだろう」ではなく、「なるかもしれない」というマインドセッティングが大切だと学びました。

編集部編集部

普段の生活で気をつけていることはありますか?

マリンさんマリンさん

腸に負担をかけないように「一度に30回噛みなさい」と主治医に言われています。もともと体に悪い生活はしていなかったので、発症後も特に生活スタイルは変わりません。あえて言えば、疲れて免疫を下げることがないように残業は控えめにしています。そして、定期検査だけは言われた日に必ず受けています。

編集部編集部

治療するうえでのマリンさんの原動力は何でしょうか?

マリンさんマリンさん

治療中、ふと保護犬の里親募集サイトを開いたところ、最初に見た写真が亡くなった愛犬ルピアにそっくりで一瞬息をのみました。「犬は自分が生きている間、幸せに暮らした飼い主のところに次の子を連れてくる」という言葉を思い出しました。2回目の入院の数日前で手術が成功するかもわからないので悩みましたが、急いで保護主さんに連絡を取り、入院前日に会いに行きました。そこからは、早く元気になってこの子を迎えに行きたいという一心で、手術翌日から一生懸命リハビリに励みました。幸い合併症も起こさず予定通り2週間で退院でき、その翌日から今日までずっと一緒に暮らしています。今思えば、私を心配したルピアが与えてくれた子だったのかもしれません。

編集部編集部

お母さまの存在も心の支えとなったようですね。

マリンさんマリンさん

はい。不器用で普段あまり気持ちを表現しない母が、電話で「ずっとそばにいるから大丈夫よ」と言ってくれたときには深い愛情を感じました。手術前に母に会いに実家へ帰ったのですが、神戸に戻る日にお弁当を作って持たせてくれました。母は手があまり動かず、握力がないので、うまくおにぎりを握れないのですが、一生懸命作ってくれました(写真)。その写真を病室に飾って、毎日それを見ながら自分を励ましていました。やはり母親は偉大です。普段連絡を取らない姉も頻繁に連絡をくれて、家族ってすごいなと感じました。

お弁当

編集部編集部

今後の目標などあれば教えてください。

マリンさんマリンさん

病気の面では、完治と言われる5年を無事にクリアすることです。毎日一生懸命仕事をして、職場にも恩返しをしたいです。プライベートでは、以前大学で講師をしていたので、そのときからの書きかけの論文を研究仲間の先生と共著で仕上げること、絵本を一冊自費出版することです。文章は完成しているのですが、イメージに合う挿絵を描いてくれる人が見つかっていないので探しています。

編集部編集部

医療従事者に期待することはありますか?

マリンさんマリンさん

私は本当に人に恵まれていて、出会った医師や看護師さん、PTさんも素敵な人たちばかりでした。みんな優しくて一生懸命で大好きな病院でした。医療に携わるというのは、責任が重く心身共にハードで大変な仕事ですが変わらずにいてほしいです。そして、自分の生活も大切にして、幸せでいてほしいですね。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

マリンさんマリンさん

大切な存在がいるのであれば、まずは自分が元気でいないと守ってあげることはできません。また、「もしも」のときには残された人が困らないように、十分な準備をしてあげてください。自分がこの世界に存在しなくなることを想像するのは容易ではありませんが、目をそらして後悔するより真っ直ぐに向き合って考えたほうがよいと思います。 病気と闘うことが「善」のような空気感がありますが、闘いたくない人もきっといます。本人が望む治療方針を受け止めてあげることが重要だと感じます。

編集部まとめ

「もう少し早く検査をしていれば…」と、マリンさんが言うように、1日でも早い病気の発見がその後の生活に大きな影響を及ぼします。特に大腸がんのような症状が出にくい病気は、定期的な検診が大切です。そして、マリンさんの経験談から、周りの対応がいかに闘病者に影響するのかということも学ばせてもらいました。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師