【闘病】閉経前の“不正出血”と思っていたら「卵巣がん」と「子宮体がん」になっていた…

かずこさん(仮称)は、1年ほど不正出血を経験し、その後大量出血で病院を受診したところ、子宮体がんと卵巣がんが判明しました。女性特有の疾患である子宮体がん、卵巣がんは初期症状が不正出血のみで、多くの人が見過ごしやすい疾患です。かずこさんの話から、子宮体がん、卵巣がんの初期症状を知り、定期検診や婦人科受診の重要性を理解していきましょう。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年3月取材。

体験者プロフィール:
かずこ(仮称)
50代女性。2023年ごろから不正出血を発症した。更年期も重なっていたため、「生理が終わるころなのだろう」と思い、放置してしていたところ、2024年の3月に大量出血が始まった。生活にも支障が出たために産婦人科で検査をおこなったところ、検査結果が出る前にすぐ大きい病院へ向かうよう紹介状が出された。その後、4月より検査が続き、子宮体がんおよび卵巣がんと診断され、4月末に手術となった。さらに、6回の抗がん剤治療をし、現在も経過観察中。
日常の忙しさで病気の落ち込みを避けられた

編集部
最初に、かずこさんの闘病経験を通して、読者に最も伝えたいことは何ですか?
かずこさん
いろいろありますが、一番は「自己判断は危ない」ということです。インターネットでもSNSでも、情報を調べるときは自分に都合のよい情報を無意識に集めてしまうものです。自分はがんだと思いたくない心理から、自然とそうなってしまいます。ですから、誰が発信しているかわからない情報を鵜呑みにするのではなく、「おかしい」と思ったら病院へ行くことが大事です。そして、女性の場合、婦人科系はどうしても敬遠しがちですが、とにかくまずは病院へ行くことが大事だと伝えたいです。
編集部
ではかずこさんの子宮体がん、卵巣がんが判明した経緯について教えてください。
かずこさん
2023年ごろから不正出血が始まり、それから長く続いていたことが始まりです。50代に入り、「生理の終わりごろなんだろう」と思い、1年ほど放置していました。しかし、2024年3月ごろから大量に出血しだしたので、産婦人科で検査をしてもらったところ、「すぐに大きい病院へ行くように」と紹介状を受取りました。
編集部
紹介先の病院で判明したということですか?
かずこさん
紹介先の病院でも、改めて検査をしてもらうことになりました。そして、内診をおこなったところ、先生から「これは手術になります」と説明があり、検査を一通り終えたうえで、子宮体がんと卵巣がんが疑われるとの診断を受けました。
編集部
病気が判明したときの心境についても教えていただけますか?
かずこさん
病院を紹介されてから、手術の日程があっという間に決まり、検査も立て続けだったため、忙しくて何かを考える余裕はありませんでした。仕事も忙しいうえに、子どもの高校入学も重なり、とにかく考える暇がなく、検査をこなしてその合間に高校の準備や入学式を終わらせることができました。その点では、自分の病気のことで思い悩む暇がなく、深く落ち込んで塞ぎこんだり、何も手につかなくなったりすることがなかったのは幸いでした。
治療が始まったら「自分の体ファースト」を意識した

編集部
医師からはどのように治療を進めると説明があったのでしょうか?
かずこさん
子宮体がんと卵巣がんがあると言われたのですが、「子宮体がんよりも、病状としては腹膜播種があるため卵巣がんの方が心配な状態である」と説明がありました。手術後にすぐに切除部分を病理検査に出し、そこから治療方法を決めると説明されました。手術のあと退院前に説明があり、抗がん剤治療も6回行うとのことでした。
編集部
それだけ忙しく過ごしていたということは、日常生活では変化はなかったのでしょうか?
かずこさん
自分の中に変化はありませんでしたが、周囲にがんであることを明かしてからは、検診を受けた方がよいと伝えていきました。先述の通り、日常生活はいろいろなことが重なっていたこともあり、よい意味で大きな変化はありませんでした。
編集部
がん治療で手術や抗がん剤の投与など、大変なことも多かったかと思います。かずこさんが治療中の心の支えにしていたことは何でしょうか?
かずこさん
治療を受けると私の体は思いのほか回復が早かったので、そこからは「とにかく自分の体のことだけ考えていこう」と決め、それが支えになっていました。あとは入院中に同室で仲良くなった人が2人いまして、その人たちと病気のこと、家族のこと、これからのことを話せたことが支えとなりました。同じ境遇の人だからこそ自分を飾ることなく、本音で話せたことが大きかったです。
「更年期だから」と自己判断するのはよくない

編集部
かずこさん自身の経験を通して、健康についてあまり意識せず過ごしている人に助言するとしたら、何を伝えたいですか?
かずこさん
少しでも普段と違う症状、違和感があったら検診することが大事だと言いたいです。女性の場合は特に更年期と重なりいろいろな症状が出る中で、更年期だからと自己判断しがちだと思います。私自身も不正出血があっても、年齢のせいだと思い込んでいたためです。周りの人に聞いて自分の症状と同じだと納得して安心してしまう気持ちもわかりますが、人の身体は本当に一人ひとり違うので、必ず受診をしてほしいです。
編集部
かずこさんが今後、医療従事者に期待すること、希望することはありますか?
かずこさん
医療従事者は多くの患者を診ているわけですから、とても忙しそうにされています。そして、どうしても忙しそうな様子を見ていると、自分のことで不安があっても、時間を取らせるのが申し訳なく思い、質問しづらいときがありました。ですから、伝えづらい人が不安なことを文章で伝えることができれば、簡潔に伝えられるとともに、医療従事者も時間を見つけて読みやすいのではないかと思いました。言葉で伝えるとついついまとまりがなくなり、だらだらと長くなってしまいますから、患者の気持ちや不安を理解するために何か対策を打っていただけることを期待しています。
編集部
ありがとうございます。最後に、本記事の読者向けにメッセージをお願いできますか?
かずこさん
私は体力にも自信があり、今まで大きな病気もしたことがなかったので、本当に自分の健康を過信していました。今回の病気と治療を経験し、体力と体の変化はまったく別のものだと改めて感じました。日本人はがんに罹患する人が増えている一方で、検診率がとても低いと言われています。私もその中の1人でしたので、せめて記事の読者さんには、少しでも早くから検診の大切さを考えるようになってくれればと思います。今はネットでいろいろな情報を集められますが、体は一人ひとり違い、あやふやな情報を鵜呑みにして自己判断するのは危険だと身をもってわかりました。2人に1人はがんになる時代と言われる中で、大半の人はなぜか「自分だけはなるわけない」と思い、調べるときもそこを避けて情報を集めています。「私もなるかも」という意識が大切です。意識が少し変わるだけでも、検診に行く気になると思います。
【婦人科腫瘍専門医の一言】
がんの早期発見に有効とされているがん検診は大きく5つのみです。胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、そして子宮頸がん検診です。子宮体がんや卵巣がんを早期に発見するための確立した検診はありません。まずは上記5つをきちんと受けていただくことが勧められます
編集部まとめ
今回は子宮体がん、卵巣がんを経験し、経過観察中の「かずこ」さんの体験を紹介しました。子宮体がんと卵巣がんは併発することがやや多く、解剖生理学の観点から転移もしやすい関係にあります。初期症状は不正出血であることが多く、つい軽視してしまいがちな病気でもあります。少しでも違和感やいつもと違う症状があったときは、早めに病院を受診したり、検診・人間ドックを受けたりするなど、早期発見を意識しましょう。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
鈴木 幸雄(神奈川県立がんセンター/横浜市立大学医学部産婦人科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。



