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「おやつを健康的に食べる」これって本当にできる? 医師が教える賢い間食と分食のススメ

 公開日:2025/07/29
「おやつを健康的に食べる」これって本当にできる? 医師が教える賢い間食と分食のススメ

間食やおやつに対して、「太る」「健康に悪い」といったイメージを抱いている方は少なくないでしょう。しかし、じつは選び方や食べるタイミングを工夫することで、健康維持や栄養補給に役立つことがわかっています。そこで今回は、日本糖尿病学会専門医の廣田先生に「おやつとの上手な付き合い方」や「健康的に楽しむコツ」について詳しく伺いました。砂糖やカロリーとの向き合い方、分食の考え方、そして意外と見落としがちな飲み物の落とし穴まで、健康的に間食を楽しむための役立つ情報が満載です。

廣田 尚紀

監修医師
廣田 尚紀(医師)

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糖尿病内科医・産業医として東京を中心に活動しながら、栄養学の研究を行っている。医学部卒業後は東京慈恵会医科大学、東京女子医科大学などの複数の病院で勤務、東京大学大学院研究員(研究分野は栄養疫学)などを経て現職。東邦大学医学部医学科卒業・東京女子医科大学大学院卒業。糖尿病専門医/認定内科医/総合内科専門医/博士(医学)/糖尿病認定医/日本医師会 認定産業医/成育医療研究センター共同研究員など。

「おやつ=悪」ではない!量と質がカギ

「おやつ=悪」ではない!量と質がカギ

編集部編集部

おやつや間食をよく食べるのですが、健康や血糖値に悪いものなのでしょうか?

廣田 尚紀先生廣田先生

いわゆる「おやつ」や「間食」は、一概に健康に悪いと考える必要はありません。量や内容に気をつけながら楽しむ分には、むしろ健康にプラスになる場合もあります。しかし、食べ方や量などに気をつけないと、もちろんマイナスになります。

編集部編集部

なるほど。おやつが悪者のように思われがちなのはなぜでしょうか?

廣田 尚紀先生廣田先生

さまざまな理由がありますが、主にはカロリー(エネルギー)や特定の栄養素の摂りすぎ、食事のバランスの乱れなどが問題になることが多いと思います。カロリーを摂りすぎると、当然ですが肥満のリスクが高くなります。

編集部編集部

おやつはどうしても砂糖が多く含まれているイメージがあります。

廣田 尚紀先生廣田先生

そうですね。お菓子類などには摂りすぎると健康が心配な栄養素も入りがちです。代表的なのは砂糖ですね。そのため、食品のラベルや栄養成分表示を確認して、どんな栄養素が含まれているか見る習慣をつけると良いと思います。

編集部編集部

お菓子を食べることで食事のバランスにも影響が出るのでしょうか?

廣田 尚紀先生廣田先生

はい。たとえば「夕飯の直前にポテトチップスを食べすぎてしまって、夕飯を残してしまう」ということもあります。このように、おやつを食べることで食事量が減ってしまうと、食事のバランスも崩れてしまいます。

食べすぎを防ぐポイントは“分食”

食べすぎを防ぐポイントは“分食”

編集部編集部

健康的におやつを摂取するポイントについて教えてください。

廣田 尚紀先生廣田先生

まずは「量と質」が健康にとって重要です。食事に含まれるカロリーが多すぎると体重が増え、いつも摂りすぎていると肥満の原因になります。おやつだけでなく、普段の食事でカロリーを摂りすぎている場合もよくあります。また、普段の食事が少なすぎることでおやつを多く食べてしまう方もいます。

編集部編集部

自分の摂取カロリーがわかる目安などはありますか?

廣田 尚紀先生廣田先生

なんらかの体重が減るような病気などがなければ、体重は摂っているカロリーの量に直接的に影響を受けます。目安としてはBMI(体重(kg)÷[身長(m)の2乗])で判断できます。もちろん痩せすぎも問題で、18~49歳の方ならばBMI18.5、50~65歳の方ならBMI20を下回っていたら、ふだんの食事のカロリーが少なめだと考えられます。血糖値が気になる方も、体重のコントロールはとても重要です。

編集部編集部

食べすぎを防ぐためにはどうすればいいのでしょうか?

廣田 尚紀先生廣田先生

1日あたりのカロリーの量が適正で1日の食事のバランスを保てるなら、おやつは「分食」の役割を果たします。たとえば昼食にサンドイッチを4切れ食べていた人が、2切れをランチ、2切れを3時のおやつにするような場合ですね。食事の質と量がそのままで食べる回数だけ分ける。これが分食です。これならば、1日の食事の量も質も崩れないですよね。

編集部編集部

分食は血糖値にも関係しますか?

廣田 尚紀先生廣田先生

分食は血糖値のコントロールにも効果的です。血糖値を厳密にコントロールする必要がある方には、医師が分食を勧めることもあります。ただし、治療中の病気がある場合は注意しないといけない場合もあるので、主治医と相談してください。

甘い飲み物はカロリー過多に要注意

甘い飲み物はカロリー過多に要注意

編集部編集部

おやつに適している食品についても教えてください。

廣田 尚紀先生廣田先生

自分が不足している栄養を含む食品」がおすすめです。例えば、果物は日本人全体で摂取が不足しがちな食品で、摂取量が増えれば病気が減ることが期待できます。冷凍フルーツやカットフルーツ、バナナ、みかんは手軽でおすすめです。バナナやみかんは皮が剥きやすくて便利ですよね。不足しがちな食品を摂ることで、健康にはプラスになります。

編集部編集部

サラダや野菜スティックなどもおやつになるのでしょうか?

廣田 尚紀先生廣田先生

良いと思います。ただし、野菜ジュースは野菜の代わりにはなりませんので注意してください。食品を野菜としてカウントしてよいかどうか判断に迷う場合は管理栄養士に相談してください。

編集部編集部

飲みものについてはいかがでしょうか?

廣田 尚紀先生廣田先生

おやつとして特に注意が必要なのは「甘くてカロリーの多い飲み物」です。これは意外と幅広くて、清涼飲料水やジュース、スポーツドリンク、野菜ジュース、エナジードリンク、乳酸菌飲料、甘い缶コーヒーなどが該当します。こういったものをいつも飲んでいる人は要注意です。

編集部編集部

野菜ジュースも入るのですか?

廣田 尚紀先生廣田先生

意外ですよね。甘い飲み物は飲んでも満腹感がないうえにカロリーを含むため、摂りすぎると体重が増えやすいのです。WHOも、糖類は1日のカロリーのうちの5~10%に抑えるよう勧めています。1日あたり2000kcal摂っている人ならば100~200kcalくらいですね。

編集部編集部

糖尿病にも影響があるのですか?

廣田 尚紀先生廣田先生

はい。日頃から甘い飲み物を多く摂っていると2型糖尿病になりやすいことが明らかになっています。すでに糖尿病がある方は、甘い飲み物が血糖値を上げる原因になります。また、人工甘味料については賛否はありますが、私は「アリ」だと思っています。少なくとも糖類を含む飲み物よりは健康への負の影響は圧倒的に少ないと思います。

編集部編集部

結論として、おやつを食べることは問題ないのですね。

廣田 尚紀先生廣田先生

その通りです。量と質に気をつければ健康的に楽しむことができます。理想形は「分食」ですね。日本人の4割以上の方が、なんらかのおやつ・間食をしているとも言われており、忙しくて空腹をおやつで凌ぐ方も多いと思います。私も忙しいときはコンビニのイートインスペースで唐揚げだけ食べて、あとでおにぎりとサラダとバナナを食べるというようなこともあります。これも分食です。

編集部まとめ

「おやつ=体に悪い」というイメージは、もう古いかもしれません。大切なのは“量”と“質”。上手に選べば、栄養補給や血糖値の安定にも繋がります。特に、忙しい現代人におすすめなのが「分食」という考え方。小分けにして食べることで、ドカ食いを防ぎ、健康維持に役立ちます。おやつを「敵」にするのではなく、「味方」につける工夫こそが、健康的で楽しい食生活を送る秘訣だと改めて感じました。

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