「マーガリン・ショートニングは健康に悪い」これってウソ? ホント?【医師監修】

巷で囁かれる「マーガリンは体に悪い」「ショートニングは危険」という話。実際のところ、何が問題視されているのかご存じでしょうか? 過剰に恐れる必要はないのか、それとも注意が必要なのか。気になっている方も多いと思います。今回、マーガリンとショートニングの基本から悪者扱いされる背景、そして日本における現状について、日本糖尿病学会専門医の廣田先生に詳しく伺いました。
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監修医師:
廣田 尚紀(医師)
マーガリン・ショートニングは本当に健康に悪いのか

編集部
「マーガリンは体に悪い」「ショートニングは危険らしい」という話をよく耳にするのですが、本当なのでしょうか?
廣田先生
たしかに、そういうイメージを持っている方は多いですね。でも実際のところはどうなのか、「何が問題なのか」「どんな成分が含まれているのか」、そして「日本ではどうなのか」という点を整理しておくとよいと思います。
編集部
そもそもマーガリンやショートニングは、どんなものなのですか?
廣田先生
マーガリンは、植物性の油を主な原料にしてつくられる、バターのような見た目と使い方ができる食品です。バターは牛乳由来の動物性脂肪を使いますが、マーガリンは主に植物油からできています。
編集部
じゃあショートニングはどうなのでしょう?
廣田先生
ショートニングも同じく、主に植物油を加工してつくられた油脂です。パンやお菓子によく使われていて、焼き菓子の生地を“ほろっ”とくずれるような食感にすることから、その名がついています。
編集部
では、マーガリンやショートニングが「体に悪い」と言われる理由について教えてください。
廣田先生
マーガリンやショートニングが悪者扱いされてきた背景には、「トランス脂肪酸」の存在があります。トランス脂肪酸は脂質の一種で、不飽和脂肪酸に水素を添加して人工的に固める過程で生じる副産物です。
トランス脂肪酸とは? 摂取量を意識するべきなのか

編集部
「トランス脂肪酸を摂りすぎると健康に悪い」というのはよく聞きます。
廣田先生
そのとおりです。トランス脂肪酸はLDLコレステロール(悪玉)を増やし、HDLコレステロール(善玉)を減らすとされています。特に欧米では、心臓病のリスクを高める要因として問題視され、アメリカやカナダ、ヨーロッパの一部では厳しい規制が設けられています。
編集部
日本ではどうなのでしょう? 同じくらい危ないと考えるべきですか?
廣田先生
※参考:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
編集部
では、日本人の摂取量としては問題ないレベルなのでしょうか?
廣田先生
※参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
編集部
「気にしすぎる必要はない」という感じですね。
廣田先生
しかし、全く問題ないとも言いきれません。「トランス脂肪酸が入っていても大丈夫」と楽観的になりすぎるのもよくありません。実際、食事のガイドラインでも「影響は小さいが、さらに減らす努力は必要」と明記されています。
編集部
たしかに、菓子パンやケーキなど、市販品の中にはマーガリンやショートニングがたっぷり使われているものもありますよね。
廣田先生
そうですね。そういった食品を毎日たくさん食べているような場合は、やはり注意が必要です。たとえ平均的には摂取量が少なくても、個人の食習慣によってはリスクが高くなることもあります。
過度に意識しすぎず、バランスのいい食事を

編集部
結論として、「マーガリンやショートニングはやめたほうがいい」というわけではないのでしょうか?
廣田先生
そうですね。マーガリンやショートニングが悪者というわけでありません。重要なのは量です。最近では「トランス脂肪酸ゼロ」と表示されている商品も増えているので、気になる方はそのようなものを選ぶとよいでしょう
編集部
やっぱり大事なのは、「何をどれだけ食べるか」ということですね。
廣田先生
まさにそのとおりです。特定の食品だけを悪者にするのではなく、食生活全体のバランスを見直すことが大切です。
編集部
マーガリンやショートニングとうまく付き合いながら、食生活を楽しんでいく姿勢が大事なのですね。
廣田先生
はい。食品表示をチェックしたり、トランス脂肪酸の少ない製品を選んだりするなど、ちょっとした工夫を重ねることで、自然と健康を守ることができますよ。
編集部まとめ
マーガリンとショートニングが「体に悪い」と言われる背景には、製造過程で生成されるトランス脂肪酸の存在があるとのことでした。欧米では心臓病リスクとの関連から規制が進んでいますが、日本では摂取量が少なく、過度に心配する必要はないとされています。ただし、市販品に多く含まれる場合もあり油断は禁物。特定の食品を悪者にするのではなく、食品表示を確認しバランスの取れた食生活を心がけましょう。






