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見栄晴「咽頭がんステージ4」からの生還。命を懸けた100日間の壮絶闘病とは(2/2ページ)

 公開日:2025/08/28
見栄晴「咽頭がんステージ4」からの生還。命を懸けた100日間の壮絶闘病とは

見栄晴「咽頭がんステージ4」の現実。味覚を失った闘病の全貌を語る

見栄晴「咽頭がんステージ4」の現実。味覚を失った闘病の全貌を語る

端山軍先生朝蔭先生

見栄晴さんが実際に受けられた治療について教えてください。

見栄晴さん見栄晴さん

私は声を失いたくないという強い思いから、手術ではなく抗がん剤と放射線の併用療法を選びました。抗がん剤は注射だと思っていたのですが、実際は点滴でおこなうと知り驚きました。利尿剤や吐き気止めも一緒に点滴し、尿の量まで毎回記録が必要でした。診断から仕事に復帰するまでの期間はちょうど100日間でした。

端山軍先生朝蔭先生

具体的には、どのようなスケジュールで治療をされたのでしょうか?

見栄晴さん見栄晴さん

抗がん剤は7週間の治療期間中に1週目、4週目、7週目の計3クールおこない、放射線は平日毎日、合計35回受けました。入院中は点滴の影響で体重が6kgほど増え、治療が終わる頃には元に戻るという増減を繰り返しました。

端山軍先生朝蔭先生

見栄晴さんがおこなった治療は、現在でも一般的におこなわれる標準的な治療方法の一つです。咽頭がんの治療は大きく分けて手術、抗がん剤と放射線の二つがあります。手術は完治の可能性が高い一方で、発声機能を失うデメリットもあります。

見栄晴さん見栄晴さん

やはり治療方法にはメリットとデメリットがあるのですね。

端山軍先生朝蔭先生

そうですね。早期であれば内視鏡で粘膜を剥ぎ取る治療も可能です。がんが進行すると頸部食道を含めて切除が必要になり、小腸を移植する大きな手術になることもあります。抗がん剤と放射線による治療では副作用はありましたか?

見栄晴さん見栄晴さん

抗がん剤治療は想像していたほど辛くなく、吐き気もほとんどありませんでした。髪の毛が多少抜けるという副作用はありましたが、大きな苦痛は感じませんでした。

端山軍先生朝蔭先生

そうなのですね。放射線治療ではいかがでしたか?

見栄晴さん見栄晴さん

放射線治療の副作用は強かったです。喉の乾燥や首の腫れ、口内炎、味覚がなくなるといった症状が出ました。

端山軍先生朝蔭先生

そのような副作用は現在も後遺症として残っているのでしょうか?

見栄晴さん見栄晴さん

現在は味覚も8割ほど回復しましたが、当時は本当に落ち込みました。寿司を食べても醤油の味が全く分からず、甘味だけ感じる状態でした。味覚を失ったことが一番辛かったですね。放射線を当てる前にはむし歯が疑われる歯を4本抜き、歯磨きの方法まで指導を受けて口腔内を傷つけないよう注意しました。

端山軍先生朝蔭先生

見栄晴さんと同じように、副作用や後遺症に悩まれる方は少なくありません。ですが、抗がん剤の副作用については直近10年ほどで大きな進歩があります。特に抗がん剤治療の際に併用される吐き気止めの効果が高まり、以前のように強い吐き気に苦しむ方は少なくなりました。

見栄晴さん見栄晴さん

副作用の感じ方は人それぞれ違うのですね。

端山軍先生朝蔭先生

その通りです。放射線治療では口内の乾燥や粘膜炎、皮膚炎、喉の浮腫が起こりやすく、声帯にも必ず照射が当たるため、声の変化が見られることもあります。放射線治療の副作用や後遺症は共通とは言えず、体質による影響が大きいと考えられています。治療中の心境や不安との向き合い方について教えていただけますか?

見栄晴さん見栄晴さん

放射線科の先生や看護師さんをはじめ、多くの医療スタッフがチームで支えてくれました。看護師さんに言われたことはすべて実行し、治療の合間には小さな楽しみを見つけて前向きに取り組みました。それが精神的な支えになったと思います。

端山軍先生朝蔭先生

大変心強い環境で治療をおこなうことができたのですね。副作用や後遺症と同じく、治療後の経過や再発のリスクについても患者さんが大きな不安を抱える部分です。

見栄晴さん見栄晴さん

私の場合、再発や転移はない状態が続いていますが、咽頭がんの5年生存率や転移について詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。

端山軍先生朝蔭先生

咽頭がんは首のリンパ節や肺、骨に転移しやすく、食道がんを併発することもあります。5年生存率はステージ1で80〜90%、ステージ2で70〜80%、ステージ3で60%前後、ステージ4で40〜50%ほどです。ステージ4は幅が広いのですが、見栄晴さんの場合はステージ3に近い段階で発見できたため、現在の良好な経過につながっていると考えられます。現在の生活ではどんなことを心がけていますか?

見栄晴さん見栄晴さん

医師からのアドバイスを忠実に守り、大好きだったアルコールは控えています。元気すぎて逆に不安になることもありますが、もう過去には戻りたくないという思いが強いです。闘病中はがんを治すという目標しかありませんでしたが、今は日々の生活を大切にしています。

端山軍先生朝蔭先生

がんの早期発見と予防はとても大切です。1ヵ月以上違和感が続く場合は必ず受診してください。最近は胃カメラ検査で無症状の咽頭がんを見つけられる医師も増えています。また、中咽頭がんはHPVワクチンによる予防が可能です。

見栄晴さん見栄晴さん

早期発見、早期治療がとても大切なのですね。

端山軍先生朝蔭先生

はい。定期的な検診に加えて、日頃から生活習慣を見直すことが、がんだけでなく、さまざまな病気の予防につながります。

見栄晴さん見栄晴さん

本日のお話を聞いて、一番は病気にならないために予防をしてほしいと思いました。そして少しでも違和感があれば検査を受けてほしいです。もし診断されてしまったとしても、目標を持って治療に臨んでほしいと思います。治るか治らないか関係なくとにかく前向きに頑張ることが大切だとお伝えしたいです。

編集部まとめ

見栄晴さんの体験から、下咽頭がんの恐ろしさと同時に早期発見・早期治療の重要性を実感しました。喉の違和感は些細な症状に思えたとしても、命に関わる病気のサインである可能性があります。飲酒や喫煙の習慣を持つ方は特に注意が必要であり、定期的な検査や生活習慣の見直しが欠かせません。見栄晴さんの前向きな姿勢は、同じ病気と向き合う方々に勇気を与えられるはずです。本記事が皆さまにとって健康について考える一助となれば幸いです。

この記事の監修医師