「透析シャント」とは? 種類や手術から『むくみ』や『腫れ』など異常のサイン【医師解説】

透析治療を受ける上で欠かせない要素が「シャント」と呼ばれる血管の通り道です。名前は聞いたことがあっても、どんな役割があり、どんな手術をするのか、日常管理で何に気を付けるのかは意外と知られていません。そこで、シャントの基礎から日常管理におけるポイントまで、東京中野血管外科クリニック院長の笹嶋先生に解説してもらいました。
※2026年3月取材。

監修医師:
笹嶋 寛史(東京中野血管外科クリニック)
透析シャントとは?

編集部
「透析シャント」とは何ですか?
笹嶋先生
透析シャントとは、血液透析を安全・効率的に行うために、腕の動脈と静脈をつなぎ合わせて作る血管の通り道のことです。透析では短時間で大量の血液を体外に循環させる必要がありますが、通常の静脈は細く血流も弱いため、必要な血液量が足りません。そこで、手術によって手首付近の「動脈」と「静脈」をつなぎ合わせ、勢いがある動脈の血液を直接静脈に流れ込ませる通路を作ります。こうした血管のことを「シャント(自己血管内シャント)」と呼びます。
編集部
なぜわざわざ「動脈」と「静脈」をつなぐ必要があるのでしょうか?
笹嶋先生
静脈を成長させるためです。動脈は皮膚の深いところにあり、また血管の壁が厚いため、透析の太い針を刺すには適していません。一方、静脈は皮膚のすぐ下にあり刺しやすい反面、血流が不十分です。そこで、お互いのデメリットをカバーするため、腕の動脈と静脈をつないで静脈に血液がたくさん流れるようにします。これにより静脈が太く成長し、透析の際に針を刺しやすくなる上に、必要な大量の血液を安定して取り出すことが可能になります。
編集部
シャントには、いくつか種類があるのでしょうか?
笹嶋先生
はい、大きく分けて「自己血管内シャント(AVF)」と「人工血管内シャント(AVG)」の2種類あります。通常は自分の血管をつなぐ自己血管内シャントが第一選択となりますが、血管が細かったり動脈硬化が進んでいたりして自分の血管が使えない場合は、人工の管を埋め込む人工血管内シャントを作成します。
編集部
それぞれ特徴があるのですか?
笹嶋先生
はい。人工血管は手術後早くから使えるメリットがあるものの、自己血管に比べると感染症や血管の詰まり(血栓)が起きやすい傾向にあります。ただ、どちらの方法も一度作ったからといって一生使えるものではありません。血液の流れが悪くなることで、詰まりやこぶが発生することもあります。血管には限りがあるため、むやみに作り直しができません。そのため、患者さんの血管の状態や生活スタイルを考慮し、刺しやすく長持ちする方法を提案する必要があるのです。
編集部
シャントはいつ作るのでしょうか?
笹嶋先生
腎機能が高度に低下し、将来的に透析導入が見込まれる段階で計画的に作成します。透析開始直前では血管が成熟せず使用できないことがあるため、通常は余裕を持って透析開始の1~3カ月前を目安に手術を行います。また、シャントを作ったからといってすぐに透析を導入するわけではありません。
シャント手術とは? どのような流れで行うのか?

編集部
シャント手術は、どのように行われますか?
笹嶋先生
多くは局所麻酔で行い、前腕に小さな切開を加えて動脈と静脈を縫い合わせます。一般的な手術時間は40~90分程度で、日帰りまたは短期入院で行われます。体への負担は比較的少なく、安心して受けられる手術といえるでしょう。
編集部
手術前には、どのような検査をしますか?
笹嶋先生
血管エコー検査で血管の太さや位置を確認します。血管が細すぎる場合や動脈硬化が進んでいる場合には、つなぐのに適切な部位を慎重に選びます。また、全身状態や感染の有無も確認します。シャントの良好な発達と長持ちには、丁寧な事前評価が欠かせません。
編集部
手術後の経過について教えてください。
笹嶋先生
傷口が落ち着くまで数日間は保護が必要です。術後は軽い腫れや違和感が出ることがあり、通常は数日で落ち着きます。手術後は、つないだ血管に血液がしっかり流れているかを確認します。シャントがきちんと機能していると、「ザーッ、ザーッ」という血流音や振動(スリル)を体感できます。
編集部
合併症のリスクはありますか?
笹嶋先生
むくみ、感染、血栓、狭窄(きょうさく)、血流不足などが起こる可能性があります。またまれに「スチール症候群」が起こることもあります。スチール症候群は、シャントに血流が取られ過ぎて指先への血流が減少し、末端まで酸素や栄養が届かなくなることで起こる虚血性の合併症です。主な症状として、指の冷感、しびれ、蒼白、痛みなどが表れます。異常があれば早めに医療機関を受診しましょう。
管理のポイントと注意点

編集部
シャントを長持ちさせるためのポイントは何ですか?
笹嶋先生
毎日シャント部を観察し、振動や血流音があるか確認することが大切です。シャントがある方の腕で血圧測定をしたり採血をしたりする、強く圧迫する、重い荷物を腕にかける、腕枕をして寝る、きつい腕時計や袖口の締まった服を着用することは避けましょう。シャントは非常にデリケートなため、わずかな圧迫でも血流が滞り、血管が詰まる原因になります。日常のちょっとした注意が、シャントトラブルの予防につながります。
編集部
注意すべき異常のサインはありますか?
笹嶋先生
振動が弱くなった、音が消えた、痛みがある、急に腫れた、赤く熱を持つなどの変化があった場合は要注意です。また、透析時に血流が確保できない場合も異常のサインであり、狭窄や血栓の可能性があるため、早期対応が必要です。異変を感じたら速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
編集部
シャントの日常管理で、ほかに気を付けることを教えてください。
笹嶋先生
皮膚を常に清潔に保つことが重要です。透析前には必ずシャント側の腕をせっけんで優しく洗いましょう。特に透析当日は、医師の指示に従い穿刺(せんし)部位を濡らさないようにしてください。
編集部
感染症にも気を付ける必要があるのですね。
笹嶋先生
はい。もしシャント周辺が赤く腫れたり、熱を持ったり、うみが出たりした場合は、感染の疑いがあります。感染はシャントを壊す原因になるだけでなく、細菌が全身に回るリスクにもなるため、「ただの虫刺されかな?」と自己判断せず、早めに受診するようにしましょう。
編集部
定期的に通院は必要ですか?
笹嶋先生
シャントを良好に保つには、定期的なチェックが必要です。透析を受けているクリニックで超音波検査を実施していない場合は、専門の医療機関を受診して検査を受けてください。通常は3カ月に1回、特にトラブルがなく透析を継続できている人は半年に1回、スムーズに流れているかを確認してもらいましょう。
編集部
読者へのメッセージをお願いします。
笹嶋先生
シャントは透析治療を支える大切な血管の通り道ですが、体質や血管の状態によっては長く使えないこともあります。流れが悪くなる、狭くなる、詰まるといったトラブルが起こることもあるため、違和感や変化があったら早めに医師へ相談することが大切です。また、シャント手術の痛みの感じ方や手術方法は医療機関によって異なる場合があります。痛みへの不安がある人や手術について気になることがある人は、血管外科などの専門医に相談してみましょう。
編集部まとめ
シャントは透析を続けるために欠かせない血管ルートです。異常を感じたときに早めに相談することが、トラブルの悪化を防ぐポイントになります。手術や痛みへの不安がある場合は、早めに下肢静脈瘤を専門とする医療機関に相談しましょう。
医院情報

| 所在地 | 東京都中野区中野3丁目37-9 ウエストインビル3・4階 |
| 診療科目 | 血管外科 |
| 診療時間 | 午前:月~土 9:00~12:00 午後:月~金 14:00~17:00 |
| 休診日 | 日曜 |



