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「おしっこの切れが悪い」原因は『前立腺肥大症』? 必要な検査とは【医師監修】

 公開日:2026/04/28
「おしっこの切れが悪い」原因は『前立腺肥大症』? 必要な検査とは【医師監修】

おしっこの勢いが弱い、出し切れない感じがするなどの変化は、年齢とともに多くの人が経験します。原因として考えられるのが前立腺肥大症です。自己判断せずに受診すると何が分かるのか……。受診の目安や検査の流れを、きたじま腎泌尿器科クリニック 世田谷烏山院院長の北島先生に教えてもらいました。

※2026年3月取材。

北島 和樹

監修医師
北島 和樹(きたじま腎泌尿器科クリニック 世田谷烏山院)

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2005年、聖マリアンナ医科大学医学部卒業。2011年、聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科修了。その後、聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科助教、虎の門病院分院腎センター外科医長、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院主任医長、北里大学医学部泌尿器科学教室診療講師などを務める。2024年、東京都世田谷区に「きたじま腎泌尿器科クリニック世田谷烏山院」を開院。医学博士。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本臨床腎移植学会専門医、日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会施設基準医。日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会、日本泌尿器腫瘍学会、腎移植・血管外科研究会、腎癌研究会の各会員。

おしっこの切れが悪くなるってどういうこと? その原因は?

おしっこの切れが悪くなるってどういうこと? その原因は?

編集部

「おしっこの切れが悪い」とは、どのような状態を指すのでしょうか?

北島 和樹先生北島先生

おしっこの切れが悪いとは、排尿後に尿が残っている感じがしたり、尿が出終わるまでに時間がかかったり、最後にポタポタと尿が続いたりする状態を指します。以前より排尿がスムーズでなくなったと感じる場合に変化に気付くことが多いですね。年齢とともに起こりやすい症状ですが、単なる老化現象と決めつけず、背景に病気が隠れていないか確認することが大切です。

編集部

排尿の違和感は、なぜ起こるのでしょうか?

北島 和樹先生北島先生

主な原因として、尿の通り道である尿道が何らかの理由で狭くなる点が挙げられます。前立腺の肥大による圧迫が代表的であり、加齢に伴う骨盤底筋の衰え、尿を押し出す力の低下、膀胱(ぼうこう)の収縮力低下、神経の働きの変化などが影響することもあります。加えて、過度な飲酒や刺激物の摂取、肥満や高血圧などとの関係も指摘できます。

編集部

前立腺肥大症以外の病気も考えられますか?

北島 和樹先生北島先生

はい、前立腺肥大症以外にも、前立腺炎や尿道狭窄(きょうさく)、神経疾患、糖尿病などが原因となることがあります。また、服用している薬の影響で排尿障害が起こることもあります。症状だけでは原因を特定できないため、検査による見極めが重要です。

編集部

放置すると、どうなりますか?

北島 和樹先生北島先生

前立腺肥大症を放置すると、膀胱に尿が残りやすくなり、尿路感染症の原因になります。また、尿の流れが悪い状態が続くと腎臓に圧が掛かり、腎機能低下や腎不全につながることもあります。さらに、排尿のたびに膀胱へ負担が掛かり、膀胱の柔軟性が低下して容量が減少してしまいます。初めは尿の勢いが弱い程度でも、進行すると尿をためられず失禁を起こすこともあります。失禁などの進行を防ぐためにも、「おしっこの切れが悪くなったな」と思ったら、早めの治療介入が必要です。

前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症とは?

編集部

前立腺肥大症とは、どのような病気なのでしょうか?

北島 和樹先生北島先生

前立腺肥大症は、前立腺が加齢とともに大きくなり、尿道を圧迫することで排尿障害を引き起こす病気です。前立腺は尿道を取り囲んでいる男性のみが持つ臓器で、大きさは通常クルミ大(約20mL)ほど。前立腺液を作ったり、排尿をコントロールしたりする役割を担っています。前立腺が大きくなる疾患が前立腺肥大症であり、50代以降に増え、年齢とともに有病率が高くなります。尿の勢いが弱い、切れが悪い、残尿感、夜間頻尿などが代表的な症状です。

編集部

前立腺が大きくなるのは、なぜですか?

北島 和樹先生北島先生

原因は完全には解明されていないものの、男性ホルモンの影響や加齢による変化が関与していると考えられています。前立腺は年齢とともに徐々に肥大しやすくなり、尿道が圧迫されて排尿トラブルが生じます。ただし、前立腺の大きさと症状の強さは必ずしも一致しません。

編集部

「前立腺がん」と「前立腺肥大」は違う病気ですか?

北島 和樹先生北島先生

前立腺肥大症は良性の病気で、前立腺がんとは別の疾患です。ただし、症状が似ており、併発する可能性もあるため、症状だけで判断するのは非常に危険です。前立腺肥大症と診断された場合でも、がんの可能性を除外するための検査が行われることがあります。

編集部

どの段階で治療が必要になりますか?

北島 和樹先生北島先生

前提として前立腺肥大症は緊急性の高い病気ではありません。治療する場合は、排尿トラブルを改善し、日常生活を快適にすることを目的とします。治療を行う際は利点とリスクの両面を理解した上で、総合的に判断することが重要です。この病気は緊急性が高くない一方、年齢とともに徐々に進行するため、治療を先送りにすると体力の低下や膀胱機能の悪化が進み、手術が難しくなったり、期待した効果が得られにくくなったりすることもあります。良い結果を目指すためにも、適切な時期を逃さず治療を検討する姿勢を大切にしましょう。

どんな検査をするのか?

どんな検査をするのか?

編集部

前立腺肥大症が疑われる場合、どのような検査を行いますか?

北島 和樹先生北島先生

まずは問診を行い、患者さん自身に尿の勢いや回数を点数化して評価してもらいます。その後、尿検査で感染や血尿の有無を調べ、超音波検査で前立腺の大きさや形、残尿量を確認します。どれも比較的、体にとって負担の少ない検査です。

編集部

血液検査は行いますか?

北島 和樹先生北島先生

はい、必要に応じて前立腺特異抗原(PSA)という血液検査を行います。PSA検査は前立腺がんの可能性を調べるための検査で、前立腺肥大症と前立腺がんの鑑別に役立ちます。数値が高い場合は、前立腺がんが疑われるので、がんの精査が優先されます。

編集部

ほかに行う検査はありますか?

北島 和樹先生北島先生

特殊なセンサーが付いたトイレ型の装置に、普段通りに用を足してもらうだけの尿流測定(ウロフロメトリー)検査を行うこともあります。この検査では尿の勢い、量、排尿にかかった時間をグラフ化することで、尿道の詰まり具合を客観的に数値化できます。また、前立腺肥大症の手術を検討する際には、外傷や尿道カテーテルを留置したことなどがきっかけで、尿道狭窄を起こして尿切れになっていないかを直接確認するために、膀胱鏡検査を行うことがあります。正確に診断し、適切な治療へつなげるためには、複数の検査が必要になることもあります。

編集部

検査後は、どのように治療方針が決まりますか?

北島 和樹先生北島先生

前立腺肥大症の治療には、薬物療法と手術療法があります。薬物療法は主に症状を和らげることを目的とし、前立腺そのものを大きく縮小させる効果は限定的です。一方、手術療法は肥大した前立腺を物理的に小さくする根治を目指す治療です。近年は低侵襲治療(MIST)が普及し、体への負担が軽減されたことで、これまで内服治療を選んでいた人でも手術を検討するケースが増えています。治療のタイミングと治療の内容については主治医とよく相談し、メリットやデメリットを考慮した上で、適切な治療法を選択するようにしましょう。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

北島 和樹先生北島先生

前立腺肥大症は、排尿という毎日の行為に関わる身近な疾患であるが故に、「年齢のせい」と考え、内科を受診するだけで済ませている人も少なくありません。しかし、専門の泌尿器科を受診することで、より正確な評価と適切な治療が可能になります。また、新しい治療法を選択できる医療機関を受診することにより、状態に適した治療を受けやすくなります。排尿の悩みが1〜2カ月続く場合は、早めに日本泌尿器科学会泌尿器科専門医へ相談してください。

編集部まとめ

排尿の悩みは「年齢のせい」と見過ごされがちですが、我慢を続けることで症状が進むこともあります。泌尿器科を専門とする医師に相談すれば、状態に合った治療法を知ることが可能です。気になる症状が続く場合は、早めの受診を心掛けましょう。

医院情報

きたじま腎泌尿器科クリニック 世田谷烏山院

きたじま腎泌尿器科クリニック 世田谷烏山院
所在地 東京都世田谷区南烏山5丁目17-9 フルーヴベール烏山2F
診療科目 泌尿器科
診療時間 月火水金:9:00~12:30 / 14:00~17:30
土:9:00~13:00
休診日 木・日・祝

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