『前立腺肥大症』手術はどう選ぶ? MISTやレーザーの違い【医師解説】

前立腺肥大症の治療には、薬物療法だけでなく、体への負担を抑えたMIST(低侵襲治療)やレーザー手術など、さまざまな手術法があります。それぞれ効果や適応、メリット・デメリットは異なり、症状や年齢、生活背景に応じた選択が重要です。そこで、手術の種類と選び方のポイントについて、きたじま腎泌尿器科クリニック 世田谷烏山院院長の北島先生に教えてもらいました。
※2026年3月取材。

監修医師:
北島 和樹(きたじま腎泌尿器科クリニック 世田谷烏山院)
前立腺肥大症手術の種類は?

編集部
前立腺肥大症には、どのような手術がありますか?
北島先生
前立腺肥大症の手術には、従来から行われている経尿道的前立腺切除術(TURP)、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)をはじめとしたレーザーを用いた手術、そして体への負担を抑えた低侵襲治療(MIST)があります。近年は症状や前立腺の大きさ、年齢、全身状態および生活状況に応じて選択肢が広がっています。
編集部
従来の手術(TURP)の特徴について教えてください。
北島先生
TURPは、尿道から内視鏡を入れて肥大した前立腺を切除する標準的な手術です。一方で、出血量が比較的多く、術後尿失禁症や射精障害を起こしやすいというデメリットがあります。手術時間は1時間~1時間半程度で、入院期間は数日~1週間程度必要です。
編集部
レーザー手術には、どのような種類がありますか?
北島先生
レーザー手術はTURPと違って、ほとんど出血をさせずに前立腺を蒸散したり、くり抜いたりする手術です。HoLEPをはじめ、さまざまな方法が存在し、いずれも出血のリスクが少ないので抗凝固薬を使用している患者さんでも対応しやすい場合があります。また、術後の回復が比較的早く、入院期間が短い点もメリットといえます。ただし比較的難しい手術のため、執刀する医師によって治療効果のバラつきが大きい手術の一つでもあります。また、TURPと同様に術後尿失禁症や射精障害を合併することもあります。
編集部
具体的にどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
北島先生
レーザー手術の手術時間は約2時間です。入院が必要になるケースが多く、4日~1週間程度の入院が必要となります。
編集部
MISTについても教えてください。
北島先生
MISTは、前立腺を大きく切除せずに、熱や機械的作用で尿道の圧迫を軽減する治療法です。具体的には肥大した前立腺を専用のインプラントで吊り上げて尿道を広げる「経尿道的前立腺吊り上げ術(Urolift)」や、蒸気で組織を熱して壊死(えし)させる「経尿道的水蒸気治療(WAVE)」があります。短時間(約5~20分)の手術で身体への負担が少なく、日帰りや短期入院で行える点が特徴です。低侵襲性が「手術を受けるというハードル」を大幅に下げ、内服治療だけでは十分な改善が見込めない場合でも、症状の軽減が期待できます。
手術の選び方は? MISTやレーザー手術の違いとは?

編集部
どのように手術方法を選ぶのでしょうか?
北島先生
前立腺肥大症の治療は、まず入院手術を希望するかどうか、そして前立腺の大きさによって選択肢が変わります。できるだけ入院をしたくない人や仕事が忙しくて入院できない人には、MISTが第一選択になります。ただし、前立腺体積が非常に大きい高度肥大の場合、MISTでは対応が難しいこともあります。高度肥大のケースではレーザー手術を選択します。
編集部
前立腺の体積がそれほど大きくない場合は、何が選ばれるのでしょうか?
北島先生
体への負担が少ないMISTを選ぶことが多い傾向にあります。前立腺の体積が30mL以下のケースではUrolift、30~80mL程度ではWAVEの適応となるのが一般的です。
編集部
MISTとレーザー手術の違いについて教えてください。
北島先生
繰り返しになりますが、MISTは短時間手術のため手術による体への負担が非常に少ないことが最大の特徴です。そのため術後の回復が早く、多くの場合、術直後から通常の生活への復帰が見込めます。治療効果は術後3カ月かけてゆっくりと出ていきます。ただし、一部の前立腺が極めて大きいケースでは効果が限定的な場合があります。一方、レーザー手術は出血が少なく、術後早期からの症状改善が見込めます。手術時間は約2時間を要するため、入院し術後の療養が必要となります。
編集部
両方の特徴を考えて、術式を選択することが必要なのですね。
北島先生
そうですね。前立腺肥大症治療が先行している米国では現在、体への負担が少ないMISTを日帰りで行うケースがほとんどで、日本でも同様の傾向になりつつあります。今後はますますMISTの件数が増えるのではないかと予想されます。
編集部
再発の可能性は治療法で変わるのでしょうか?
北島先生
従来のTURPと比べると、現在の治療は全体として再発リスクが抑えられています。ただし、MISTの中でもUroliftは、留置したワイヤーの脇から前立腺が再び大きくなることがあり、再発率はやや高めです。一方、WAVEは熱で前立腺細胞を壊死させるため、再発率が比較的低く、レーザー治療に近い症状の改善が期待できます。米国の報告によると、前立腺肥大再発に対する手術は、手術侵襲の低さからWAVE手術を選択される症例が多い傾向にあるようです。
前立腺肥大症の手術で気を付けること

編集部
手術前に気を付けるべきことはありますか?
北島先生
治療前に、症状の程度や生活への影響を正確に医師へ伝えることが大切です。現在の服薬状況や持病を伝えた上で、手術に関して十分な説明を受け、メリットとリスクを理解することが重要です。
編集部
WAVE手術をするタイミングは、いつがよいのでしょうか?
北島先生
前立腺肥大症に対するWAVEの施行時期は、薬物療法で症状改善が不十分な場合や、頻尿・夜間頻尿・尿勢低下などにより生活の質が低下しているときが適しています。さらに尿閉(尿が出なくなる)や繰り返す尿路感染、残尿感(尿が残った感覚)の増加を認める場合には早期介入が望まれます。重症化する前の段階で検討することが重要です。
編集部
術後に注意すべき点はありますか?
北島先生
術後は一時的に排尿時の違和感や頻尿が出ることがあります。多くは時間とともに改善するものの、発熱や強い痛みがある場合は早めの受診が必要です。医師の指示に従い、無理をしない生活を心掛けましょう。
編集部
手術をしたら薬が不要になるのでしょうか?
北島先生
手術後も、症状や状態によっては薬物療法を併用することがあります。手術をすれば必ず薬が不要になるとは限らないため、主治医としっかり話し合い、治療のゴールを事前に確認しておくことが大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
北島先生
前立腺肥大症の手術は近年、急速に進歩しており、特にWAVEは2022年に保険適用となった新しい治療です。その一方、日本では日帰り手術がまだ十分に定着しておらず、本人や家族が不安を感じることも少なくありません。当院でも日帰り手術を希望する患者さんが安心して治療を受けられる環境を整えるべく、2026年3月から在宅訪問看護師と連携し、術後をサポートする在宅看護体制をスタートさせました。医療機関によって対応は異なるため、手術を検討する際は在宅支援の有無や緊急時の連絡体制などを事前に確認しておくことが大切です。安心して治療を受けられるかどうかを含めて、慎重に選択してください。
編集部まとめ
日帰り手術は体への負担が少ない一方、術後の過ごし方に不安を感じる人も少なくありません。大切なのは、治療法そのものだけでなく、術後のフォロー体制や緊急時の対応を確認すること。安心して任せられる環境かどうかを見極め、納得した上で治療法を選択しましょう。
医院情報

| 所在地 | 東京都世田谷区南烏山5丁目17-9 フルーヴベール烏山2F |
| 診療科目 | 泌尿器科 |
| 診療時間 | 月火水金:9:00~12:30 / 14:00~17:30 土:9:00~13:00 |
| 休診日 | 木・日・祝 |




