『乳がん』リスクが高い人の特徴は何? 検診で分かる要因と対策【医師監修】

乳がんは誰にでも起こり得る病気ですが、実はリスクが高い人にはいくつかの共通点があります。年齢や体質だけでなく、検診で初めて分かるリスク要因も少なくありません。そこで、検診結果の見方と注意点を、登戸ブレストケアクリニックの土屋先生に解説してもらいました。
※2026年2月取材。

監修医師:
土屋 聖子(登戸ブレストケアクリニック)
乳がんリスクが高い人とは?

編集部
乳がんになりやすい人には、どのような特徴がありますか?
土屋先生
乳がんになる可能性は誰にでもありますが、特に乳がんの発症リスクとの関連が確実といわれているのは、血縁者に乳がん患者がいる人と、初潮が早く閉経が遅い人、出産・授乳経験がないか初産年齢が高い人です。これは、乳がんの発生・増殖には女性ホルモンが関係しており、エストロゲンにさらされる期間が長いほど、乳がんになるリスクが高くなるからです。加えて、閉経後の肥満、飲酒習慣、喫煙、糖尿病などもリスクを高める要因とされています。一方で、運動は乳がんの発症リスクを下げることがほぼ確実といわれています。
編集部
年齢によって発症率は変わるのでしょうか?
土屋先生
乳がんは日本人女性が最も多くかかるがんで、30代後半から増え始め、40代後半〜60代に発症のピークがあります。よって40〜60代の乳がん検診は特に大事になります。ただし、20代〜30代前半の若年層でも発症することがあるため、「若いから大丈夫」とは言い切れません。自身の年齢に合わせて乳房と向き合い、乳がん検診を受けることが重要です。
編集部
遺伝との関係について教えてください。
土屋先生
生まれつき特定の遺伝子に変異があることで発症する乳がんを「遺伝性乳がん」と呼びます。しかし、乳がん全体のうち、遺伝が明らかに関与しているのは5〜10%程度とされており、ほとんどの乳がんは遺伝と直接的な関係はありません。多くの場合、環境や生活習慣、ホルモンの影響などが複合的に関与して発症します。家族に乳がんの人がいるからといって必ずしも発症するわけではないので、過度に心配しすぎる必要はありません。ただし、母親や姉妹など近い血縁者に乳がんの人がいる場合や、若くして乳がんを発症した家族がいる場合はリスクが高くなります。該当する人は、若いうちからリスクを意識した行動が大切です。
編集部
男性でも乳がんになることはありますか?
土屋先生
非常にまれですが、男性も乳がんになる可能性があります。最も多いサインは「乳房のしこり」であり、乳頭からの分泌物や痛みを伴うこともあります。気になる症状があれば、性別に関係なく早めの受診が大切です。
編集部
男性に乳房や乳頭の異常を感じたら、何科を受診すればよいでしょうか?
土屋先生
まずは乳腺外科に相談してほしいと思います。実際、「乳房が膨らんできた気がする」「コリっとしたものがある」などの理由で受診する男性も少なくありません。
検診ではどんなリスクを見つけることができる?

編集部
乳がん検診では、どんなことが分かりますか?
土屋先生
検診では乳がんを見つけるだけでなく、自分の乳腺の状態を知ることができます。例えば乳腺が多く、マンモグラフィで白い部分が多く写る「高濃度乳腺」と呼ばれるタイプの人は、マンモグラフィだけでは病変が見えにくい傾向があります。そのため、超音波検査の併用が乳がんの早期発見に効果的といわれています。このように、自身の乳腺の特徴を理解することも、検診の大きな意義の一つです。
編集部
なぜ高濃度乳腺の場合、病変が見えにくいのでしょうか?
土屋先生
マンモグラフィでは病変も白く写り、見つけなければならないしこりが正常乳腺に隠れてしまうからです。高濃度乳腺は若い女性に多いとされていますが、日本人女性の場合は中年以降の人にもよく見られます。高濃度乳腺自体は病気ではありませんが、乳がんの発症リスクが少し上がるといわれているため、定期的に超音波検査を受けることはとても大切です。
編集部
超音波検査では、どのような情報が得られますか?
土屋先生
しこりの有無や形状、内部の性状などを詳しく確認できます。超音波検査は、高濃度乳腺の人でも病変を見つけやすい検査ですが、マンモグラフィと違って微細な石灰化の発見が難しい、検査に時間がかかるといったデメリットがあります。そのためマンモグラフィと組み合わせることで、より精度の高いリスク評価が可能になります。
編集部
検診結果から、今後の注意点も分かるのでしょうか?
土屋先生
はい。検診結果を基に、次回検査までの適切な間隔や追加検査の必要性を判断できます。検査をする中で、「今すぐ異常はないものの、定期的な経過観察が望ましい」というケースも少なくありません。自分の乳房の特徴を把握し、長期的な視点で管理していくことが大切です。
検診を受ける際の注意点。頻度は? 検査方法は?

編集部
乳がん検診は、どのくらいの頻度で受けるのが理想ですか?
土屋先生
一般的に、40歳以上の人は2年に一度のマンモグラフィが勧められています。これは「2年に一度マンモグラフィを受けると、がんによる死亡率が下がる」という医学的な根拠があるからです。しかし、日本人女性を対象とした大規模研究で、マンモグラフィと超音波検査との併用により、より早期に乳がんが発見できることも分かっています。特に、乳がんは40代から増加し、とりわけ40代後半~60代にかけて多くなります。そのため、個人的には40歳になったら年に1回はマンモグラフィと超音波検査を併用して受けることをおすすめします。
編集部
30代の場合は、何をしたらよいでしょうか?
土屋先生
まずは一度マンモグラフィと超音波検査を受け、自身の乳腺の状態を知ることをおすすめします。家族歴などにより発症リスクは異なるため一概にはいえませんが、高濃度乳腺だと診断された場合、「マンモグラフィでの評価はまだ難しいタイミングだから超音波検査をメインに受ける」など、自身の状態に合わせて検診の内容を判断するとよいでしょう。
編集部
検診を受ける場合には、同じ病院で受けた方がよいのですか?
土屋先生
はい。同じ医療機関で検診を受けた方が時系列で変化を見てくれるため、異常に気付きやすいというメリットがあります。できるだけ、同じところで受けることをおすすめします。
編集部
検診を受けるタイミングで注意することはありますか?
土屋先生
いつ受けても特に問題はありません。生理前に胸にハリが出やすいという人は、その時期をずらすとマンモグラフィの際の痛みを少し減らすことができます。マンモグラフィ検査も超音波検査も病変の見え方に影響はないので、痛みがない時期を選んで検診を受けたらよいと思います。
編集部
検診結果をどう生かせばよいのでしょうか?
土屋先生
検診は「受けて終わり」ではなく、結果を理解し、次の行動につなげることが重要です。異常がなくても、次回の検査時期を把握し、生活習慣を見直しましょう。具体的には肥満、喫煙、飲酒は乳がんのリスクを高めるといわれているので、バランスの良い食事と適度な運動を取り入れるだけでも予防効果が期待できます。
編集部
そのほか、日常で気を付けることはありますか?
土屋先生
生活習慣の見直しと併せて行いたいのがセルフチェックです。お風呂に入る前など、日常的に鏡の前で左右差や皮膚のへこみ、乳頭の変化がないかを目で確認し、実際に触ってしこりや違和感がないかを確かめる癖をつけましょう。特に大事なのはセルフチェックのタイミングです。閉経前の人の場合、生理前や生理中は胸のハリが強く分かりにくいことがあるので、「生理が始まって10日後」または「生理が終わって3日後」など、乳腺が比較的柔らかい状態の乳房を繰り返し評価することで変化に気付きやすくなります。「いつもと違う」と感じたら検診時期を待たずに受診し、早期発見につなげましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
土屋先生
近年、「ブレスト・アウェアネス」という言葉を耳にする機会が増えました。これは日ごろから自分の乳房の状態に関心を持ち、意識して生活する習慣のことであり、日常的に「4つの行動」を意識することが推奨されています。まずは、自分の乳腺の状態を知ること。次に、定期的に見て、触れて、確かめること。そして、しこりや違和感などの変化に気付いたら早めに受診すること。最後に、変化がなくても定期的に検診を受けること。この4つの意識を持つことが、乳がんの早期発見・早期治療につながります。日々の小さな心掛けを忘れずに、乳がんの予防に努めてほしいと思います。
編集部まとめ
乳がんを予防するために必要な要素は、特別なことではなく、日常の延長として乳腺を気に掛ける姿勢です。まずは自分の体を知ることから始め、違和感を見逃さない意識を持ちたいですね。
医院情報

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