目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 「赤ちゃんの頭のゆがみ」は治すことができる? ヘルメット治療の適応・ベストな月齢を医師が解説

「赤ちゃんの頭のゆがみ」は治すことができる? ヘルメット治療の適応・ベストな月齢を医師が解説

 公開日:2026/02/28
「赤ちゃんの頭のゆがみ」は治すことができる? ヘルメット治療の適応・ベストな月齢を医師が解説

赤ちゃんの頭のゆがみが気になるとき、「ヘルメット治療」という選択肢があります。この治療は頭蓋骨の成長力を利用して形を整える方法で、生後4〜6カ月頃に開始すると高い効果が期待できるようです。しかし、全ての赤ちゃんに必要なわけではなく、ゆがみの程度や月齢によって適応が異なります。そこで今回は、ヘルメット治療の仕組みや適応基準、最適な開始時期、受診の目安、治療の実際から家庭でできるケアまで、お茶の水頭痛めまいクリニック院長の片桐彰久先生に詳しく解説していただきました。

※2025年12月取材。

片桐 彰久

監修医師
片桐 彰久(お茶の水頭痛めまいクリニック)

プロフィールをもっと見る
日本大学医学部卒業後、日本大学医学部附属板橋病院脳神経外科入局。同大学院にて脳血流に関する研究をおこない、医学博士を取得。埼玉県立小児医療センター脳神経外科、相模原協同病院、東京曳舟病院、板橋中央総合病院脳神経外科にて臨床に従事。板橋中央総合病院で小児頭蓋変形外来を開設した後、2023年「お茶の水頭痛・めまいクリニック」を開院、院長となる。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医・指導医、日本脳神経血管内治療学会専門医、日本頭痛学会専門医・指導医などの資格を有する。著書に「医師が教える 赤ちゃんのまぁるい頭の育て方」がある。

まず知っておきたい、頭のゆがみとヘルメット治療

まず知っておきたい、頭のゆがみとヘルメット治療

編集部

はじめに、赤ちゃんの頭のゆがみとは医学的にはどのような状態を指すのか教えてください。

片桐 彰久先生片桐先生

赤ちゃんの頭のゆがみとは、頭蓋骨の発達が均一に進まず、左右や前後で形に偏りが生じた状態をいいます。乳児期は頭蓋骨の縫合が柔らかく、外からの力を受けやすいため、寝かせる姿勢や向き癖などの影響が頭の形に反映されやすいことが特徴です。代表的なタイプには、後頭部が平らに見える絶壁と呼ばれる短頭症、後頭部の左右差が目立つ斜頭、早産などでNICU(新生児集中治療室)に数週間入院した赤ちゃんにみられやすい長頭症があります。偏りが強い場合には、専門的な評価が必要となります。

編集部

頭のゆがみがあると、赤ちゃんの成長や生活面にどのような影響が出るのでしょうか?

片桐 彰久先生片桐先生

軽度のゆがみであれば大きな問題が生じることは少ないですが、偏りが強くなると視線の向きが固定化し、向き癖がさらに定着することがあります。また、顔の左右差が目立つケースでは、額や頬、顎のラインに非対称が生じる傾向にあります。ゆがみが強い場合に考えられるリスクとしては、目の位置のずれ、視力の左右差、噛み合わせの乱れ、骨格のゆがみ、頭痛などが挙げられます。さらに、首の筋肉がかたくなる斜頸を伴う場合には、寝返りや首すわりなどの運動発達が遅れる可能性もあるため、早めの評価が重要です。こうした変化に気づいたときは、専門の医師に相談することで、生活習慣の改善で様子を見るのか、「ヘルメット治療」などの専門的なアプローチが必要なのかを判断でき、納得感と安心感を得ることができます。

編集部

ヘルメット治療はどのような仕組みで、どんな場合に検討する治療なのでしょうか?

片桐 彰久先生片桐先生

ヘルメット治療は、頭蓋骨の成長する力を利用して頭の形を整えていく治療です。専用のヘルメットで必要な部分にスペースを確保し、正しい方向への成長を促します。圧をかけて矯正する治療ではないため、赤ちゃんが痛みを感じることはありません。ヘルメット治療を検討するのは、中等度から重度の斜頭、あるいは絶壁(短頭)で、生活環境の工夫だけでは改善が乏しいケースです。特に生後4〜6カ月は頭の成長が大きい時期で、このタイミングを逃さず判断することが治療効果を高めるポイントになります。

編集部

ヘルメット治療をすることで発達が阻害されることはありますか?

片桐 彰久先生片桐先生

ヘルメット治療によって発達が阻害されることはありません。1歳半時点において、精神面・運動面の発達に遅れがみられないことも確認されており、専門の医師の管理のもとで適切におこなえば、成長への悪影響はないと考えられています。一方で、ヘルメット治療を受けた赤ちゃんの中には、まれに頭皮の皮膚炎や軽度の皮膚トラブルが生じることがありますが、多くは適切なケアや調整により一時的な症状として改善します。気になる変化があれば、早めに医師へ相談することで、大きな問題につながることはほとんどありません。

ヘルメット治療開始の時期と受診の目安を知る

ヘルメット治療開始の時期と受診の目安を知る

編集部

ヘルメット治療の適応となるゆがみのタイプや重症度を教えてください。

片桐 彰久先生片桐先生

適応となるのは、斜頭や絶壁といった明らかな形態変化があり、家庭での体位変換や向き癖の調整だけでは改善が難しい場合です。診察では、頭の前後径や左右径、耳の位置、顔の左右差などを詳細に評価し、ゆがみの程度を客観的に判断します。軽度の場合は経過観察で自然改善が期待できることもありますが、中等度以上で月齢が進んでいる場合は、治療が効果的に働く時期を逃さないよう早めの検討が必要です。

編集部

ヘルメット治療の適応とならないゆがみタイプや症例を教えてください。

片桐 彰久先生片桐先生

長頭症については、基本的にヘルメット治療の対象ではありません。長頭症は、早産やNICU管理などの影響で一時的にみられることが多く、成長とともに自然に改善する可能性が高いと考えられています。また、遺伝的な素因によって頭の一部の形が特徴的に出ている症例、いわゆるハチ張りなどの場合も、ヘルメットによる形状改善効果は期待できません。重要なのは、治療前に必ず鑑別診断をおこなうことです。鑑別をおこなわずにヘルメット治療を開始した場合、まれではありますが、本来は外科的治療が必要な頭蓋縫合早期癒合症を見逃してしまう可能性があります。この疾患では頭蓋の成長が制限され、結果として脳の発達を妨げるおそれもあります。そのため、ヘルメット治療を検討する前には、病気の可能性を含めた正確な診断が非常に重要です。

編集部

最適な治療開始時期(月齢)はいつですか? 開始が遅い場合の違いについて教えてください。

片桐 彰久先生片桐先生

最も効果が高いのは、首がすわった生後4〜6カ月頃です。この期間の中でも、より早期に開始した方が効果は得られやすいとされています。この時期は頭蓋骨の成長が盛んなため、ヘルメットによる誘導効果が高いためです。生後7カ月以降でも治療は可能ですが、成長速度が緩やかになるため改善の幅は小さくなる傾向があります。10〜12カ月を過ぎると頭の形が固定されてきたり、自分でヘルメットを外してしまったりすることもあり、治療が難しくなる場合があります。気になるゆがみがある場合は、早期に相談することが重要です。

編集部

どのようなタイミングで専門医の受診を検討するべきでしょうか?

片桐 彰久先生片桐先生

後頭部の左右差が目立つ、額や頬の位置がずれて見える、片側ばかり向く姿勢が続くといった場合は受診をおすすめします。生後3〜4カ月になっても向き癖が改善しない場合や、耳の位置に前後差がある場合も注意が必要です。

編集部

クリニック選びのポイントも教えてください。

片桐 彰久先生片桐先生

縫合早期癒合症などの病気を鑑別できる検査機器(レントゲン・CT)が整っていること、小児科専門医だけでなく、脳神経外科専門医が関わる体制があると安心です。ヘルメット治療の経験数が十分にある施設を選びましょう。オンライン診療では正確な評価が難しいため、直接診察を受けることをおすすめします。治療期間中に相談しやすいサポート体制があるかも確認しておくとよいでしょう。

治療の実際と日常生活でのケア

治療の実際と日常生活でのケア

編集部

初回の受診から治療終了までの流れを教えてください。

片桐 彰久先生片桐先生

初回診察では、頭蓋の形状や顔の左右差、首の可動域などを総合的に評価し、ヘルメット治療の適応を判断します。適応がある場合は、3Dスキャナーで頭の形を詳細に測定し、そのデータをもとにヘルメットを作製します。装着後は月に1回程度のフォローをおこない、成長に応じて内部パッドを調整しながら形を整えていきます。治療期間は3〜6カ月が目安で、赤ちゃんの負担を最小限に抑えながら安全に進めることを重視しています。

編集部

治療期間中の生活で注意すべきことはありますか?

片桐 彰久先生片桐先生

ヘルメットは1日23時間以上の装着が基本となるため、継続できる環境づくりが大切です。装着初期は皮膚が赤くなることがあるため、入浴後や着脱時に頭皮をこまめに観察します。また、夏場は汗がこもりやすいため、清潔を保つ工夫も必要ですね。ヘルメットがずれたり締め付け感があったりする場合は、無理に装着を続けず、必ず医療機関で調整を受けてください。家庭での観察と医療機関でのフォローを両立することで、治療を安全に進めることができます。

編集部

ヘルメット治療以外に家庭でできるケアについても教えてください。

片桐 彰久先生片桐先生

家庭でのケアでは、向き癖の改善が最も重要です。赤ちゃんがよく向く方向とは反対側におもちゃや光を置く、抱っこの向きを左右で変える、授乳姿勢を交互にするなど、日常の工夫が効果的です。また、起きている時間にタミータイムとして短時間のうつ伏せ遊びを取り入れることで、後頭部にかかる圧を減らし、首や体幹の発達を促すことができます。こうしたケアはヘルメット治療の補助としても有効で、改善のスピードを高める効果が期待できます。

編集部まとめ

ヘルメット治療は、赤ちゃんの頭のゆがみを改善する有効な選択肢の一つですが、全てのケースに必要な治療ではありません。大切なのは、月齢やゆがみの程度を正しく評価し、適切なタイミングで疾患の診断もできる専門の医師に相談することです。家庭でのケアと医療のサポートを組み合わせることで、よりよい経過が期待できます。本稿が、赤ちゃんの頭の形について悩む保護者の皆様にとって、安心して判断するための一助となりましたら幸いです。

医院情報

お茶の水頭痛めまいクリニック
所在地 東京都千代田区神田駿河台2-5 村田ビルディング7F
診療科目 脳神経外科・内科、眼科、耳鼻科
診療時間 午前: 月・水・木・金・土 9:30~13:30
午後: 月・水・木・金 14:30~18:30
   土 14:00~16:40
休診日 火・日・祝

この記事の監修医師

注目記事