首こり・肩こりが治らない…それ、“スマホ首”が原因かも? 脊椎外科医が正しい対策を解説

通勤中や休憩時間、寝る前など、気づけば一日中スマートフォンを見ているという方も多いのではないでしょうか。便利なデジタル機器ですが、長時間のうつむき姿勢は首に大きな負担をかけています。俗に「スマホ首」とも呼ばれる「テキストネック症候群」は、首の自然なカーブが失われる現代病です。首や肩のこりだけでなく、頭痛や手のしびれ、集中力の低下など、全身に影響が及ぶこともあり、放置すると日常生活にも支障をきたす可能性があります。本記事では、スマホ首の原因と症状、治療法、そして今日から実践できる予防のコツまで、New Spine クリニック東京総院長の石井賢先生に詳しく解説していただきました。

監修医師:
石井 賢(New Spineクリニック東京)
「スマホ首」ってどんな状態? 首や肩の痛み・姿勢との関係

編集部
はじめに、スマホ首とは医学的にはどのような状態を指すのか教えてください。
石井先生
スマホ首とは、長時間のうつむき姿勢によって首の自然なカーブ(頸椎の前弯)が失われ、まっすぐや逆のカーブ(頸椎の後弯)になった状態を指します。論文などでは「テキストネック症候群」と表現され、頭を支える首の筋肉に過度な負担がかかるのが特徴です。首や肩のこり、頭痛、手のしびれ、めまいなどを引き起こすこともあり、近年では若い世代にも増えています。
編集部
どのような姿勢や生活習慣が、スマホ首の原因になるのでしょうか?
石井先生
スマートフォンやパソコンを長時間使う際、画面をのぞき込むように首を前に出す姿勢が大きな原因です。重い頭を前方に傾けることで、首や背中の筋肉に強い負担がかかります。さらに、長時間のデスクワークや寝転んでスマートフォンを操作する習慣も悪化の要因になります。日常的にうつむく姿勢を取る人ほど、筋肉が固くなり症状が進行しやすくなるので注意しましょう。
編集部
スマホ首になると、首や肩の痛み以外にどのような症状が現れますか?
石井先生
首や肩の痛みのほか、頭痛や目の疲れ、手や腕のしびれ、集中力の低下などが見られることがあります。首の筋肉が硬くなることで血流が悪くなり、自律神経のバランスが乱れる場合もあります。また、姿勢の悪化が進むと猫背や巻き肩が定着し、見た目にも影響します。さらに進行すると常に頭が下がってしまう「首下がり症候群」になる可能性があります。慢性的な不調に変わる前に、早めのケアをおこなうことが大切です。
放っておくと悪化する? 治療とセルフケアの基本を知る

編集部
スマホ首は医療機関の受診が必要でしょうか? 放置するリスクについて教えてください。
石井先生
軽度の症状であれば生活習慣の見直しで改善することもありますが、痛みやしびれが長引く場合は医療機関の受診をおすすめします。放置すると首の関節や筋肉に慢性的な炎症が起こり、首の可動域が狭くなったり、神経症状が進行したりする恐れがあります。肩こりや頭痛だけでなく、腕のしびれや倦怠感が出た時点で、整形外科や脊椎外科に相談するのがおすすめです。
編集部
スマホ首の治療には、どのような方法がありますか?
石井先生
治療の基本は、首や背中の筋肉を柔らかく保ち、姿勢を改善することです。リハビリテーションやストレッチ指導のほか、痛みが強い場合には温熱療法や電気治療、神経ブロック注射をおこなうこともあります。私どもの施設では、唯一治療効果のあるシェアプログラムというリハビリテーションを開発して実施しています。重症例では頸椎の変形を伴うこともあり、MRIなどの画像検査で原因を正確に特定します。症状の程度に応じて、段階的に治療を進めていきます。
編集部
自宅でできるセルフケアやストレッチ、運動など改善する手段はありますか?
石井先生
自宅では、首や肩甲骨をゆっくり動かすストレッチが効果的です。例えば、背筋を伸ばして首を後ろに反らす、両肩をすくめて下ろす、肩甲骨を寄せるなどの簡単な運動を1日数回おこなうと良いでしょう。また、画面を目の高さに近づけ、首を前に出さない姿勢を心がけることも重要です。日常の小さな積み重ねが、症状の改善と再発予防につながります。
治療後のリハビリテーションと生活のポイント

編集部
スマホ首を防ぐために、スマートフォンやパソコンの使い方で気をつけるポイントはありますか?
石井先生
画面の位置を目の高さに合わせ、背筋を伸ばして見ることが大切です。スマートフォンを長時間下向きで操作すると、首に大きな負担がかかります。1時間に一度は休憩を取り、首を回したり肩を動かしたりして筋肉をほぐしましょう。また、寝転びながらのスマホ操作は姿勢を崩しやすく、首への負担が増えるため避けたほうが良いでしょう。
編集部
デスクワークや長時間の作業をする人が、普段から意識すべき姿勢のコツを教えてください。
石井先生
椅子に深く腰かけ、背もたれに背中をつけた姿勢を基本にしましょう。モニターは目線と水平、キーボードやマウスは肘が直角になる高さが理想です。足裏をしっかり床につけることで骨盤が安定し、背骨が自然なS字カーブを保ちやすくなります。肩をすくめたり、首を前に突き出したりしないように意識することが重要です。
編集部
スマホ首を繰り返さないために、日常生活で意識するべきことを教えてください。
石井先生
日常的に姿勢を整える習慣を持つことが、最大の予防策です。ストレッチや軽い運動で首や背中の筋肉を柔軟に保ち、筋力のバランスを整えましょう。睡眠環境も重要で、高すぎる枕は首の負担になるため、頭から背中が自然に並ぶ高さを選びます。症状が軽い段階で姿勢を見直すことで、慢性化や再発を防ぐことができます。
編集部まとめ
頭の重さは約5kgあり、それを前に傾けるだけで首には何倍もの負荷がかかると教えていただき、日常の姿勢の重要性を改めて実感しました。無意識のうちに首を前に突き出している自分に気づかされ、「症状が軽いうちに姿勢を見直せば慢性化を防げる」という言葉が印象に残りました。読者の皆様が生活習慣の小さな改善で予防できることを学び、デジタル機器と上手に付き合いながら健康な首と姿勢を保つヒントとなりましたら幸いです。
医院情報

| 所在地 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-3 都道府県会館地下1F |
| アクセス | 東京メトロ有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町」駅直結 東京メトロ丸の内線・銀座線「赤坂見附」駅より徒歩5分 |
| 診療科目 | 整形外科 |
