【闘病】まさか「便秘」と言われていた“お腹の張り”が『卵巣がん』だったとは…

パート勤務をしながら2人の子育てをしていた吉田さん(仮称)は、突然お腹が張るようになり、短期間で腹部が目に見えて膨らんでいきました。その原因は「卵巣がん」でした。手術で両方の卵巣を切除したため、術後に卵巣欠落症状(更年期障害のような症状)を発症したそうです。突然の「がん」宣告から現在の様子までを語ってもらいました。

体験者プロフィール:
吉田さん(仮称)
東京都在住の1984年生まれ。2児の母。診断時はパート勤務をしていた。腹部に張りを感じてからわずか1週間で急激に腹部が膨らみ、消化器内科を受診。「便秘」と診断されるが、異変を感じ再度消化器内科を受診。そこで総合病院の内科の受診を勧められる。検査の結果、左卵巣の腫れが確認され、婦人科にて子宮がんなどの検査をしたのちに手術。術後からは更年期障害のような症状と闘う日々が続いている。
急激に膨らみ出した腹部

編集部
最初に感じた体の異変や症状はどのようなものでしたか?
吉田さん
お腹の張りと便が詰まったような感じがしました。ただ、毎朝快便だったので、しばらく様子を見ることにしました。お腹の張りを感じてから1週間ほど経つと、急激にお腹が膨張して妊婦さんのような体型になりました。手術時には、腫瘍と腹水で結局7kg近くの重さになっていたみたいです。
編集部
受診から手術までの経緯を教えてください。
吉田さん
婦人科に行くという考えがなかったので、近所の消化器内科を受診し、そこでレントゲンを撮り診察をしてもらった結果、便秘と診断され薬を処方されました。しかし、その後も日に日にお腹が大きくなっていくので、何回か同じ消化器内科を受診すると、医師に「腸閉塞になる危険もある」と言われ、総合病院の受診を勧められて、総合病院の内科を受診しました。手術までは1カ月近く空いたのですが、その頃にはお腹は臨月の妊婦さんくらいの膨張と張りで、夜も眠れず仕事も休むことになりました。最初に病院に行った日から2カ月経たずに、その大きさになりました。
編集部
どのような検査をしましたか?
吉田さん
総合病院で血液検査、エコーをして帰宅(尿検査は生理でできませんでした)しました。検査の結果、左卵巣の腫れが分かり、その後、同じ総合病院内の婦人科を受診すると、すぐに卵巣がんの疑いが強いと言われました。そこで、子宮がんの検査、血液検査(腫瘍マーカー)、腹部超音波検査、造影MRI検査、造影CT検査、肺機能検査、レントゲン、心電図検査、エコーなどした結果、すぐに手術をすることが決まりました。
編集部
医師からはどのように説明されましたか?
吉田さん
左卵巣がんの可能性が高いことや、あまりに大きいので全身麻酔の開腹手術になることを説明されました。そして、手術中に迅速病理検査を行い、転移の可能性があったらリンパの切除まですると言われました。手術後の病理検査結果で、「卵巣の粘液性がん」と正式な診断がでました。
家族に広がる動揺と不安

編集部
卵巣がんだと分かったときのお気持ちはどうでしたか?
吉田さん
とにかく驚きましたが、どこか客観的にも見ていたと思います。自分よりも家族のほうが動揺してショックを受けていました。
編集部
ご家族の反応を詳しく教えてください。
吉田さん
私よりも夫のほうが取り乱していました。まさか私が病気、しかもがんになるとは思ってもいなかったらしく、がんと判明する前からいろいろとインターネットで調べていました。私の症状を調べると、「卵巣がんの末期症状」と不安になることばかり書いてありました。それでも、私を不安にさせないようにと調べた内容はあまり口にしなかったです。私自身はネガティブになるのを恐れ、あまりインターネットで症状検索などはしませんでした。
編集部
お子さんたちはいかがでしたか?
吉田さん
息子はいつも冷静に対応してくれましたが、娘から「兄はママが居ないときに不安で泣いていた」とあとで聞きました。私の前では、すごく前向きな言葉をたくさんくれたのは息子でした。また、息子からは「妹が泣いていた」と聞かされました。娘は、私がいなくなってしまうかもと心配しているようで、入院まで毎日私の部屋で一緒に寝るほどずっと私のそばから離れませんでした。そして、私の入院中、当時高校生だった娘がほとんどの家事をやってくれていたそうです。私の母には持病があることもあり、心配をかけないようあまり詳しく病気のことは話しませんでした。
術後に始まった卵巣欠落症状

編集部
現在どのような治療をしていますか?
吉田さん
手術で両方の卵巣と子宮、大網を切除したので、更年期障害のような症状(卵巣欠落症状)を急に発症してしまいました。症状がひどく、ホルモン剤と入眠剤を服用しています。あとは3カ月ごとに通院しています。
編集部
急に更年期障害のような症状が始まったのですね。主にどのような症状がありますか?
吉田さん
いくつかの症状があります。とくに不眠、精神的不安定、ホットフラッシュがひどいです。もともとは汗をあまりかかない体質なのですが、術後から寝汗をかいて目を覚ましたり、普段の生活でも暑く感じたりすることがとても多くなりました。不眠に関しては、以前から眠りが浅く、物音などで起きることはありましたが、病気になってからはより症状が重くなり2時間以上の睡眠が困難となってしまいました。現在(取材時)は、睡眠導入剤を服用して、やっと3時間から4時間くらい眠れる日もあるという感じです。
編集部
病気になってからの心の支えを教えてください。
吉田さん
やはり家族が一番の支えでした。それに加えて、職場の人たちも親身になって相談にのってくれましたし、担当の先生にも大変お世話になりました。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
吉田さん
特にありません。私は担当医にも恵まれ、看護師さんにもとても親切にしてもらいました。そのような環境だったのもあり、「すべて任せよう」と思えました。
編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
吉田さん
私の場合、婦人科検診は妊娠時のみで出産後15年以上していませんでした。自分でも病気の症状に気づきにくかったので、「体に異変があったときには遅い。本当に検診は重要なのだ」と思い知らされました。婦人科検診はなかなか行きにくいと思います。でも、体に異変を感じたときには病状が進んでいる可能性が高いので、皆さんには、ぜひ検診に行ってほしいですね。
【婦人科腫瘍専門医の一言】
婦人科検診に行くことは大変重要です。しかしながら、早期発見につながる有効な検査は、子宮頸がんの検診のみで、卵巣がんの早期発見につながる有効な検査は今のところありません。
編集部まとめ
婦人科の検診は、なかなか足を運びづらい人も多いと思います。吉田さんも、出産から15年も検診に行かなかったことから、読者の皆さんには「ぜひ検診に行ってほしい」と自身の体験をとおして語っています。また、いざ病気になったときには、自分だけではなく家族や周りの人たちにも大きなショックを与えるのだと改めて気づかされました。家族や大切な人のためにも検診へ行きましょう。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
鈴木 幸雄(神奈川県立がんセンター/横浜市立大学医学部産婦人科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。



