「関節リウマチ」でも在宅医療は受けられる? 初期症状や対処法、治療の進め方を医師が解説

関節リウマチは関節の腫れや痛みを伴う病気で、進行すると生活の質に大きな影響を与えます。近年は治療の進歩により症状を抑えられるようになり、在宅医療の現場でも多くの患者さんが支援を受けています。そこで、関節リウマチと在宅医療の関わりについて、内田先生(静岡ホームクリニック)に解説してもらいました。

監修医師:
内田 貞輔(医療法人社団貞栄会)
在宅医療とリウマチの基礎

編集部
在宅医療ではどのような患者さんが対象になりますか?
内田先生
在宅医療は、病気や障害のために通院が難しい人が主な対象となります。たとえば、進行がんや脳卒中の後遺症、心不全や慢性呼吸不全といった循環器・呼吸器疾患の患者さんが多く見られます。また、関節リウマチやパーキンソン病などの慢性炎症性・神経変性疾患も対象になります。さらに、認知症で通院そのものを拒んでしまう人、寝たきりや著しい体力低下で移動が困難な人なども含まれます。
編集部
話に挙がった関節リウマチとはどのような病気ですか?
内田先生
自分の免疫が自分の関節を攻撃して炎症を起こす病気です。原因は完全には解明されていませんが、放置すると関節が破壊されて動かせなくなり、生活に大きな制限をもたらします。一度かかると治らない病気とされていますが、治療によって症状を抑えることは可能です。
編集部
どのような症状が出るのでしょうか?
内田先生
関節リウマチの初期は、「朝起きたときに指が動かしにくい」「指輪が入りにくい」などのちょっとした症状がほとんどです。その後、はっきりと朝の手足のこわばりや、関節の腫れ・痛みがみられるようになります。さらに病気が進行すると関節の変形や筋力の低下を伴い、歩行や着替えなどの日常生活に支障をきたすようになります。
編集部
リウマチは高齢になってから発症することもあるのですか?
内田先生
はい。近年は高齢になってからリウマチを発症する人も増えています。高齢での発症は、体力が低下していることや、ほかの病気を併発していることが多いため、治療薬の副作用が出やすかったり、関節の変化が進みやすかったりする点が問題になります。さらに、日常生活に必要な動作の制限が出やすく、生活の質への影響が大きくなる傾向があります。
リウマチ治療の進歩と在宅医療

編集部
関節リウマチの治療について教えてください。
内田先生
近年、関節リウマチの治療は大きく進歩しています。第一選択薬のメトトレキサートに加えて、生物学的製剤や分子標的薬の登場で、関節の破壊を抑えられるようになりました。これにより、かつては寝たきりになってしまっていた患者さんも、日常生活を維持できるケースが増えています。
編集部
リウマチは在宅医療でも治療を続けられるのですか?
内田先生
はい。飲み薬による治療を中心に、場合によっては注射や点滴も在宅でおこなえます。病院と連携しながら血液検査などを確認し、状態に応じて治療を調整していきます。服薬管理や痛みのコントロールに加え、関節に負担をかけにくい生活の工夫を一緒に考えることも可能です。
編集部
在宅医療でリウマチ治療をおこなうメリットは何ですか?
内田先生
在宅医療の目的は「不自由の少なかった生活を取り戻す」ことです。在宅医療では、血液検査のデータや実際に腫れている関節の数などの指標に基づいた標準的な治療だけでなく、その人の趣味や生活習慣を踏まえて「自分らしい暮らし」を支援できる点が特徴です。
編集部
もう少し詳しく教えていただけますか?
内田先生
たとえば病院を受診するだけだと、血液検査の結果しか見てもらえず、その数値からリウマチが治ったかどうかが判断されます。患者さんがどんな生活を送れているか、生活活動に満足しているかなどまではあまり重要視されませんが、在宅医療は血液検査の結果だけでなく、日常の動作まで見たうえで、治ったかどうかを総合的に判断することができます。たとえ血液検査の数値がよくても、ドアノブやペットボトルキャップが開けられないのでは意味がありません。
編集部
在宅医療では、具体的にどのようなことがおこなわれるのですか?
内田先生
医師だけでなく、看護師やリハビリスタッフも連携し、薬の管理や関節機能の維持を支えます。生活環境を直接確認できるため、病院では見えにくい日常の困りごとに合わせて治療やリハビリ内容を臨機応変に調整できる点が、在宅診療ならではの強みです。
関節リウマチ、生活支援と家族の関わり

編集部
日常の困りごとに対してもサポートしてくれるのですね。
内田先生
そうですね。服薬管理や痛みのコントロールに加え、関節への負担を減らす生活動作の工夫を一緒に考えます。さらに、手指のこわばりで家事が難しい場合などは、介護保険サービスを活用して家事や身の回りをサポートし、患者さんが自分らしい生活を続けられるよう支援します。
編集部
リウマチの患者さんが在宅医療を導入するタイミングはいつがよいのでしょうか?
内田先生
通院が負担になったときが一つの目安です。高齢での発症や合併症で移動が難しい場合、また介護を担う家族が疲弊しているときも、早めに導入を検討すると安心です。
編集部
在宅医療を始めるには具体的にどうすればよいですか?
内田先生
在宅医療を始めたいと思った際は、まず近隣で在宅医療に対応している医療機関へ問い合わせをしてみるとよいでしょう。もし医療機関がわからない場合は、主治医に相談するか、介護認定を受けている人であれば、ケアマネジャーに相談するとスムーズかと思います。
編集部まとめ
関節リウマチは進行性の病気ですが、近年は治療の進歩により生活の質を保つことが可能になっています。在宅医療を取り入れることで、患者さんの生活スタイルに合わせたきめ細かなサポートが可能になり、「自分らしい暮らし」を続けることができます。通院が難しいと感じたときには、早めに医師へ相談し、在宅医療という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
医院情報
| 所在地 | 〒422-8041 静岡県静岡市駿河区中田4丁目6-1 |
| 診療科目 | 訪問診療、往診、在宅医療 |




