もんでも治らない「肩こり」の原因はご存じですか? なりやすい人の特徴・対処法も解説!

いくら肩をもんでも、すぐにこりが戻ってしまう……。そんなあなたは要注意! じつはその肩こり、肩そのものではなく「腹筋」や「股関節」の衰えが原因かもしれません。体のつながりを知れば、つらい肩こりの本当の改善法が見えてきます。「肩こりラボ学芸大学」の丸山先生に解説していただきました。

監修鍼灸師:
丸山 太地(鍼灸師)
肩をもんでも治らないのは腹筋や股関節の衰えが原因?

編集部
肩こりがひどくて、肩をもんでいるのですが改善しません……。腹筋や股関節も関係していると聞きましたが、本当なのでしょうか?
丸山先生
はい、大きく関係していると考えます。肩と腹筋や股関節は離れているため、意外と思うかもしれません。しかし実際、肩は体幹や骨盤、股関節と連動して動いています。腹部深層筋群(特に腹横筋)や股関節周囲筋(大腰筋・殿筋群など)は姿勢保持に寄与しています。これらの機能低下は骨盤や背骨の配列(アライメント)を乱しやすく、その結果として肩周囲への負担が増大します。つまり、腹筋や股関節まわりの筋力が落ちると姿勢を保持する力が弱くなり、その結果、肩に余計な負担がかかるようになります。そのため、負担をかけている大元を対処せず、症状の出ている肩をいくらもんでも根本的な解決にはならないのです。
編集部
具体的に、どのような人がなりがちですか?
丸山先生
「座りっぱなしの時間が長い人」や「運動不足の人」に多い傾向があります。特にデスクワーク中心の人は、腹筋や股関節周辺の筋肉が衰えがちで、猫背や反り腰などの姿勢不良を招きやすくなります。ただし、「立ち仕事だから大丈夫」というわけではありません。立ち仕事でも同じ姿勢を長く保持したり、同一作業を繰り返したりする人は筋肉を使わず、省エネで動作をするようになります。そのため、体を動かしているように思っていても、筋肉が衰えていってしまうことは少なくありません。
編集部
「肩こりの原因は肩だけにある」と思い込んでいる人は多いと思います。
丸山先生
「肩がこる=肩を徹底的にほぐせばいい」という思い込みが根強くありますが、原因の多くは体の別の部位に隠れています。肩こりの原因の一部は、肩だけではなく、全身のバランスにあります。肩はあくまで症状が出やすい場所というだけで、「根本的な原因はほかにある」と理解する必要があるのです。
編集部
腹筋や股関節を鍛えると、肩こりは改善するのでしょうか?
丸山先生
はい、いくら揉みほぐしても良くならないケースの多くに改善が期待できます。腹筋群がしっかり働くと上半身を無理なく支えられるようになり、肩の過緊張の軽減につながります。特に腹横筋や大腰筋などの「インナーマッスル」が大切です。また、股関節が柔軟に動くことで骨盤の傾きが改善され、姿勢が安定します。腰を力ませて骨盤を無理に立たせようとせず、重心移動とインナーマッスルの働きによって背骨を無理なく支えることが大切です。このように、股関節を支点として体幹と下肢を協調的に動かす運動様式を「ヒップヒンジ」と言います。ヒップヒンジ動作を体得した結果、日常生活で、体幹と下肢を連動させてつかえるようになることで、首・肩の負担が減り、肩こりが改善していくと私たちは考えています。
肩こりのメカニズム

編集部
腹筋が弱いと、なぜ肩に負担がかかるのでしょうか?
丸山先生
腹筋と一口に言っても複数あります。腹部にある筋肉、特に腹横筋や大腰筋などのインナーマッスルは、姿勢を保つ土台として重要です。これらの筋肉が弱まると姿勢が崩れやすくなり、頭を支えるために肩や首の筋肉が無理に働きます。これが慢性的な緊張を生み、肩こりを引き起こします。つまり、肩こりの「こり」の部分は、バランスを取るための代償動作で酷使されており、疲労が蓄積していると考えられるのです。
編集部
股関節の柔軟性と肩こりの関係についても教えてください。
丸山先生
股関節の柔軟性が低いと、前述したヒップヒンジができなくなってしまいます。すると、骨盤の前傾や後傾が動作に応じて適切にできなくなり、ほかの部分が無理して動きを補おうとして、姿勢も崩れていってしまいます。その結果、背骨や肩甲骨の動きも制限され、肩や首の筋肉に過剰な負担がかかり、肩こりにもつながる可能性があるのです。
編集部
肩をもむと一時的に楽になるのはなぜですか?
丸山先生
実際のところ、厳密な意味で、肩をもむと楽になる理由は明らかにされていません。現時点の一般的な解釈としては、「肩をもむことで一時的に血流が改善し、筋肉や筋膜の緊張が和らぎ、動きが良くなる」と考えられています。ただし、原因がほかにある場合は、すぐに元通りになります。姿勢や筋力のアンバランスを見直さない限り、根本的な改善は期待できません。
編集部
肩こりが慢性化すると、どうなるのですか?
丸山先生
首や肩のこりが慢性化すると、単にその部分につらさや痛みが出るだけでなく、全身的な不調が出てしまうこともあります。過緊張により、頭痛、めまい、集中力の低下などが生じることがありますし、自律神経も乱れやすくなり、病気ではないけれど病気のような症状が出てくることもあります。
肩をもんでも治らないときの対処法

編集部
肩こりがひどいとき、まず何をすればいいですか?
丸山先生
一般的な肩こりは、もめば楽になる程度の軽いものです。しかし、「なかなか緩和しない」「痛みが続く」「重だるい感じが抜けない」というときは、“普通の肩こり”ではないかもしれません。背景に病気が隠れていることもあります。その場合には、念のため整形外科と内科を受診しましょう。場合によっては、骨や内臓の病気が見つかることもあります。ひどい肩こりは、体からのアラートかもしれません。肩だけではなく全身の状態に注意を向けて、まずは早めに医療機関を受診しましょう。
編集部
医療機関を受診した方がいいのですね。
丸山先生
はい。肩こりがひどい場合には、その肩こりを引き起こしている原因を追求することが大切です。まずは病気が隠れていないかを確認するため、医療機関の受診をおすすめします。そして、なんらかの病気や異常が見つかれば、医療機関で治療を開始しましょう。
編集部
病気や異常が見つからなかった場合は?
丸山先生
一見、肩こりとは関係がなさそうな、体幹部の機能低下や自律神経の乱れ、ストレスなどが関係しているかもしれません。体幹に問題がありそうな場合には、理学療法士やトレーナー、柔道整復師、鍼灸師などに、体の機能をチェックしてもらいましょう。また、自律神経やホルモンバランスも乱れが疑われる場合、女性は産婦人科医、男性は泌尿器科医に相談してみましょう。ストレスが大きい場合には、心理カウンセラーに相談してみましょう。
編集部
鍼などは効果がありますか?
丸山先生
こりをほぐす、つまり対症療法としては一定の効果があると思いますが、原因を改善しないと同じことの繰り返しになってしまいます。「鍼などで楽にはなるけれど、また元に戻ってしまう」という際は、一度立ち止まって原因に目を向けてみましょう。本当の改善には、対症療法と原因療法の両方をバランスよく取り入れることが大切です。症状だけでなく、背景にある肩以外の部分の要因も見極めるのが、改善の鍵となります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
丸山先生
もんでも治らない肩こりに悩んでいる場合には、まず原因を知ることが大切です。そのうえで適切な対症療法と原因療法をおこなえば、根本的な改善につながります。「ただの肩こりだから」と軽く考えず、骨や内臓の病気が隠れている可能性もあるため、まずは整形外科や内科での診察を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
肩こりはよくある症状ですが、放置すると思わぬ病気を見逃したり、日常生活の質(QOL)が下がる原因になったりすることもあります。違和感が続く場合は、早めに適切な医療機関で相談しましょう。
医院情報

| 所在地 | 〒152-0004 東京都目黒区鷹番3丁目6−8 学大 Y.Sビル3F |
| アクセス | 東急東横線「学芸大学駅」 徒歩1分 |
| 診療科目 | 鍼灸マッサージ |




