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【漢方医に聞く】「心筋梗塞」の“予防”に効果的な漢方薬はある? どう使うのがよい?

 公開日:2025/11/26

突然起こる心筋梗塞は、命に関わる重大な病気です。心筋梗塞の初期症状というと激しい胸の痛みが知られており、その主な原因は動脈硬化であるとされていますが、じつは、漢方薬のなかには心筋梗塞の予防に役立つものもあります。医療法人仙豆会いこいクリニックの岩崎先生に教えてもらいました。

岩崎 鋼

監修医師
岩崎 鋼(医療法人仙豆会いこいクリニック)

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医療法人仙豆会いこいクリニック理事長。体調に合わせた保険診療内での煎じ薬治療を実践。元東北大学附属病院漢方内科臨床教授。元日本東洋医学会東北地区専門医制度委員長。元日本老年医学会評議員。東北大学医学部出身、老年内科で医学博士取得。その後漢方内科に移籍。

心筋梗塞には予兆がある? どんな症状に要注意?

心筋梗塞には予兆がある? どんな症状に要注意?

編集部編集部

心筋梗塞になると、どのような症状が見られるのですか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

代表的なのは胸の痛みや圧迫感、締めつけられるような感じです。そのほかにも、肩、腕、歯、あご、胃のあたりに痛みが出ることがあります。

編集部編集部

心筋梗塞には予兆のようなものはありますか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

場合によって胸やけ、吐き気、息切れ、突然の冷や汗などが前触れとして出ることがあります。こうした症状は階段を上り下りしたり、歩いたりといった労作時に出現し、増悪することが多いとされています。

編集部編集部

心筋梗塞というと「激しい胸痛が起きてから医療機関へ担ぎ込まれる」というイメージが強いですが、前兆が現れることもあるのですね。

岩崎 鋼先生岩崎先生

そうですね。ただし、気をつけなければならないのは、無症候性の心筋梗塞です。前兆に気づかないため症状が進みやすく、心不全が増悪したり、突然死にいたったりすることもあります。特に高齢者や糖尿病の患者では、典型的な胸痛が現れないことも少なくありません。

編集部編集部

症状がないということは、発見のタイミングも遅れてしまいそうです。

岩崎 鋼先生岩崎先生

日本循環器学会の発表によると、いったん心筋梗塞を発症すると約40%という高い確率で死亡するということがわかっています。しかし、適切なタイミングで受診をして正しく治療を受ければ重篤化を防いだり、再発を防いだりすることができます。

編集部編集部

無症候性の場合には、どのようなタイミングで心筋梗塞に気づくことができますか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

たとえば足がむくむ、労作時に息がきれる、動悸といった症状が見られたら、もしかしたら無症候性の心筋梗塞を発症しているかもしれません。そのまま放置すると危険なこともありますから、念のため循環器の専門医を受診することをおすすめします。

心臓を強くするためにはどのような漢方が有効か?

心臓を強くするためにはどのような漢方が有効か?

編集部編集部

心筋梗塞の予防に役立つ漢方薬はありますか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

中国では昔から丹参(たんじん)という生薬が心筋梗塞の治療や予防に使われてきました。最近では丹参を使った「冠心Ⅱ号方(かんしんにごうほう)」という製剤が天津の中医薬大学で開発され、臨床で用いられています。

編集部編集部

どうして丹参は心筋梗塞の予防に効果があるのですか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

心筋梗塞の原因の一つは、動脈壁の内皮で起きる微細な慢性炎症です。糖尿病や喫煙などが原因で炎症が進むと、脂質が酸化して血管壁に蓄積し、血栓ができやすくなります。丹参はこの血管内皮の炎症を抑え、脂質の酸化を防ぐ抗酸化作用があるので、心筋梗塞の予防に役立つとされているのです。

編集部編集部

エビデンスはあるのですか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

心筋梗塞の状態にしたマウスを使った実験では、丹参を与えると心筋の損傷が少なく、心臓のポンプ機能の低下も抑えられることが報告されています。また、2019年には中国で心筋梗塞患者を対象にした臨床試験がおこなわれましたが、まだ結果は公表されていません。

編集部編集部

実際にその漢方薬を使うことはできますか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

中国では日常的に使われていますが、日本では保険に収載されていないため、医師からは処方されません。しかし、丹参を主成分としたイスクラ産業の「冠元顆粒」は薬局で購入することが可能です。動脈硬化がある人や、糖尿病・高血圧など心筋梗塞のリスクが高めの人は予防的に服用するとよいかもしれません。

心筋梗塞を予防するために日常生活で注意すべきこと

心筋梗塞を予防するために日常生活で注意すべきこと

編集部編集部

心筋梗塞を防ぐために、どんなことに気をつければよいでしょうか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

糖尿病や高血圧は心筋梗塞の大きなリスクです。塩分を控え、バランスのよい食事や適度な運動で血圧を管理することが大切です。

編集部編集部

ストレスが心筋梗塞に関係することはありますか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

はい。慢性的なストレスは血管や心臓に負担をかけ、心筋梗塞のリスクを高めます。適度な休息や趣味、リラクゼーションでストレスを減らすことが予防につながります。

編集部編集部

そのほか、気をつけることはありますか?

岩崎 鋼先生岩崎先生

糖尿病や高血圧などの基礎疾患は、しっかり治療をすることが大切です。特に、糖尿病があると血管内皮の炎症や動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞のリスクが上がります。血糖値をコントロールし、規則正しい生活と食事管理をしましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

岩崎 鋼先生岩崎先生

心筋梗塞は命に関わる重大な病気ですが、生活習慣の改善とともに、漢方薬を上手に取り入れることで予防の可能性を広げることができます。血管内皮の炎症や脂質の酸化を抑える作用がある丹参は、動脈硬化のある人や心筋梗塞リスクが高めの人に有用と考えられています。ただし漢方薬は、体質やほかの薬との相互作用を考慮して使うことが重要です。安全で効果的に活用するためには、漢方の知識を持った専門医に相談してください。

編集部まとめ

心筋梗塞の予防には、生活習慣の見直しが欠かせません。さらに、漢方薬を併用する場合は、生薬ごとの作用や副作用を理解した上で、安全に活用することが大切。日々の習慣と正しい漢方の知識が、健康な心臓を守る鍵になりそうです。

医院情報

医療法人仙豆会 いこいクリニック
所在地 〒557-0032 大阪府大阪市西成区旭1-4-3 さんさん花園1階・2階
アクセス 大阪市営地下鉄四つ橋線「花園町」駅エレベーター出口すぐ
南海高野線「萩ノ茶屋」駅から310m
阪堺電軌阪堺線「今船」駅から550m
診療科目 内科、整形外科、心療内科、精神科

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