「糖尿病予備軍」に早く気付く方法は? 知っておきたい「すぐ受診すべき状況」を医師が解説

現代社会では生活習慣の変化により、糖尿病やその手前の「糖尿病予備軍」と診断される人が増えています。放置すると本格的な糖尿病へ進行するだけでなく、合併症によって生活の質を大きく損なう恐れがあります。そこで、糖尿病予備軍の基礎知識と早期に受診することの重要性について、医師の團先生(宇部内科小児科医院)に話を聞きました。
※2025年9月取材。

監修医師:
團 茂樹(宇部内科小児科医院)
糖尿病ってどんな病気? 医師が解説!

編集部
糖尿病とはどのような病気ですか?
團先生
糖尿病とは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの分泌遅延および分泌反応低下の結果として大切なエネルギー源であるブドウ糖が、筋肉を始めとする体の各組織細胞にうまく取り込むことができず、血液中に溢れている状態です。長期間放置すると全身の血管が傷つき、さまざまな合併症を引き起こす原因となります。
編集部
糖尿病にも種類があると聞きました。
團先生
代表的なのは1型糖尿病と2型糖尿病です。1型は免疫の異常でインスリンがほとんど分泌されなくなる病気で、若い人にも起こります。2型は生活習慣や遺伝的要因が関与し、中高年に多くみられます。このほか妊娠糖尿病などと呼ばれるタイプもあります。
編集部
糖尿病になるとどんな症状がでるのでしょうか?
團先生
初期は自覚症状に乏しいのが特徴です。進行すると「のどが渇く」「尿の回数が増える」「体重が減る」といった症状が現れることがあります。さらに悪化すると、視力低下や感覚障害など、日常生活に支障をきたす症状がでてきます。
編集部
糖尿病で、目にも症状がでるのですか?
團先生
そうなんです。糖尿病そのものよりも恐ろしいのがその合併症で、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症のいわゆる三大合併症が代表的です。手足のしびれや失明、人工透析の原因になるなど、生活の質を大きく下げてしまいます。また動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる合併症を引き起こすこともあるため、糖尿病は早期発見と早期治療が重要です。さらには、糖尿病の一歩手前の人も、発症を防ぐ(遅らせる)ことを意識する必要があります。
糖尿病予備軍とは? 早めに知っておきたいサイン

編集部
「糖尿病の一歩手前」とはどのような状態を指すのですか?
團先生
血糖値が正常より高いものの、まだ糖尿病の診断基準には達していない状態の、いわゆる「糖尿病予備軍」の人がこの状態です。健康診断で「血糖値が少し高め」と指摘された人は、この段階にあたります。この時点ではすでにインスリン分泌能力が低下していたり、分泌が遅れていたりといった兆しがすでにあるため、個人的には「一歩手前」ではなく、「糖尿病に片足を一歩入れている」と考えてもらいたいと思っています。自覚症状がなく、気づかないまま放置されることが多いので注意が必要です。
編集部
糖尿病予備軍を放っておくとどうなりますか?
團先生
放置すれば多くの人が数年以内に糖尿病へ進行します。血糖値が高い状態が続くと血管はじわじわと傷み始め、合併症のリスクも高まります。糖尿病になる前の段階で生活習慣を見直すことが、将来の健康を守るために非常に大切です。
編集部
どうしたら、糖尿病予備軍であることに早期に気づけますか?
團先生
血糖値が気になる食事をした際に、食後約1時間後における尿糖の有無を調べてください。わずかでも陽性なら、糖尿病予備軍の危険があります。空腹時の採尿では、早期発見はできません。尿糖検査テープはネットで安く手に入ります。尿糖が陽性になったら、先延ばしにせず、きちんと医療機関にかかるようにしましょう。健康診断で血糖値の異常を指摘されたときはもちろん、体重が急に減った、強いのどの渇きや頻尿があるなどの症状がでた場合は、早めに受診してください。また家族に糖尿病の人がいる場合もリスクが高いため、積極的な検査をおすすめします。
編集部
糖尿病予備軍の段階でできる対策とはどのようなものですか?
團先生
主な対策は食事療法と運動療法です。特別な薬を使わずに生活習慣を改善することで、多くの人は糖尿病への進行を防げる可能性があります。生活の質を保ちながら取り組める方法なので、早めに始めることをおすすめします。
食事と運動で始める予防と対策

編集部
食事療法は具体的にどのようにしたらよいですか?
團先生
糖質は体に必要な栄養素なので、極端に避ける必要はありません。ただし、ご飯などの炭水化物を単独で食べるのではなく、必ずおかずと一緒に摂ることが大切です。食事は20分以上かけ、最初にタンパク質や野菜から食べ始めると血糖値の上昇をゆるやかにできます。また、食事を抜かないことも重要です。特に朝食はしっかりと摂りましょう。カロリーよりも、食べ方や内容・時間を意識することが、食事療法の基本です。
編集部
では、運動療法は具体的にどのようにしたらよいですか。
團先生
運動は特別なことを始めなくても構いません。まずは「軽くてもよいので毎日続ける」ことが大切です。例えば、自宅でできる簡単な筋力トレーニングを生活の中に取り入れてみましょう。トイレに行った際にスクワットを数回する、壁を押して腕や脚の筋肉を使うなど、ちょっとした動作でも十分効果があります。外に出て散歩やウォーキングをする場合は、少し早足を意識するだけで運動効果が高まります。どんな運動でも「やって損はない」と考えて、無理のない範囲で習慣にしていくことが大切です。
編集部
糖尿病予備軍と言われている人が「すぐ受診すべき症状」というのはありますか?
團先生
特に症状はありません。重複しますが、「糖尿病予備軍」と言われた時点で、できるだけ早めに受診してもらうのが大切です。なぜなら、糖尿病以外にも高血圧や動脈硬化といった生活習慣病が隠れていることが少なくないからです。もし治療が必要であれば早期に開始できますし、治療にいたらなかったとしても、食事や運動の工夫など具体的な生活改善のアドバイスを受けられます。つまり「症状が出てから」ではなく、「予備軍と指摘されたとき」こそ受診のタイミングです。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
團先生
糖尿病予備軍について説明しましたが、それ以外についても「特に指摘を受けていないから大丈夫」と思い込むのは危険です。健康診断で数値が基準内だったとしても、本当は注意が必要なケースもあります。具体的にいうと、糖尿病予備軍だと基準値内であっても対策が必要な場合があるLDLや、きちんと状態を評価するためには数値に体重補正が必要なクレアチニンなどがそれに当たります。「まだ大丈夫」と放置せず、一度医療機関に相談してもらうことが、将来の大きな病気を防ぐ第一歩になります。
編集部まとめ
糖尿病予備軍は「まだ病気ではない」と軽く考えられがちですが、すでに病気が発症しつつある状態なのだそうです。放置すると糖尿病に進み、合併症のリスクも高まります。生活習慣の改善で予防できる可能性がある段階だからこそ、血糖値を指摘された人は放置せず、早めに受診や生活改善を始めることを強くおすすめします。
医院情報

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