日常に潜む「性病」の感染経路 タオルや便座などの共有は大丈夫? 注意点を医師が解説

「性感染症は性行為で感染するもの」と思い込んでいる人は多いのではないでしょうか。じつは粘膜や体液の接触を通じて、性器以外の部位からも感染するリスクがあるようです。タオルや便座などの共有、身近な人とのスキンシップは安全なのでしょうか? そこで、日常に潜む感染経路と、家族・パートナー間で注意すべきポイントなどについて、馬場剛士先生(池袋マイケアヒルズタワークリニック院長)に詳しく解説してもらいました。

監修医師:
馬場 剛士(池袋マイケアヒルズタワークリニック)
性病は性行為だけで感染するわけではない?

編集部
性感染症は、必ず性行為によってのみ感染するものなのでしょうか?
馬場先生
性感染症は主に性行為を通じて感染しますが、性行為とは必ずしも腟性交に限られません。オーラルセックスやアナルセックスなど、粘膜同士の接触を伴う行為も性行為の一種とされ、そこから感染するケースも多くあります。口腔や肛門の粘膜接触でも、感染のリスクは十分に存在します。
編集部
口腔・肛門・皮膚など、粘膜接触による感染の可能性について教えてください。
馬場先生
性感染症は、性器だけでなく、口腔・肛門・皮膚といった部位の粘膜を通じても感染します。クラミジア、淋菌、梅毒、HIVなどは、これらの部位に感染することがあり、実際に当院でもアナルセックスを介した感染例を確認しています。また、尖圭コンジローマなども皮膚や粘膜の接触で感染しやすく、感染部位は多岐にわたります。
編集部
手や口を使ったスキンシップなど、性行為以外の接触でも性感染症がうつる可能性はあるのでしょうか?
馬場先生
キスや愛撫といったスキンシップでも、粘膜同士の接触や、感染部位への直接的な接触があれば性感染症がうつる可能性はあります。特に口腔内や皮膚の小さな傷などから病原体が侵入することもあり、完全にリスクを排除するのは困難です。性行為以外であっても、感染経路として成り立つケースがあることを理解しておくことが重要です。
タオルや便座など間接接触による可能性はある?

編集部
感染力の強い性病と、比較的感染しにくい性病の違いはありますか?
馬場先生
性感染症の感染力は、病原体の種類や感染経路により異なります。梅毒、淋病、ヘルペスなどは粘膜や体液を介して感染しやすく、感染力が高いとされています。一方でHIVは、感染に一定量の血液や精子が必要であるため、比較的感染しにくいとされています。ただし、いずれの感染症も性行為を通じた接触が主な感染経路であり、トイレの便座やタオルなどからうつるリスクは極めて低いと考えられています。
編集部
温泉やプールなど、不特定多数が接触する場所で感染する可能性はありますか?
馬場先生
一般的な使い方をしていれば、温泉やプールなどの公共施設で性感染症に感染するリスクは非常に低いとされています。性感染症の多くは粘膜接触や体液を介して感染するため、通常の入浴や利用方法で感染することはほとんどありません。ただし、不衛生な条件が重なると、感染リスクがゼロとは言い切れません。過度に神経質になる必要はありませんが、衛生意識を高く保つことが大切です。
編集部
日常生活で使う物(下着・タオル・便座など)を介しての感染リスクはあるのでしょうか?
馬場先生
通常、下着やタオル、便座を介して性感染症が感染する可能性は非常に低いとされています。ウイルスや細菌の多くは体外での生存時間が短く、空気や乾燥により不活化されやすいためです。ただし、ヘルペスなど一部のウイルスは、同じ食器やコップなどを共有するほか、湿った環境で感染するケースも稀にあります。心配な場合は、洗濯物を分けるなど、最低限の対策を講じることも予防の一助となります。
家族やパートナーと暮らす中での注意点と知っておくべきこと

編集部
同居家族やパートナーにうつさないために注意すべき行動はありますか?
馬場先生
性感染症の中には、日常的な接触で感染しにくいものもありますが、患部への接触やタオル・シーツなどの共有によってうつる可能性があるものも存在します。感染が判明した場合は、洗濯物や共有物の取り扱いに配慮し、パートナーと別々に管理することが望まれます。また、性行為は一時的に控え、パートナーにも検査を促し、必要であれば一緒に治療を進めることが重要です。
編集部
性感染症に感染した場合、日常生活をどのように見直すべきでしょうか?
馬場先生
感染が判明した際は、まずパートナーへの告知と性行為の中止が基本です。自身が治療を受けるだけでなく、相手が未治療のままでは再感染の恐れがあるため、二人で治療を進めることが大切です。また、下着や寝具の共有をしない、衛生環境の管理をするなど、生活面でも配慮をおこない、感染拡大の予防に努めましょう。通院や投薬は継続し、完治まで慎重な対応が求められます。
編集部
知識不足による誤解や偏見を避けるために、日常から意識しておくべきことはありますか?
馬場先生
性感染症は、誰もが感染し得る身近な病気です。しかし「恥ずかしい」「だらしない」といった偏見により、受診をためらい、重症化してしまうケースも少なくありません。正しい知識を持ち、違和感があれば早めに受診することが、予防・早期治療につながります。性感染症に対する社会的な誤解を解くには、個人の意識改革も必要です。
編集部まとめ
性感染症は、性行為に限らず粘膜や皮膚、日常的な接触からも感染する可能性があります。まさか自分が、と思う前に、正しい知識を持って備えることが大切であることを学びました。偏見や誤解に惑わされず、必要な検査や予防策を自分と大切な人のために実践していくことが大切と教えてもらいました。本稿が読者の皆様にとって、性感染症への理解を深めるきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報

| 所在地 | 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目3−5 池袋伊藤ビル9F |
| アクセス | 「池袋」駅東口(33番出口)より徒歩0分 |
| 診療科目 | 性感染症内科 |




