【闘病】突然「脳梗塞」で“救急搬送”… それも1日2回 『なんで私が?』

今回お話を伺ったのは、多発性脳梗塞を経験された「Hana」さんです。Hanaさんは20代の若さで多発性脳梗塞を経験し、2カ月の入院期間を経て、現在は自宅で過ごしています。左半身に軽度の麻痺が残りながらも、子育てやリハビリテーションに奮闘するHanaさんの体験を通して、脳梗塞についての理解を深めましょう。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年3月取材。

体験者プロフィール:
Hana(仮称)
20代女性。保育士として働いていたが、2024年のある日、突然左腕が動かなくなり救急搬送された。一旦は圧迫による神経麻痺と診断され帰宅したものの、その後ふらつきが強くなり、左側に衝突することも多かったため、#7119に電話相談した。すぐに病院受診するよう言われたため、再度救急搬送された病院で多発性脳梗塞と診断された。
自分の体に異変が起きたら、自分の勘を信じることが大切

編集部
初めに、Hanaさんが読者に一番伝えたいことを教えてください。
Hanaさん
私は1日に2度救急車を呼びました。「普段と明らかに違う」「やっぱりおかしい」と感じたら、救急車を呼ぶことを躊躇わず、行動してほしいです。そうすればきっと助かります。特に脳梗塞は時間との戦いです。処置までの時間がかかるほど治りが悪くなり、最悪の場合は命を落とします。私のように20代で脳梗塞になることは珍しいと思いますし、医師も20代という若さでの脳梗塞は可能性を疑いにくく、判断が難しいということも身に染みて感じました。自分の不調や動きにくさは当人にしかわかりません。読者さんには、上手く話せなくても、説明が難しくても、伝えることを諦めないでほしいです。
編集部
ありがとうございます。それではHanaさんが多発性脳梗塞を発症した経緯を教えていただけますか?
Hanaさん
脳梗塞の発症は本当に突然でした。2024年のある日、朝起きると突然左腕が動かなくなったので、「これはまずい」と思い救急車を呼びました。1回目の搬送では腕を圧迫したことによる「神経麻痺」と診断され、一旦帰宅しました。しかし、今度はふらつきが強くなり、体の左側を壁や机に何度もぶつけてしまうため、「#7119(救急安心センター事業)」に相談したところ、すぐに医療機関へ行くよう指示されました。そして、2度目の救急搬送をしてもらい、MRI検査をおこなったところ「多発性脳梗塞」と診断されました。
編集部
左腕が動かなくなったというのは、どの程度の状態だったのでしょうか?
Hanaさん
本当に左腕を含めた左半身にほとんど力が入りませんでした。立ち上がることはもちろん、物を持つこと、話すことも思うようにできませんでした。
編集部
病気が判明したときの心境はどのようなものだったのでしょうか?
Hanaさん
「なんで私が」とばかり考えていました。当時娘はまだ生後11カ月で、もうすぐ1歳になるという時期に緊急入院になったため、頭の中が真っ白でした。2カ月ほどの入院期間だったのですが、最初の1週間は「後遺症が残ったらどうしよう」「寝たきりになってしまったらどうしよう」と、不安になるばかりで毎日ベッドで泣いていました。
リハビリテーションと体力づくりに効果

編集部
医師からはどのように治療を進めると説明されたのでしょうか?
Hanaさん
まずはヘパリン投与で血管に詰まっている血栓を溶かす治療をしながら、原因特定のために採血、髄液検査、CT、食道エコー、心臓エコーをおこなうことになりました。そして、原因が見つかればそれに合わせて治療方針を決めるとのことでした。しかし、結果として原因は不明でした。幼少期から抱えている心房中隔欠損症が影響している可能性も0%とはいえないことから、再発予防のためにもワーファリン服用を継続することが最適と説明され、今も続けています。
編集部
2カ月という長い入院期間、リハビリテーションなどもされていましたが、心の支えになっていたものは何ですか?
Hanaさん
入院中は娘の写真や動画を何百回も見返して、パワーをもらっていました。今でも娘と毎日遊んで元気をもらい、娘が寝付いたらジムに行って体力作りに励んでいます。
編集部
退院後は体調を崩されることなどはありませんでしたか?
Hanaさん
今のところは再発もありませんし、大きな病気もしていません。それと、少し前から体力作りと左半身の筋力を取り戻すためにジムにも通い始め、風邪をひくこともなく元気に過ごしています。
編集部
発症後の生活の変化、普段の生活で気を付けていることなどはありますか?
Hanaさん
入院中はリハビリテーションで歩行練習、紐結びなど手を使う作業を繰り返し練習していました。ただ、今でも軽度ですが感覚の麻痺が残っており、右腕で子どもを抱っこして左手で扉の鍵の開け閉めやベビーカーの開閉は難しいです。ほかには、ワーファリンを服用しているため、薬の作用を弱めてしまうビタミンKを含む食品(納豆、ケール、春菊、バナナ、クロレラなど)はあまり摂取しないように気を付けています。また、ワーファリンの服用量は月1回の採血をおこなったうえで、医師の処方された分量を絶対に守らなければなりません。
人生は何が起こるかわからないからこそ、色々なものを抱えながら生きている

編集部
Hanaさんは20代で多発性脳梗塞という珍しい闘病経験をされましたが、普段病気を意識せず過ごしている人に伝える言葉があるとしたら、どんなことを伝えますか?
Hanaさん
「見えないところでいろんな人が、いろんな人生を抱えて生きている」ということを知ってほしいです。私自身、20代で脳梗塞を発症するなど予想もしていませんでしたし、ましてや娘が小さいうちにこんなことが起こるなど考えもしませんでした。私の周りに同じような経験をした人は今のところいません。しかし、人生何が起こるかわかりませんし、いろんな出来事があるのだから、見えるものだけがすべてだと思わないことが大事です。
編集部
Hanaさんの闘病体験を通して、医療従事者に伝えたいこと、希望されることはありますか?
Hanaさん
「仕事のない日はしっかり休んで、自分自身の体も大事にしてください」と伝えたいです。私が入院している間、医師も看護師もみんな忙しなく動いていて、大変な仕事だと思って見ていました。私自身も保育士として子どもの世話をする仕事をしていましたから、患者のことだけでなく、自分自身のことも大切にしてほしいと思います。
編集部
ありがとうございます。最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
Hanaさん
学生時代の友人たちがちょうど結婚や出産ラッシュなどで、キラキラした生活を送っているように見える時期に、私は脳梗塞になり、自分から連絡をする勇気が出ませんでした。ですが、今は病気になってから出会った人、出産してから出会った人を大切にし、病気になったことをお話しすることで自分の病気と向き合えるようになりました。私はこれからの未来に、もし誰にも話せず、病気のことで今も苦しんでいる人と出会ったなら、その苦しみを楽にできるよう背中を押してあげたいです。読者のみなさんも、少し寄り添って背中を押す手助けをしてもらえると嬉しいです。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
編集部まとめ
多発性脳梗塞は40代以上の中高年に多い傾向のある疾患で、発症には高血圧や生活習慣、感染症、遺伝など様々な要因が関係しているとされています。Hanaさんのように若い人でも稀に発症することはありますが、若さが理由で発見が遅れてしまうこともあります。発症から6時間以内が治療のゴールデンタイムとされていることから、体の麻痺や動きにくさなどの異常を感じたら、すぐに救急搬送を依頼することが大切です。

記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。