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【闘病】「まさかの難病…」 “筋肉痛”のように感じた不調の正体は『皮膚筋炎』

 公開日:2025/09/20
【闘病】「変だな」 ペットボトルが開かなかったのは『難病』のせいだった《皮膚筋炎》

皮膚筋炎は、筋肉に炎症が起きる膠原病の一種で、難病に指定されています。たまよさん(仮称)の場合は、ただの筋肉痛と思っていた不調から、ペットボトルのキャップを開けられなくなり、病院を受診しました。ステロイド薬の治療では、大変な苦労をしているそうです。そんな彼女に、皮膚筋炎の発症から治療の副作用による困難を語ってもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年3月取材。

たまよさん

体験者プロフィール
たまよ(仮称)

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福岡県在住、1983年生まれ。看護師。2023年に膠原病内科を受診、皮膚筋炎の診断を受ける。入院しステロイド治療を開始して5週間後に退院。筋力低下が改善せず、リハビリテーションや難病ピアサロンに通い、約1年後に職場復帰。自身の病気経験を活かしながら業務をおこなっている。月1回膠原病内科を受診し、ステロイドと免疫抑制剤の内服治療を継続している。

ペットボトルのキャップが開けられない

ペットボトルのキャップが開けられない

編集部編集部

たまよさんが感じた最初の体の異変は何でしたか?

たまよさんたまよさん

初めは下肢の筋肉痛でした。症状は週単位で悪くなり、立ち上がる際に支えが要る、腕を上げることや箸を持つことが疲れる、朝起き上がるのにも時間がかかるようになりました。「変だな」と思いながらも仕事を続けていたのですが、ある日ペットボトルのキャップが開けられなくなったのをきっかけに、病院を受診しました。また、筋肉痛が現れる数週間前から、手荒れがひどく、保湿しても全くよくなりませんでした。そのときはまさか難病の症状だとは思ってもみませんでした。

編集部編集部

そこから皮膚筋炎と診断されるまでの経緯を教えてください。

たまよさんたまよさん

職業が看護師だったこともあり、「この症状は膠原病の一種ではないか」と思って膠原病内科を受診しました。自覚症状と採血結果から皮膚筋炎が疑われ、より詳しい検査をするために翌日入院。採血や画像検査、生検をおこない、皮膚筋炎と診断されました。

編集部編集部

診断されたとき、どんなお気持ちでしたか?

たまよさんたまよさん

私にとっては未知の病でしたので、医師から説明を受けても、むしろ驚かなかったです。ステロイド治療と聞き、「ムーンフェイス(顔が丸くなる症状)になることや、気分が激しく変動するのも嫌だな」としか思っていませんでした。インターネットで「皮膚筋炎」と検索すると、死亡率の高い病気じゃないとわかり、安心したのを覚えています。

編集部編集部

初めは実感がなかったのですね。

たまよさんたまよさん

診断直後は実感がなく、難病という意味もわかっていなかったです。治療期間が長くなる中で、実感していくこととなりました。

避けられないステロイドの副作用

避けられないステロイドの副作用

編集部編集部

医師からは、病気についてどのような説明をされましたか?

たまよさんたまよさん

ステロイドの内服治療になり、病状に合わせてステロイドの量を少しずつ減量していくことや、ステロイドの副作用について説明を受けました。自分でも積極的にリサーチをして、副作用が出たらすぐに受診しています。病気の症状や治療法などを調べ、今できること、今後起こりうることを受診時に医師に教えてもらい、一緒に考えるという感じです。

編集部編集部

ほかにはどんな治療をしていますか?

たまよさんたまよさん

治療開始時はステロイドの内服治療のみで、今はそれに加え免疫抑制剤の内服治療もおこなっています。月1回膠原病内科を受診し、自覚症状や検査データに合わせてステロイドの減量をおこなっています。45mgから開始して少しずつ減量し、今は5mgで継続しているところです(取材時)。

編集部編集部

どのような効果や副作用がありましたか?

たまよさんたまよさん

ステロイドの内服開始後、皮膚筋炎の症状は改善したのですが、副作用にはとても悩まされています。私の場合、筋力低下、骨壊死(歩行時に両踵の痛み)、ムーンフェイス、脱毛、結膜浮腫(目のしめつけ感、白目がトロトロした感じ)、白内障、脂質異常など、たくさんの副作用があります。精神面では、ステロイドによる過食や気分の変動がきつかったのですが、ステロイドを減量していくと改善していきました。副作用を考えるとステロイドをさらに減らすか、できれば服用したくないのですが、再燃のリスクがあるので実現できない状況です。

編集部編集部

病気発症後、困った出来事はありましたか?

たまよさんたまよさん

生活や職場復帰が大変でした。退院して1年程は筋力がなかなか戻らず、車の運転が難しかったので、公共交通機関を利用しました。バスのステップに上がれなかったり、満員電車で立ち続けることが大変だったり、横断歩道を渡り切るのが時間内ぎりぎりだったりして、半年くらいは外出が困難でした。ヘルプマークをつけてからは、それに気付いてくれる人に助けられたこともありました。

編集部編集部

どのように職場復帰されましたか?

たまよさんたまよさん

復職までには1年かかりました。もともとは3カ月程度での復職を考えていたのですが、体調面や職場の状況などさまざまな理由から職場と話し合い、休職しました。そのときは「このまま働けなくなったらどうしよう。これからの人生どうなるのだろう。お金は?」と、将来についてとても不安になりましたが、職場と何度も話し合いながら復帰を果たせました。

同病者との交流や多くの人からの支えが力の源

同病者との交流や多くの人からの支えが力の源

編集部編集部

どなたかに相談などされましたか?

たまよさんたまよさん

家族や友人、難病支援センターのスタッフさんや難病ピアサロン(難病を抱える患者やその家族が、同じ経験を持つほかの人と交流し、情報交換や悩みを共有できる場)に参加されている経験者さん、関わってくださっている医療者の人たちに何度も相談に乗ってもらいました。この時期は本当につらかったです。経験者さんと直接お話できたことがとてもためになりました。

編集部編集部

発症前と発症後の生活の変化を教えてください。

たまよさんたまよさん

発症前は仕事人間で、毎日の残業は当たり前でしたが、病気になってからは自分の体調を一番に考えるようになりました。仕事は好きですが、仕事を受ける前に「この仕事を受けても、体調面は大丈夫だろうか?」とイメージするようになりました。休日は自宅でゴロゴロしたり、家族や友人との食事や旅行を楽しんだりしています。できるだけ「今したいこと、今できること」を楽しむようにしています。今までは白黒はっきりさせたい性格だったのですが、病気発症後は白黒はっきりできないことを多く経験し、グレーな状況も許せるようになったと思います。

編集部編集部

発症から現在までの心の支えは何ですか?

たまよさんたまよさん

家族や友人ですね。両親には、身体的にも精神的にもとても支えてもらっています。また、主治医やリハビリテーションの先生、難病支援センターのスタッフさんたち、経験者の人たちにも支えられています。

編集部編集部

同じ病気を経験している人との交流は力強いですね。

たまよさんたまよさん

皮膚筋炎は患者数が少ないので、同じような病気の人とお話できることはとても貴重です。副作用への対応方法や日常生活での困りごとを話し合い、工夫や経験を教え合うことなどをしています。「もうだめだ」と思っても、そこで話し合うことで解決策が見つかることも多いです。それ以上に、楽しくおしゃべりして共感し合え、「明日からも頑張ろう」と活力がもらえます。

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

たまよさんたまよさん

ステロイドの副作用に悩まされながらも、現状維持を目標に生活しています。少しきついと思ったら休息をとるようにして、大好きな仕事をしながらの生活を楽しんでいます。筋力の低下でリハビリテーションに通っているのですが、先生とおしゃべりするのが大好きです。復職前には、いろいろ相談に乗ってもらいました。「一緒に頑張りましょうね」と声をかけてくださり、「一人じゃない」と思えたことが復職につながりました。身体の状態をみてもらうだけでなく、病気の状況や悩み、その日の出来事を聞いてもらっています。

編集部編集部

医療従事者に期待することはありますか?

たまよさんたまよさん

皮膚筋炎は患者数が少ないため、病気や治療、生活や仕事に関して情報を得られにくい状況にあります。入院中はそばに医療者がいるのですぐに相談できますが、退院後はそうもいきません。どこに相談すればよいのか相談窓口を教えてもらえるととても助かります。また、なかなか進まないのかなと思いますが、ステロイド薬以外の治療薬の開発を切に願っています。

編集部編集部

最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

たまよさんたまよさん

まずは皮膚筋炎という病気を知ってほしいです。この病気に完治はなく、一生付き合っていく必要がありますが、支えてくれる人はたくさんいます。困っていることがあれば声に出してみてください。一緒に頑張りましょう。

編集部まとめ

たまよさんの体験談から、「皮膚筋炎」という難病について知ることができました。治療による様々な副作用に悩まされながらも、現在も看護師として活躍されているたまよさんの原動力のひとつは、たくさんの人の支えだと感じました。そして、それは「困っていることがあれば声に出す」という行動をした結果だと思います。誰かに相談することで、乗り越えられることがきっとあるはずです。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

田島 実紅

記事監修医師
田島 実紅(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

この記事の監修医師