【闘病】下がらない微熱の正体は「家族性地中海熱」 診断つくまでが長かった…

話を聞いたとしえさん(仮名)は、風邪をひいた後、微熱が何カ月も続きました。次第に体調が優れない日が増え、ついには1カ月の検査入院をすることに。あらゆる検査を受けても原因がわからない状態が長く続き、ようやく「家族性地中海熱」の診断がついたときには、驚きよりもまず「ホッとした」と言います。完治する治療法のない難病と向き合いながらの生活、病気とともに生きる今の思いなどを語ってもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年2月取材。

体験者プロフィール:
としえ(仮称)
1978年生まれ。広島県在住。旅好きで、体調のよいときはよく旅行していたが、現在は年に1回程度。特に好きなのは京都とディズニーリゾート。家ではYouTube鑑賞や音楽鑑賞、読書などを愉しんでいる。現在の推しは「ANAチーム羽田オーケストラ」。「空港のライブ」「観光地のライブ」の鑑賞は日課で、ほかにホワイトタイガーの赤ちゃんなどの動物動画もよく観ている。プロフィール写真はヘアドネーション(自身の髪を寄付する活動)をおこなったときのもの(3度実施)。
「微熱が続く…」正体不明の体調不良との闘い

編集部
最初に不調や違和感に気づいたのはいつですか?
としえさん
約20年前になります。風邪をひいた後、何カ月も微熱が続きました。すでに社会人だったのですが、学び直しのために半期だけ大学に行くシステムを利用していたので、しんどいと思いながらも頑張って大学に通っていました。
編集部
受診から、診断にいたるまでの経緯を教えてください。
としえさん
熱が下がらなかったので、学校の帰りに病院で点滴をしてから家に帰るということを何度かおこなっていましたが、状況は気休め程度しか変わらずでした。さすがにこれはおかしいということで、1カ月ほど検査入院しましたが、やはり原因ははっきりせず「不明熱」という診断で退院し、大学病院の総合診療科に行くことになりました。しかし、そこでも教授クラスの先生から「原因不明」と言われてしまいました。ほかにも県外の慢性疲労症候群のクリニックなどにも行きました。
編集部
原因不明の状態がずいぶん長く続いたのですね。
としえさん
はい。ですが、その後も状況は変わらず、仕事もなかなかできずに騙し騙しといった感じでなんとか続けていました。40度の熱が出て緊急入院ということも何回かありました。ある時、血液検査をすると細菌感染していることがわかり、メロぺネムを点滴したのですが、アナフィラキシーショックで意識消失し、3日間ICUにいたこともありました。さらにその後、結節性紅斑(皮膚の下にある脂肪の層に炎症反応が起こる)で足が腫れ、皮膚科からリウマチ科を紹介されました。リウマチ科の先生から勧められて遺伝子検査を受けましたが、「非典型」とのことでした。
編集部
結局、診断はついたのですか?
としえさん
最終的には、「家族性地中海熱」と言われました。それでもショックよりは、これまでのつらさの原因がやっとわかってホッとしたという気持ちが強かったです。長いこと苦しんできたので「やっぱり病気だった」「怠け病ではなかった」と安心感すらありました。
ようやくたどりついた診断名「家族性地中海熱」

編集部
家族性地中海熱とはどんな病気なのでしょうか?
としえさん
発症すると、突然40度近くの高熱と腹膜炎や胸膜炎、心膜炎、関節炎、精巣しょう膜炎、髄膜炎など、臓器を包む“膜”などに強い炎症が現れるようになります。症状が発作的に現れては改善するというサイクルを繰り返します。そのため発作がある期間は高熱のほか、炎症が起きている部位によって腹痛や胸痛、関節痛、腰痛、頭痛などが現れます。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
としえさん
指定難病でもあり、特効薬や完治する治療法などはないため、薬で症状を抑えながら様子を見ていきましょうとのことでした。実際の治療では、「コルヒチン」というお薬を飲んで経過観察をしています。
編集部
診断の前後で変化したことを教えてください。
としえさん
病気がわかる前はしんどくて大変でしたが、病気がわかって「レコノート」という自己免疫性疾患の体調管理のためのノートを毎日つけています。自分の行動を客観的に見つめることができて、以前は無意識のうちに無理をしていたことがわかりました。今では「無理したら後がきつくなる」とわかっているので、無理をしないように気をつけています。身体的・精神的なストレスなどが症状悪化に関係している可能性があるので、可能なかぎりこれらを避ける生活を送るのがベターなようです。
編集部
今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
としえさん
遺伝子科やその病気の検査などができる所があるのを知らなかったので、早く知りたかった。入院しても原因がわからず、しんどくてめまいが酷いのに退院を勧められたり、先生から、「これ以上来てもらっても……」と煙たがられているようなもの言いをされたりなど、きつい想いもしました。だからこそ、診断してもらえたときは、本当にホッとしました。
診断後の生活

編集部
現在の生活はどうですか?
としえさん
診断された当時は月1回の通院だったのが、現在は症状が落ち着いたため、2カ月に1回となっています。しかし、症状が落ち着いているからといって、体調がよいというわけではありません。ずっと微熱があり、現在は冬(取材時)なので少しは動けていますが、夏は暑くて動けないのです。常に疲れた感じがあり、生活は何とかおくれていますが、しんどい日が多くあります。家族と一緒に住んでいるので、なんとか生活はできています。1人だと生活できていなかったと思うので、家族には感謝しています。
編集部
季節によっても変わるのですね。
としえさん
そうです。夏でも冬でも、氷枕が手放せず、可能なかぎり氷枕で横になっています。夏などの暑い時期は、それに冷却シートも加えることがあります。夏場は氷枕や冷却シート、さらに冷却ローション、クールリング(首に巻いて使用する冷却グッズ)、扇子などが手放せないので大変です。できるだけ、クーラーのあるところに居るようにしています。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
としえさん
「不明熱」という診断名で片付けないでほしいです。医学は日々進歩しているので、お忙しいとは思いますが、情報のアップデートもしていただけたらと思います。
編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
としえさん
ちょっと体がつらいときは病院に行ってください。ドクターショッピングになってしまうかもしれませんが、必ず原因があるはずなので、諦めないでほしいです。世の中にはまだ一般的には知られていない難病や障害がたくさんありますが、今はネットで調べたり、SNSなどで情報収集したりできるので、そういうものも活用してみましょう。患者さんたちが賢くなっていける時代だと思っています。
編集部まとめ
長年続いた原因不明の微熱に悩まされながらも、諦めずに向き合い続けたとしえさん。診断がついたことで、ようやく自分の病気と向き合えるようになりました。「ちょっとでも体がつらいときは病院へ行ってほしい。何度病院を変えても、必ず原因があるので諦めないでほしい」と語るとしえさんの言葉には、同じように原因不明の症状に苦しむ人への強いメッセージが込められています。その想いが、少しでも多くの人に届きますように。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
田島 実紅(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。