婦人科連携が生む橋渡し研究——子宮頸がん第Ⅰ相医師主導治験への道
編集部
婦人科との橋渡し研究について教えてください。
安藤教授
もともとウイルス関連リンパ腫の治療研究から始まり、子宮頸がんもヒトパピローマウイルスが原因ですので、婦人科の先生に共同研究をお願いしたところ快諾いただき、長年開発を進めてきました。
私達はiPS細胞由来 抗原特異的キラーT細胞を用いるがん・ウイルス制御を目指しています。基礎研究で有効性を確認し、安全性評価を重ねたうえで、GMP 準拠の細胞加工施設で製造し、国の支援も受けて今回医師主導治験を開始できました。
編集部
現在の治験では、どのような患者さんをリクルートしていますか?
安藤教授
再発・再々発で標準治療がない、あるいは無効となった患者さんが対象です。
編集部
将来的には、より早期段階での適用も期待できますか?
編集部
血液内科で医師主導試験が多い理由は何でしょうか?
安藤教授
固形がんは手術で腫瘍を摘出して研究しますが、血液がんは末梢血や骨髄から腫瘍細胞を得られ、薬剤感受性も高いため研究・治療開発が進みやすいのです。今までも血液分野で確立された治療が固形がんに応用されてきました。そのため、橋渡し研究が進みやすい環境にあります。
編集部
現在進行中の治験で特に注目してほしいものはありますか?
安藤教授
医師主導治験はもちろんですが、近年はグローバル規模の企業治験にも参加させていただく機会が増え、世界的に注目される試験に携わることができます。CAR-T療法や二重特異性抗体の最新試験も複数進行中で、大きな期待を抱いています。
編集部
ありがとうございます。記事をご覧の方やご家族で治験参加を希望される方もいらっしゃると思います。治験に参加するメリットと注意点があれば教えてください。
安藤教授
現在は有望な治験が次々と始まっており、私たち自身も大いに期待しています。外来では治験についてよくお話が聞けるように、ご家族も一緒にいらしてください。
治験最前線:参加のメリットや注意点、連絡の窓口について
編集部
改めて、治験参加の利点と注意点をお聞かせください。
安藤教授
治験、特にランダム化比較試験では標準治療群に割り当てられる可能性があり、必ずしも新薬を受けられるわけではありません。その点は必ずご説明しています。また、参加を希望されても試験の基準を満たさない場合は、参加できない場合もあります。
良い点としては、現行の標準治療を上回る成績が期待できる可能性があることです。コントロール群になった場合でも、従来の標準治療を受けられます。その両面をしっかりお伝えしています。
編集部
治験に参加したい場合、主治医を通じて連絡するのが一般的でしょうか?
安藤教授
主治医の先生経由でのご紹介が多いですが、他院の先生から当科へ直接ご連絡いただく場合や、患者さんご本人が治験センターへ直接お問い合わせくださる場合もあります。様々な方法があります。
桑鶴院長
当院には「臨床研究治験センター」が窓口となり、患者さんや医師からの問い合わせを受け付けています。センターが内容を確認し、該当しそうな治験があれば私たちへ紹介し、適合していれば受け入れる体制です。月に 10〜20件ほど依頼があり、必要に応じておつなぎしています。
安藤教授
腎機能や心機能などの条件は治験ごとに厳格に設定されていますし、ほかのがんの既往がある場合は、治療後5年以上経過していないと参加できない試験もあります。
編集部
最後に、治験参加を検討している方へメッセージをお願いします。
安藤教授
ままずはお気軽にお問い合わせください。私たちがしっかりご説明いたします。治験は多数あり参加基準などが分かりにくい点も多いと思いますので、まずはご相談いただければ幸いです。
編集部まとめ
CAR-T療法をはじめとする血液がん治療の進化により、かつては困難とされた再発・難治例にも光が差し始めています。順天堂医院血液内科では、無菌病棟の高度運用と多施設連携によって、治療と研究の両面で革新が進んでいます。患者一人ひとりに応じた先進的な治療と、希望につながる治験の門戸が広がる今、血液がんにおける“治るを目指す医療”が、より現実のものとなりつつあります。本稿が読者の皆様にとって、血液がん治療への理解と新たな選択肢を考えるきっかけとなりましたら幸いです。