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「白内障」になると転びやすくなる? 日常生活への影響や早期発見のポイントを眼科医が解説!

 更新日:2025/07/31

高齢者に多い「白内障」は、見えにくさだけでなく、転倒などのリスクにもつながる疾患です。また、自覚症状に気づかず、見過ごされがちなのだそうです。そこで今回は、白内障が引き起こすリスクや受診のタイミング、安全に生活するためのポイントなどを「あおば眼科クリニック」の小澤先生に解説していただきました。

小澤 憲司

監修医師
小澤 憲司(あおば眼科クリニック)

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岐阜大学医学部医学科卒業。その後、JA愛知厚生連豊田厚生病院、美濃市立美濃病院、岐阜大学医学部附属病院、大垣市民病院などで経験を積む。2023年、岐阜県瑞穂市に「あおば眼科クリニック」を開院。日本眼科学会認定専門医・ボトックス注射認定医。

白内障とは

白内障とは

編集部編集部

まず、白内障について教えてください。

小澤 憲司先生小澤先生

白内障は、目の中にある水晶体というレンズが濁ってくる疾患です。光の通り道である水晶体が曇ることで視界がかすんだり、まぶしさを感じたりします。放っておくと視力が低下し、生活にも支障が出るようになります。

編集部編集部

なぜ、水晶体が濁るのですか?

小澤 憲司先生小澤先生

最も多いのは「加齢」です。加齢に伴う水晶体の濁りは40代頃から始まり、80代になるとほとんどの人にみられるとされています。ほかにも、糖尿病やアトピー性皮膚炎、ステロイド薬の長期使用、目の外傷、先天的な要因、さらに強い紫外線の影響なども白内障の発症に関係していると考えられています。

編集部編集部

どのような症状が出たら、白内障を疑った方がいいのでしょうか?

小澤 憲司先生小澤先生

典型的な症状としては、視界がかすむ、二重・三重に見える、まぶしい、暗い場所で見えにくいなどがあります。しかし、最初はごくわずかな変化なので気づかないことも多く、ゆっくり進行するため、症状を自覚した時点でかなり進んでいることも多くあります。また、見えにくさを感じても「年のせい」と思う人も多いようですが、これらは白内障の初期サインである可能性があるので、眼科に相談することをおすすめします。

編集部編集部

白内障は治る病気なのでしょうか?

小澤 憲司先生小澤先生

進行性の疾患であるため、放っておいても自然に治ることはありません。目薬で進行を遅らせることはできますが、濁った水晶体を透明に戻すことはできないので、ある程度進行したら手術が検討されます。

白内障で転倒? 見えにくさが引き起こすリスクとは

白内障で転倒? 見えにくさが引き起こすリスクとは

編集部編集部

白内障が転倒のリスクを高めると聞きました。

小澤 憲司先生小澤先生

はい。視界のぼやけや距離感のずれにより、段差につまずいたり、障害物に気づかなかったりして転倒してしまうケースが増えます。「たかが転倒」と思うかもしれませんが、高齢者の骨折や寝たきりのきっかけになることもあり、注意が必要です。

編集部編集部

実際、そのような相談を受けることは多いのでしょうか?

小澤 憲司先生小澤先生

普段通りの道を歩いているのに、最近よくつまずくというご相談は少なくありません。実際に、転倒して目をけがして来院された患者さんが、診察の結果、かなり進行した白内障だったというケースもあります。ご本人はもちろん、ご家族も「そんなに見えていなかったなんて……」と驚かれることが多く、気づかないうちに症状が進んでいることもあるのが白内障の怖いところです。

編集部編集部

そうなのですね。

小澤 憲司先生小澤先生

繰り返しになりますが、白内障の初期症状はほとんどありません。また、症状が出ても進行が緩やかなため、本人が自覚していないケースも多くあります。「歩くペースがゆっくりになって、足元ばかり見るようになった」「夜間の外出を避けるようになった」「ご飯を食べるスピードが遅くなり、『これは何?』と食事の内容を聞くことが増えた」などの変化に周りが気づいたら、眼科の受診を提案してみることをおすすめします。

白内障の予防や早期発見するためには?

白内障の予防や早期発見するためには?

編集部編集部

白内障予防のためにできることはありますか?

小澤 憲司先生小澤先生

完全に防ぐことはできませんが、紫外線対策や生活習慣の改善、抗酸化作用のある食品を意識的に摂ることなどは、白内障の進行予防に一定の効果があると考えられています。

編集部編集部

では、早期発見のためにはどうしたらいいですか?

小澤 憲司先生小澤先生

特に40歳を過ぎたら、一度は眼科で検査を受けておきましょう。初期の白内障は自覚症状がほとんどないため、検診で発見されるケースも多い傾向にあります。気になる症状がなくても、定期的なチェックが大切です。

編集部編集部

受診を迷う人も多いと思います。

小澤 憲司先生小澤先生

白内障は加齢とともに誰にでも起こる可能性のある、ごく身近な病気です。視力の変化を「歳のせい」と決めつけず、気になることがあれば早めに眼科を受診してください。早期に対応することで、視力低下だけでなく、転倒などのリスクも避けやすくなります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

小澤 憲司先生小澤先生

最近では、白内障と認知症の関係が注目されています。視力が落ちることで脳への刺激が減り、それが認知機能の低下につながる可能性があると言われています。一方で、白内障手術によって視覚刺激が回復し、軽度の認知機能障害が改善したという報告もあります。こうした背景からも、白内障は早期発見・早期対応が大切です。見えにくさや視界の変化を感じたら、早めに眼科を受診することをおすすめします。

編集部まとめ

白内障は加齢に伴って進行する誰にでも起こり得る病気ですが、視力低下による転倒など、思わぬリスクにつながることもあります。自分では気づきにくいため、40歳を過ぎたら定期的な眼科検診を習慣にし、少しでも違和感を覚えたら早めに受診することが、安心・安全な毎日を送るための第一歩となります。

医院情報

あおば眼科クリニック

あおば眼科クリニック
所在地 〒501-0224 岐阜県瑞穂市稲里683-1
アクセス JR「穂積駅」 バスで20分
診療科目 眼科

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