「関節リウマチ」の初期症状をご存じですか? 完治することはあるの?【医師解説】

朝、手指がこわばって動かしにくい、関節の腫れや痛みが気になる。それは、もしかすると関節リウマチのサインかもしれません。関節リウマチとはどんな病気で、どのように診断されるのでしょうか? そこで「みやもと内科・リウマチ科クリニック」の宮本俊明先生に、関節リウマチの初期症状や受診のタイミング、診断の流れについて詳しく話を聞きました。

監修医師:
宮本 俊明(みやもと内科・リウマチ科クリニック)
リウマチとは? ポイントを医師が解説!!

編集部
関節リウマチとはどのような病気なのでしょうか?
宮本先生
関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、こわばりが生じる疾患です。放置すると、骨や軟骨が破壊され、関節の変形や機能障害を引き起こす可能性があります。通常は自己を守るはずの免疫が異常をきたし、自らの関節を攻撃してしまうのが特徴です。
編集部
リウマチ患者は日本にどのくらいいて、どういう人がなりやすいのでしょうか?
宮本先生
日本全国で約70~100万人ほどいると言われており、決してまれな病気ではありません。また、男女比は1:3~4と比較的女性に多い病気です。そして、高齢者の病気と思いがちですが、20~40代での発症も珍しくなく、すべての年代の人がいつでも関節リウマチになる可能性があると言えます。
編集部
関節リウマチの原因は何でしょうか?
宮本先生
発症の原因は、今のところ残念ながら分かっておりません。しかし、おそらく遺伝的な要因にいくつかの環境的な要因、特に何らかのウイルス感染、ストレス、そして喫煙も関係していると言われており、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症するのではないかと考えられています。よく遺伝しますかと聞かれることもありますが、関節リウマチは遺伝病ではありませんので、気にする必要はありません。ただし、なりやすさの遺伝はあるかもしれないので、ご家族と同様の症状があるようであれば、一度リウマチ専門医に相談してみてもよいと思います。
編集部
関節リウマチの初期症状にはどのようなものがありますか?
宮本先生
代表的な初期症状としては関節の痛み、腫れ、こわばりです。とくにこわばりについては、たとえば朝起きたときにペットボトルが開けにくいといった力の入りにくさや「ごわごわ」するような感覚がある場合には、痛みや腫れがなくても注意した方がよいと思います。もちろんぶつけたり、ひねったりした記憶もないにもかかわらず、痛み、腫れが少なくとも1カ月以上持続する場合は、病院の受診を検討する必要があると思います。
編集部
症状が軽くても、やはり受診したほうがよいのでしょうか?
宮本先生
そうですね。関節リウマチは早期のうちに治療をはじめることで、骨や関節の破壊を防ぎ、治療の効果も出やすいことがわかっています。症状が出てから時間が経過すると、関節が壊れてしまうだけでなく、治療の反応が鈍くなることもわかっているため、違和感を覚えたらすぐに医療機関を受診してもらいたいです。
編集部
関節リウマチと似た症状が出る病気もありますか?
宮本先生
変形性関節症や腱鞘炎、痛風、偽痛風など整形外科的疾患のみでなく、種々のウイルス感染症や炎症性腸疾患、さらには関節リウマチ以外の膠原病疾患など、様々な疾患でも同様の症状が出る可能性があります。関節リウマチの診断には関節症状を起こすそのほかの疾患を除外することが重要なので、自己判断せずに、医療機関で一度診てもらうことが大切です。
リウマチの診断と治療の流れを教えて!

編集部
医療機関ではどのような検査をするのですか?
宮本先生
まずは問診と視診・触診に加えて、血液検査、X線検査をおこないます。また関節超音波検査、MRI検査なども診断に必要な際は適宜おこないます。たとえば血液検査でリウマチの反応が見られない関節リウマチも約2割存在することがわかっていますので、単純に採血検査のみで、診断することは不可能です。また、前述のように関節リウマチと同じような関節の痛みを来たしうる病気はたくさんあるので、それらの病気の可能性を否定するためにも様々な検査が必要になります。
編集部
関節リウマチは生活が送りづらくなるイメージがあります。
宮本先生
以前は「無理をしなければ痛み、腫れが出ず、それなりに今の生活を続けられる状態」が治療目標でしたが、現在は全く違います。現在の治療目標は「好きなことをあきらめない、関節リウマチの発症前の生活を完全に取り戻した状態」です。治療をすれば、関節リウマチになったからといって仕事や趣味などを我慢する必要はありません。
編集部
関節リウマチと診断されたら、どのような治療があるのでしょうか?
宮本先生
治療の中心となるのは薬物療法であり、免疫の異常を抑制する抗リウマチ薬(DMARDs)が使用されます。これには、メトトレキサートをはじめとする内服薬のほか、生物学的製剤と呼ばれる注射薬が含まれます。さらに近年では、生物学的製剤と同様の効果が期待されるJAK(ジャック)阻害薬という内服薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。これらの薬剤は、それぞれの患者の病状や進行の程度、生活スタイルに合わせて最適な治療法が選択されます。もちろんすでに関節破壊による機能障害が進行している場合、機能回復目的や変形した関節の見た目を改善する目的で、様々な外科的手術を検討することも重要です。また体の機能回復を目指す目的で理学療法(物理療法、運動療法)、作業療法といったリハビリテーションもあり、個々の状態に応じて適切におこなうことが重要です。
編集部
注射薬というと、不安に感じる人もいそうです。
宮本先生
たしかに「注射=特別な薬」と思われる人もいますが、じつは現在は、より高い治療目標を達成するために多くの患者さんが使っています。
編集部
治療中に気をつけることはありますか?
宮本先生
治療中は定期的に通院をして、副作用が出ていないかや関節リウマチが落ち着いているかをチェックしていくことが重要です。また、風邪をひいたときの風邪薬と違って、落ち着いた後も治療を継続していくことも必要になります。
早期発見・早期治療がカギ「痛みは我慢しない」

編集部
今の痛みが関節リウマチかどうかわからず、受診のタイミングを迷っている人も多いと思います。
宮本先生
「まだ我慢できるから」「年のせいかも」と様子を見る人も多いのですが、関節リウマチは早期発見・早期治療開始・早期治療目標達成が極めて重要です。発症早期ほど骨が壊れる速度が速く、治療の効果も出やすいので、気になる症状が出たら我慢せずに受診することが重要です。
編集部
治療で完治するのですか?
宮本先生
現時点で関節リウマチは完治する病気ではありませんが、前述のとおり、「好きなことをあきらめない、関節リウマチの発症前の生活を完全に取り戻した状態」は、すべての関節リウマチ患者さんの達成可能な目標です。その状態は、いわば完治といっても差し支えないぐらいの状態だと思います。しかし、あくまでも治療は継続していく必要があります。
編集部
「発症前のような生活を取り戻す」というのは本当に可能ですか?
宮本先生
今の関節リウマチ治療は非常に進歩しており、適切なタイミングで、適切な治療を受けることで、発症前と変わらない生活を送れる可能性は高いです。実際に、趣味のマラソンなどのハードなスポーツを再開された人や、体を酷使するような仕事を続けられている人がたくさんいます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
宮本先生
関節リウマチにより破壊されてしまった骨を元通りに治すことは難しいからこそ、早期診断、治療開始、早期治療目標達成が重要になります。早期ほど症状が軽く、採血やX線検査で異常が見られないことあります。現在受けている治療で痛みやこわばりに改善が見られない場合は、リウマチ専門医を受診することをおすすめします。
編集部まとめ
関節リウマチは、早期の段階で発見し治療をはじめることで、関節の破壊や変形を防ぎ、生活の質を保つことが可能な病気です。「朝、手がこわばる」「関節が腫れて痛い」などの症状に心当たりがある人は、自己判断せず、早めの医療機関の受診をおすすめします。
参考)
医院情報

| 所在地 | 〒430-0906 静岡県浜松市中央区住吉2丁目8番地21号 |
| アクセス | 浜松駅より【13のりば50:山の手医大線】乗車「せいれい病院入口」より徒歩1分 |
| 診療科目 | リウマチ科・内科 |

