【闘病】”たかが鼻血”はステージ4『鼻副鼻腔がん』だった 嗅覚失い「もっと検査が早ければ…」(2/2ページ)

嗅覚を失うという悲しさ
頭の傷痕はほぼ綺麗になり、髪の毛が生えてきている。鼻は外側からの傷がなく、術前と見た目の変化はない
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
森さん
退院直後は目の異常で車の運転はできず、貧血も酷くて午前中は思うように動けませんでした。一番つらかったのは、嗅覚を失ったことです。食べることやお酒を楽しむこと、料理やお菓子作りも好きでしたが、何のにおいも感じないのです。カレーもキムチもガーリックも……。食べる楽しみは半減しました。今まで大好きだったものが、まずく感じてしまい悲しくなります。得意だった料理も、味が分からないので息子に味見をしてもらっています。そのほかにも、生活臭や季節の香り、思い出の香りなどたくさんあると思います。うちは家族でディズニーリゾートに行くのが大好きでよく遊びに行くのですが、入園したときの甘いポップコーンの香りやアトラクションの独特な香りなども一切分からなくて悲しかったです。
編集部
治療中やこれまでに森さんが心の支えにしてきたものは何でしょうか?
森さん
協力してくれた家族や連絡をくれた友人たちです。息子は夏休みだったこともあり、しばらくは実家で預かってもらい、楽しそうな写真を送ってくれました。友人は、お勧め漫画を教えてくれたり、励ましのメッセージを送ってくれたりしました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
森さん
おかしいと思ったら医師にはっきり伝えて、それでも解決しなければほかの病院へ行けと言いたいです。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
森さん
脳の手術の影響で頭から右の顔面に麻痺のような痺れと痛みがあります。いつ治るか分からないし、元には戻らないかもしれないと言われました。あとは、手術のときに脳を守るための膜(硬膜)を切除しているので、硬膜を作り直すためにお腹の脂肪を取り、下腹に傷が残りました。見た目には分かりませんが常に顔が痺れて、頭はヘルメットをかぶっているような感覚です。退院後の数カ月は貧血できつかったのですが、薬を飲んで改善され、目もだんだん元に戻って今は普通に運転もできます。ただ、もう何のにおいも分からないのが本当につらいです。
編集部
この病気について、あまり詳しく知らない人に伝えたいことは何ですか。
森さん
鼻のがんは比較的喫煙者の40代以上の男性に多いそうで、「なぜ私なのか」と思いました。健康診断でも鼻は特に詳しい検査はしないし、よほど症状が出ない限り大きな病気とは考えないと思います。鼻腔がんは症状が出たときには進行しているケースが多く、実際私はステージIV Aでした。今後も転移などの恐怖に怯えて生きていかなくてはいけませんが、検査をしたおかげで手術ができ、化学療法なしで生活できています。異変を感じたらすぐに病院に行ってください。
編集部
医療従事者に期待することはありますか?
森さん
最初のクリニックで鼻血が出続けていたのに1年近く検査をしてもらえなかったことは、今でも疑問に思っています。もっと早ければ嗅覚を失わずに済んだのではと思ってしまいます。そして、入院中に泣いていると涙を拭いてくれたり、励ましたりしてくれた看護師さんたちにはとても感謝しています。
編集部
最後に読者へメッセージをお願いします。
森さん
鼻血ががんの症状だなんて想像もしていませんでした。もっと早く気づけば嗅覚を失わずに済んだかもと思うこともあります。でも、がんが見つかって手術ができて今この取材を受けられているだけでもありがたいです。同じくらいの年齢だと、忙しくてなかなか自分の健康にまで気にかけるのは大変だと思います。ご自身のことはもちろん、大切な人達を悲しませないためにも、こういうケースもあると頭の片隅に入れておいていただきたいです。
編集部まとめ
匂いを感じられるというのは、とてもありがたいことなのですね。そして、異変を感じたらすぐに受診する大切さを改めて気づかされました。がんは体のあらゆる部分にでき、小さな異変ががんの症状かもしれません。森さんの体験談がみなさまの踏み出す第一歩につながりますように。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。





