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【闘病】耳の裏の『できもの』は「濾胞性リンパ腫」のせいだった… リンパ系の「がん」

 公開日:2025/04/19

濾胞性(ろほうせい)リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ球のうち、Bリンパ球ががん化してできる悪性リンパ腫の一つです。病気の進行が比較的遅いタイプ(低悪性度)のリンパ腫で、年単位でゆっくりとした経過をたどることがほとんどです。また、明確な原因やリスク因子は確認されていません。自覚症状としても首、わきの下、足の付け根などのリンパ節の腫れを除いて、無症状のことも多く、進み具合も緩やかですが、微熱、倦怠感、寝汗、体重減少など全身症状が出現した際に抗がん剤治療や放射線治療などがおこなわれます。濾胞性リンパ腫と向き合いながらもかけがえのない今を生きる、やまけんさん(仮称)にこれまでの話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年11月取材。

やまけんさん

体験者プロフィール
やまけんさん(仮称)

プロフィールをもっと見る

神奈川県厚木市在住、1972年生まれ。4人家族で妻と社会人の長女、大学生の次女がいる。濾胞性リンパ腫と診断された当時は地元の企業で課長を務めていた。2017年6月に濾胞性リンパ腫と診断。同年7月から10月まで通院し、化学療法を受ける。その後、2019年2月に再発し、同年3月から8月まで通院で化学療法を実施。それ以降服薬はなくなり、年に3回ほどの定期検査を行っている。大学時代から自転車競技に取り組んでおり、以前は娘2人と共に全国遠征に行ったり、大会に出場したりしていた。現在は競技活動を休み、近所でサイクリングを楽しんでいる。

ただのできものだと思ったら……

ただのできものだと思ったら……

編集部編集部

濾胞性リンパ腫が判明した経緯について教えてください。

やまけんさんやまけんさん

最初に耳の後ろあたりに「コリコリとした硬いできもののようなもの」があることに気づきました。痛みはなく、整形外科でレントゲンを撮りましたが異常はなかったんです。その後、皮膚科で取り除いてもらおうと思い、診察を受けることにしました。すると診察の際に先生から「ここにも、そこにもあるわよ」と、1つだけではなく周囲に複数あると教えてもらい、大学病院への紹介状を書いてもらいました。そこで検査を受けて、「濾胞性リンパ腫」の診断に至りました。

編集部編集部

はじめにカラダに起きた異変、初期症状はどのようなものでしたか?

やまけんさんやまけんさん

耳の後ろのおでき以外、異変という異変は感じられませんでした。初期症状なども特になかった気がします。

編集部編集部

濾胞性リンパ腫が判明したときの心境について教えてください。

やまけんさんやまけんさん

楽観的な性格もあってか、どこか俯瞰的で、まるで他人事のように感じていました。そのため、強い不安感や絶望感はあまりなかったです。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

やまけんさんやまけんさん

「R-CHOPという化学療法をします」「がん細胞を破壊してくれるとても良い薬ですよ」と医師が説明してくれました。主治医に絶対の信頼を置いていたので、セカンドオピニオン(担当医とは違う医療機関の医師に第2の意見をあおぐこと)を求めてほかの病院に行くことはありませんでした。

自転車と仲間が心の支えだった

自転車と仲間が心の支えだった

編集部編集部

濾胞性リンパ腫発症後、生活にどのような変化がありましたか?

やまけんさんやまけんさん

1回目の治療は抗がん剤の影響や副作用がある可能性を考え、慎重に取り組んだため運動を控えていましたね。ただ、再発時は体調に問題がないときに、自転車(大学時代はサイクリング部に所属し自転車競技に取り組んでいた)に乗っていました。再発時の方が、身体的な負担は小さかったように思います。合併症などもなかったのがよかったのかなと。

編集部編集部

薬の副作用などはありましたか?

やまけんさんやまけんさん

ドキソルビシンという薬の影響で脱毛がありましたが、治療後はすぐに生えてきました。ただ、元々のヘアスタイルが坊主頭だったので、これを機にスキンヘッドを楽しんでいました(笑)。治療中に脱毛していくのが嫌だったので、自らきれいに剃っていました。

編集部編集部

濾胞性リンパ腫の改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?

やまけんさんやまけんさん

病は気からともいうので、ストレスをためないようにしていますね。平日は仕事帰りに24時間営業のジムに通っていて、天気が良い休日は近所の山にサイクリングに行くのを日課にしています。2019年6月に再発したときも抗がん剤治療をしつつ、BMXレースに出ていました。

編集部編集部

治療中の心の支えはなんでしたか?

やまけんさんやまけんさん

大学時代のサイクリング部の先輩や同期、今の自転車仲間からの励ましが支えでした。また、がんになる直前に偶然加入したがん保険が、金銭的な支えにもなりましたね。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

やまけんさんやまけんさん

人生は長いので、病気や怪我によって身体が自由に動かなくなる日が必ずやってきます。その時に後悔しないよう、アクティブに活動しよう」と言いたいです。

「きっと元気になる」という希望を捨てないで

「きっと元気になる」という希望を捨てないで

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

やまけんさんやまけんさん

ありがたいことに、現在の体調は問題ありません。運動や食事に気を付けつつ、残りの人生を豊かに過ごしたいと思っています。

編集部編集部

何か病気になったことで不都合はありませんか?

やまけんさんやまけんさん

幸いなことに私は今、健常者とほとんど変わらない生活を送ることができています。だからかもしれませんが「濾胞性リンパ腫を知っている人も知らない人も『病人だから』と気遣い、遠慮せず、普段通り接してもらいたいな」と思います。それが今の私にとっては一番嬉しいです。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

やまけんさんやまけんさん

「医療の世界では新しい治療法がどんどん開発されている」と聞くので、この調子でさらによい治療法を開発していただけたらと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

やまけんさんやまけんさん

がん患者でもいろいろな状況がありますが、私は幸運にも副作用や後遺症もなく、元気に活動できています。気づけば50歳を過ぎ、残された時間は減ってきていますが、「体が動くうちはアクティブに生活する!」がモットーです。だからこそ、いま濾胞性リンパ腫と戦っている方には「病気になって不安になったり落ち込んだりするかもしれませんが、また元気に活動できるかもしれないよ」というメッセージを広く届けたいですね。

編集部まとめ

やまけんさんの言葉からは「今を全力で生きるんだ」という意志を強く感じました。そして小さなできものに気づき、すぐに病院を受診したからこそ、病気になる前の生活に戻ることができたのかもしれない、と思います。この記事を読んでくださっているあなたも、なにか異変を感じたときすぐに病院を受診してみてください。身体が発する小さなサインを見逃さないようにしましょう。

 

今村 英利

記事監修医師
今村 英利(ネムクリニック下井草院)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

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