【闘病】10年続く不調、仕事後の“強烈な疲れ”の正体は「関節リウマチ」だった…

10年以上原因不明の症状に悩まされ、2020年に「関節リウマチ」と診断を受けた「もも」さん(仮称)。関節リウマチは若年から中高年まで、幅広い年代の女性に多い自己免疫疾患とされています。ももさんのケースではリウマチ抗体は陰性でも、症状が典型的だったため確定診断となったそうです。関節リウマチは初期症状が典型的でないことも多く、診断に時間がかかることがあるため、一人で抱え込みやすい疾患です。ももさんのお話から関節リウマチについて知り、早期発見・早期治療につながる知識を知っていきましょう。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年9月取材。

体験者プロフィール:
ももさん(仮称)
40代女性。10年以上前から原因不明の体調不良が続いていたところ、2020年6月頃に足の指の付け根あたりに激しい痛みを感じるようになった。「おかしい」と感じながらも整骨院、整形外科などに通院を続けていた。靴下も履けないほど痛みが強くなり、我慢の限界に達したところで近所のクリニックを受診し、検査の結果「リウマチ」と診断が下された。現在も痛みが発作的に現れることはあるものの、免疫抑制剤や鎮痛剤の内服で症状をコントロールして生活している。
10年以上体調不良が続き、とうとう我慢の限界に

編集部
はじめに、ももさんの経験を通して、伝えたいことについて教えていただけますか?
ももさん
病気とは違っていてもいいので、みなさんにも自分が「辛い」と感じた症状はきちんと医師に伝えてほしいです。私自身もそうでしたが、初期の関節リウマチの症状は疲れやストレスによる症状と似たものが多く、すぐには診断がつかないことがあります。とにかく根気よく、医師に自分の症状や辛さを伝えたほうがいいと思います。
編集部
大切なことですね。
ももさん
もう1つ大事なことは、自分に合った医療機関を見つけることです。受診してからでないとわからないことも多いので難しいですが、医療機関は専門医療機関や専門医がいる場所を選ぶとよいと思います。ただ、専門医のいる病院やクリニックは予約がかなり先になりやすいので、その点には注意してください。
編集部
ありがとうございます。では、ももさんの罹患した「関節リウマチ」について教えていただけますか?
ももさん
関節リウマチは関節内にある滑膜という組織が異常に増殖し、対称性に関節内で炎症が生じる自己免疫疾患です。症状が進むと関節の痛みが強くなるだけでなく、関節の変形が進み、体の動きも悪くなっていきます。また、関節症状以外にも貧血や微熱、倦怠感といった症状が出るほか、脊髄に変形が生じて手足の麻痺を起こすこともある危険な疾患です。
編集部
ももさんは、どのような経緯で発症に気付いたのでしょうか?
ももさん
診断がついたのは2020年の夏頃でしたが、今振り返るとその10年以上前から原因不明の体調不良が続いており、その頃から始まっていたのだと思います。違和感に気付いたのは2020年6月頃、足の裏の指の付け根に激しい痛みが現れたときです。見た目で腫れていれば疑いようもあるのですが、腫れているわけでもなかったので、とりあえず整形外科を受診しました。しかし、そこではレントゲン撮影をして「異常なし」となり、様子を見るように言われました。
編集部
その場ではすぐに関節リウマチとはわからなかったのですね。
ももさん
そうです。しかも、受診後に痛みから歩きにくくなったせいで足をひねり、さらに数日後には足首から下がパンパンに腫れました。再度整形外科を受診して鎮痛剤も処方してもらいましたが、痛みで夜も眠れないこともありました。仕事終わりに加圧治療も受けましたが一時的に良くなるだけで、いつまでも改善しませんでした。そうしているうちに「ステロイドの内服が必要な病気なのかもしれない」と感じ始めました。
編集部
「関節リウマチかもしれない」と疑うようになったきっかけは何でしょうか?
ももさん
私は看護師として働いているので、自己免疫疾患の症状に思い当たる部分があったことです。そこで色々と調べた結果、関節リウマチや膠原病の専門病院を探すようになりました。しかし、近所にあった専門のクリニックは予約制で、1か月以上待たされることになるため、どうしても我慢できませんでした。そこで「少し離れてもいいからすぐ受診できるところを」と思って探し、現在通院中のクリニックを見つけました。
編集部
ももさんの場合、関節リウマチと診断された際にどのような検査が行われたのですか?
ももさん
クリニックでは靴下も履けないほど痛いこと、両足がパンパンに腫れていることを伝えたところ、自己免疫疾患の疑いで超音波検査と血液検査を行いました。そこで炎症反応とMMP-3というリウマチで上がる数値が高値とわかり、「関節リウマチ」と診断されました。リウマチの抗体は陰性でしたが、血液検査の数値と超音波検査で関節内に炎症による滑液が大量に貯留していることから、関節リウマチと診断がつきました。
編集部
リウマチ抗体が陰性でも診断は確定できるのですね。
ももさん
先生から「リウマチの症状があればリウマチと診断することもあるし、逆に抗体があっても無症状なら治療は必要ない」と説明を受けました。私のケースは典型的な関節リウマチではなく、複数の自己免疫疾患が絡み合ったものと思われるが、症状はそのまま当てはまっているから治療を開始したほうがよいとのことでした。
編集部
リウマチの治療はどのような治療法だったのでしょうか?
ももさん
診断が確定した日からステロイド薬と、抗リウマチ薬のメトトレキサートの内服を開始しました。初めのうちは症状が一進一退で拮抗し、ステロイドの量も増えて、副作用のムーンフェイスも現れたので辛かったです。ただ、顔が丸くなるのは嫌でしたが、それまでの辛い症状に比べれば我慢できました。現在はステロイドもだいぶ減り、タクロリムスという免疫抑制剤に切り替えています。
編集部
免疫抑制剤がメトトレキサートから切り替わったのはなぜですか?
ももさん
メトトレキサートで消化器系への副作用と倦怠感が強く出てしまったからです。効果自体は大きく変わりないのですが、メトトレキサートなら週1回、タクロリムスは毎日内服です。メトトレキサートのほうがお金の負担はかなり少ないのですが、体調には変えられませんでした。現在はメトトレキサートの自己注射もあるそうですから、今後はそちらも検討しようかと考えています。
現在も続く治療と体調不良との闘い

編集部
診断が確定するまでの10年ほどの間には原因不明の体調不良が続いていたそうですが、どのような症状があったのでしょうか?
ももさん
今振り返ると、とにかく倦怠感が強かったこと、両手首や関節が痛かったことなどから、すでに始まっていたのだと思います。10年ほど前は倦怠感がひどく、仕事が終わって帰ると動けなくなっていました。7年ほど前からは両手首の痛みや両足の腫れ、朝の倦怠感が続いていました。早朝に起きて鎮痛剤を内服して30分ほどすると多少動けるようになるため、それから家事や子ども達のお弁当も用意するという生活でした。健康診断や整形外科への受診も何度かしていましたが、リウマチ抗体は陰性だったため、診断がつくこともありませんでした。当時はストレスや疲れだと思い込んでいましたが、その時点で発症していたのかもしれません。
編集部
病名がはっきりしたときは安堵感があったのではないでしょうか?
ももさん
原因不明の症状が10年以上続き、度々体調も悪くなっていましたから、「これでやっと全部繋がった、やっと治療できる」と安心しました。あの時、「少し遠くてもすぐに治療してくれるクリニックに行こう」と考えた私の判断は、間違いではなかったと思います。
編集部
ももさんが日常生活や仕事で気を付けていることには、どんなことがあるのでしょうか?
ももさん
医療関係で働いていますから、仕事でプラスチック手袋をする機会が多いです。しかし、いつもはすんなり入るサイズの手袋が入らないときは、自分でも気付かない腫れがあるのだと思って警戒するようにしています。腫れや痛みがある時は、その都度鎮痛剤を使用してコントロールし、酷くならないように気を付けています。また、休みの日は外出する予定や急ぎの用事などがない限りは、家でゆっくり体を休めることを大事にしています。
編集部
今も体調の悪い日は多いのでしょうか?
ももさん
毎日ではないものの、現在は症状が強く出ていて、体調が良くない日があります。調子には波もあるのですが、倦怠感が強く、起き上がることも動くことも辛い日があります。最近は調子の悪い日が続いているため、医師と相談して薬を変更するか検討しているところです。
医療従事者だからこそ理解してもらう難しさを実感する日々

編集部
関節リウマチという病気を知らない人、普段から意識して過ごしていない人に向けて、メッセージをお願いできますか?
ももさん
関節リウマチは抱えている本人には辛い症状があっても、見た目にはわからないため、周囲から理解を得るのが難しい病気です。私は看護師ですが、医療に携わる同僚であっても完全な理解を得ることは難しく、辛くても仕事を休めませんでした。それが悪循環となり、周囲から理解を得られないこと、休めないことでストレスが蓄積し、さらに症状を悪化させてしまいました。ですから、周囲の理解を得ることも大切ですが、いかに体を休め、ストレスを溜めずに過ごすかを意識してほしいです。
編集部
ももさんご自身も医療従事者ですが、医療従事者に伝えたいことや期待することはありますか?
ももさん
今通院しているクリニックの医師と看護師の方は、私の状況を理解しようと真摯に向き合ってくれていて、とても感謝しています。私も医療従事者ですから、あまり診療に時間を取らせてはいけないという思いはありますが、寄り添ってもらえてありがたいです。それと同時に、「私の同僚は医療従事者なのになぜ理解してくれないのか……。」という想いもあります。
編集部
最後に、記事の読者に向けてメッセージをお願いします。
ももさん
辛いことを辛いとはっきり言える勇気が必要だと知ってほしいです。自分にしかわからない辛さがありますから、遠慮したり、迷惑になったりするといった心配はせず正直になってください。あとはとにかく我慢せず、体調がおかしいと感じたら、早めに受診することが大切です。関節リウマチは早めに治療すれば関節の変形を防げます。完治は難しくても、寛解は望める病気ですから早期治療が大事です。
編集部まとめ
ももさんのお話からもわかる通り、関節リウマチは変形が進まない限り、外見上はわからない疾患です。そのため、診断確定後も周囲から理解を得られず、苦しみながら闘病を続ける患者様は少なくありません。また、診断できる専門医も少ないため、そもそも診断をつけることも難しいとされています。ももさんのお話から関節リウマチへの理解を深め、患者様の抱える苦しみを少しでも理解できれば幸いです。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
岩佐 沙弥(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。




