【闘病】『汗が出ない苦しみ』を想像できますか? 命の危機感じた「難病」(2/2ページ)

よく「汗をかかなくていいね」と思われがち

編集部
特発性後天性全身性無汗症は見た目ではわかりにくい疾患ですが、理解されない場面も経験をされたことなどはありますか?
河合さん
多汗症は知っていても、無汗症という病気は知らない人が多いです。ですから、「汗をかかなくていいね!」と気軽に言われることもあるのですが、真夏でも身体中にラップを巻きつけているようなものです。病気について知らないとはいえ、汗をかかないことがどれだけ大変かわかってもらえないのは辛いです。
編集部
特発性後天性全身性無汗症で苦労したことはどんなことでしょうか?
河合さん
1つは発汗試験のときの気密室でのことです。検査前に「我慢できなくなったら声をかける」と言われていたのですが、自分の限界が分からずにそのまま倒れてHCU(高度治療室)に入院してしまいました。もう1つはステロイドパルス療法を行っていたとき、副作用で激しい倦怠感、下痢、腹痛、精神症状も現れたことです。さらに、数年後にはステロイドの後遺症で後嚢下白内障にもなり、手術することになりました。どれも特発性後天性全身性無汗症にならなければ起こらなかったことですから、私としては大変な経験でした。
編集部
河合さんがこれからの医療従事者に期待することはどんなことですか?
河合さん
私が初めて汗をかかなくなったとき、数人の医師に相談したのですが、いずれもスルーされました。症状で検索すれば何かしらヒントは見つかると思いますので、もう少し真摯に向き合ってほしかったです。「もし、自分や身内だったら?」と話を傾聴していただけたらとも思いました。
編集部
最後に読者の方にメッセージをお願いします。
河合さん
特発性後天性全身性無汗症は、治療しても完治するのは難しい疾患です。しかも、外見は普通の人と変わりがなく、認知度自体も非常に低い病気です。私は「みんな見た目には分からなくても、何かの不調を抱えて生活している」と考えるようにしています。みなさんも「ぼちぼち頑張ろう」という気持ちで過ごしましょう。
編集部まとめ
特発性後天性全身性無汗症の患者数は全国に600人強しかおらず、一般的な認知度も低い疾患です。潜在的な患者数はもっと多いとされており、診断を受ける患者数も年々増加傾向にあります。「汗をかかない」という症状は、一見すると病気のようには思えない人もいるでしょう。しかし、河合さんのように汗をかかないことで様々な不調を引き起こし、夏場には命に関わる危険もある疾患であるという認識を持つことは重要です。

記事監修医師:
藤井 弘子(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

