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【闘病】同僚に「乳がん」のことをバラされ傷つくも、それ以上の温もりと治療で克服

 公開日:2025/03/18
【闘病】同僚に「乳がん」をバラされ傷つくも、それ以上の温もりと治療を受け克服

乳がんは、がんの中でも比較的若年から発症しやすいがんです。患者数は、20歳代から徐々に増え始め、30歳代で急激に増加し、40歳代後半から50歳代にピークを迎えると言われています。話を聞いたEYさん(仮称)も、40代で乳がんと診断され、手術を受けました。早期発見できた理由、告知から手術までの想い、これまでの出来事などを聞かせてもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年10月取材。

EYさん

体験者プロフィール
EY(仮称)

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40代女性。教員。23歳の時に慢性腎炎と診断され通院。現在は寛解。37歳の時に乳頭から分泌物が出ていることに気付き、何科を受診していいか分からず産婦人科を受診。しばらく通院するも一向によくならず、原因も分からないため途方に暮れていたところ、市の健康診断の病院一覧から現在通っている乳腺外科を見つけ受診。その後、定期通院中に乳がんが見つかる。

「まさか自分が」「なんで自分が」

「まさか自分が」「なんで自分が」

編集部編集部

最初に不調や違和感に気づいたのはいつですか?

EYさんEYさん

私の場合、乳頭から分泌物が出ており産婦人科に通っていました。何科にかかれば良いのかわからないので、ひとまず産婦人科へ行っていたのですが、結局原因が分からず、その後自分で調べ、3Dマンモグラフィのある今の乳腺外科にかかることにしました。

編集部編集部

受診から診断に至るまでの経緯を教えてください。

EYさんEYさん

今の乳腺外科に初めてかかった時、エコーで乳管内乳頭腫が見つかりました。乳頭からの分泌物が原因でできた腺腫とのことです。それからは定期通院をしていましたが、少し間が空いてしまい、1年振りに定期検査に行ったところ、前回にはなかった白いものが見つかったとのことで、すぐに生検を受けました。その時に「新しい乳頭腫か、もしくは乳がんの恐れがある」という説明を受けました。

編集部編集部

がんの告知はどのような形でしたか?

EYさんEYさん

後日、結果を聞きに行った時に先生から直接言われました。まさか自分ががんになるなんて思ってもみなかったので、何が何だか分かりませんでした。これからの治療内容や、実際に治療をする病院の話などがあったのですが、まったく頭に入ってきませんでした。「最後に何か聞きたいことはありますか?」と先生に聞かれた時、「私は乳がんなんですか?」と聞きたかったくらい、がんであるという事実が理解できませんでした。

編集部編集部

すぐには受け止められないですよね。

EYさんEYさん

お会計まですべて済ませた途端に、気が抜けたのか涙があふれました。病気になった人がよく言っていますが、「まさか自分が」「なんで自分が」と繰り返し考えました。辛くて、辛くて仕方がなかったです。

ダメだと思っていた自分を変えた妹からの言葉

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編集部編集部

具体的にどんな病気だったのでしょうか?

EYさんEYさん

乳がんです。ステージ0の早期がんで、転移をしていない非浸潤がんでした。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

EYさんEYさん

まず手術をして、悪いところを切ると言われました。乳房温存療法にしたのですが、MRIなどで乳頭の裏に白く写っているものががんであれば、想定より大きく切るので、バストトップの方まで切るとのことでした。さらに、術後には放射線治療を行うと説明を受けました。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

EYさんEYさん

「やはり手術をしなくてはいけないのか……」という絶望感がありました。一方で、あまりに非現実的な事態だったので、他人事のような感覚もありました。

編集部編集部

実際の治療はどのように進められましたか?

EYさんEYさん

入院前に3回の外来がありました。最初はMRIとCT、採血、心電図検査を行い、2回目は1回目の検査結果から、手術の進め方の説明、歯科検査、栄養指導がありました。そして3回目は手術前の最終確認でした。手術の前日に入院し、最後の歯科検査と手術中に行う生検の準備としての注射、エコーで切除部位を確認し、印を付けました。翌日、手術を行い、生検とエコーで見つかったがんの切除を行いました。転移があるかどうかを調べる生検も行いました。術後3日で退院し、現在も自宅療養をしています(取材時)。手術後5~6週間くらいで放射線治療を開始する予定です。

編集部編集部

どのような気持ちで手術に挑みましたか?

EYさんEYさん

とにかく怖くて仕方なく、大泣きしました。手術台に横になり、看護師さん、麻酔科の先生がとても慣れた感じで流れるように準備をしてくださったのをよく覚えています。全身麻酔の手術でしたが、麻酔ですぐに寝てしまいました。「終わりましたよ」と声を掛けてもらって目覚め、そこで「無事に終わったんだ」と安堵しました。

編集部編集部

手術は不安だったと思います。

EYさんEYさん

手術前から不安と恐怖で泣いてばかりで、本当に自分はダメだなと思っていました。手術当日の朝、妹からラインをもらい「手術頑張るね」と返信したら、「もう十分頑張ってるよ」という返信がきました。自分自身では全然頑張ってないと思っていましたが、がんの告知を受け、検査や入院を経て、病気を受け入れて治療をしようとしてきたのは、頑張ってきたと言っていいんだなと思ったら、ダメだと思っていた自分が愛おしくなり、自分を認めてあげなくてはと気づきました。今でも忘れられない、思い出しては泣いてしまう言葉です。

人間ドック、がん保険の大切さを再認識

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編集部編集部

受診から現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。

EYさんEYさん

病気の知らせを聞いた友人や同僚が、がん封じで有名な神社などでお守りを買って来てくれました。また、別の同僚はお守りだけでなく、ご祈祷もしてくれたのだそうです。実は、職場で親しいと思っていた人に、病気のことを勝手にバラされとても傷付いていたのですが、同僚たちからそれ以上の温かさをもらいました。病気になり、人の優しさと冷たさの両方を感じました。

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください。

EYさんEYさん

今までは仕事優先で自分のことは後回しになっていましたが、今は自分を第一に考えなくてはいけないと思っています。また、今までは1年に1度の健康診断を受けていましたが、来年からは人間ドックに変えようと思っています。検査内容もがんの早期発見に特化したものを選び、早期発見につなげられればと思っています。

編集部編集部

今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?

EYさんEYさん

がん保険に入っていなかったことを後悔しています。まさか自分がこんなに若くしてがんになるとは思っていなかったので、60代くらいになってから入ろうと思っていたんです。手術費用だけでなく、入院前の通院、入院中、術後の補助治療などで思いのほかお金がかかります。

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

EYさんEYさん

まだ術後3週間ほどなので痛みがありますが、だんだんと以前のような生活に戻りつつあります(取材時)。スポーツクラブにも行っていますが、乳房温存療法のため、スポーツクラブのお風呂に入るたびに人目を気にしてしまいます。

編集部編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

EYさんEYさん

とても良くしていただき、感謝しています。優しく寄り添ってくださいました。人の命を預かる責任ある仕事の上に激務だと思うので、ご自身のことも労わってほしいと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

EYさんEYさん

私は乳頭からの分泌物がありましたが、時間が空くことはあってもそれを放っておかずに定期的に検査を受けていました。そのおかげで早期発見ができ、術後の辛い抗がん剤治療も免れることができました。月並みですが、少しでも体の異変があれば、後回しにせずにすぐに受診することをおすすめします。

編集部まとめ

乳がんの手術をされたY・Eさんの闘病体験をお届けしました。早期発見できたことで、抗がん剤治療を免れることができたとのこと、些細な異変や違和感でも、放置せずに受診することの大切さを教えてくれました。彼女の経験が、同じ病気を抱える多くの人に勇気や希望を与えられたらと思います。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

寺田 満雄

記事監修医師
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

この記事の監修医師

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